ついにきたか。

愛犬が今夜旅立とうとしているかもしれないと22:30に母から連絡が入った。私は最終回のドラマを楽しみに見ていたが、実家までの電車を調べ始めた。1番早くて深夜の1時に実家の最寄り駅に着くとのこと。

そうと決まったらシャワーもまだ済ませてなかったが、仕事で汗まみれになった服は脱ぎ捨て、新しい下着と洋服を着て家を出た。

公共交通機関で行くんだ。泣くな。

そう自分に言い聞かせながら足早に歩く。

すると、お彼岸で実家の手伝いをしていた彼が帰りで駅に向かう私とすれ違うかもと連絡が入った。

もう涙で歪んだ景色を眺めながら必死に理性を保ち、駅へ足を運んだ。

駅まであと三分の一というところで彼と落ち合った。彼は仲間内でお酒を飲んだ後だったが、しっかりした顔つきで私の手を引いて駅まで着いてきてくれた。

俺が(車で)送るのが1番だったけどごめんね。こんなことになるなんてね。そう声をかけてくれた。

うなづくので精一杯だった。安心して余計に涙が溢れる私を見て、コンビニでハンカチとリポビタンDを買ってきてくれた。

ごめんここまでだけど。
そう言って改札に身を乗り出すように私の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。

もう鼻水と涙の両方をそのハンカチになすりつけた。

なんでだろうね。ただでさえ一刻を争うというのに、電車が止まるのは。人身事故だってよ。見事に大宮で足止めくらってるわ。頼むよ。今こんなところで止まってるわけにはいかなんだよ。

そんな声も虚しく運転再開見込みの1時を車内で待つ…
結局大宮で運転再開したのは2時で実家には3:40についた。大宮で2時間も電車内で待った上に、予定より2時間40分も遅れて実家についた。

愛犬は起きていた。息が荒く、脈も早い。目も白く濁って乾いてきた。

これはまずい。

あと数時間だと悟った。

愛犬も自分が長くないことをわかっていたのだろう。なかなか目を瞑って眠ろうとしない。でも、父親の腕の中で次第に眠りにつき、穏やかな表情へ変わった。

私も安心して眠りについた。

続く

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