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GA文庫大賞過去四年 傾向と対策


自己紹介とここまでの歩み

私は川崎中と申します。かわさきあたりと読みます。
10年ほど前にライトノベルの新人賞を受賞したことがあります。

ただその後は一切結果が出ず、商業出版とは無縁の人生を送っています。
noteでは、あの時なぜ受賞できたかの検証と、その時のやり方を言語化すれば改めて受賞できるのかの挑戦を行っていきます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

現在第17回GA文庫大賞に挑戦すべく、まず受賞作研究を行っています。
そのため、過去四回のGA文庫大賞受賞作品を読むことにしました。

読んだGA文庫大賞受賞作

【2022年度】
透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。(志馬なにがし)
ドラゴンズロアの魔法使い〜竜に育てられた女の子〜(鏑木ハルカ)
不死探偵・冷堂紅葉 01.君とのキスは密室で(零雫)
嘘つきリップは恋で崩れる(織島かのこ)
異端な彼らの機密教室1 一流ボディガードの左遷先は問題児が集う学園でした(泰山北斗)

【2021年度】
あおとさくら (伊尾微)
陽キャになった俺の青春至上主義 (持崎湯葉)
双翼無双の飛竜騎士 (ジャジャ丸)
新婚貴族、純愛で最強です (あずみ朔也)
ヴァンパイアハンターに優しいギャル (倉田和算)

【2020年度】
ただ制服を着てるだけ(神田暁一郎)
奇世界トラバース 〜救助屋ユーリの迷界手帳〜(紺野千昭)
コロウの空戦日記(山藤豪太)
ブービージョッキー!!(有丈ほえる)
恋を思い出にする方法を、私に教えてよ(冬坂右折)
どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる(相崎壁際)

【2019年度】
忘れえぬ魔女の物語(宇佐楢春)
貴サークルは"救世主"に配置されました(小田一文)
その商人の弟子、剣につき(蒼機純)
竜歌の巫女と二度目の誓い(アマサカナタ)
カンスト村のご隠居デーモンさん 〜辺境の大鍛冶師〜(西山暁之亮)
俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ(りんごかげき)

GA文庫大賞受賞作 総括

現代物(ファンタジーなし)が優勢か

異世界ファンタジー(現代日本を舞台にしない)作品は全体の 36%(8作品)でした。また、金賞に輝いたのも(奇世界トラバース)のみなので、近年は現代物の方が優勢にあるようです。尤も、単に異世界ファンタジーは書くのが難しいので送られてくる総数が少ない説もあります。

現代物で見ると、ファンタジー要素の混じっている作品は36%(8作品)で、異世界ファンタジーと同じような割合です。また、金賞は2作品あります。

ファンタジー要素の混じっていない完全現代物は32%(7作品)でした。ただ、大賞・金賞の数は4作品と、この四年間の多く作品はこのカテゴリーから出ています。完全現代物が、最近のこの賞のトレンドなのでしょうか。

*(コロウの空戦日記)は異世界ファンタジーにカウント
*(異端な彼らの機密教室1 )は魔法などは出てこないが、特殊設定のため現代ファンタジーにカウント
*この四年間で、大賞・金賞は全7作品

少女小説・少女漫画の香り漂う

完全な男性向けレーベルだと思っていたんですが、女性も読めるというか、むしろ女性向けに見える作品も多く受賞していました。

(竜歌の巫女と二度目の誓い)や(恋を思い出にする方法を、私に教えてよ)などはかなり少女漫画ライクで、(嘘つきリップは恋で崩れる)なども主人公こそ男性ですが、むしろヒロインを主人公とした方がすんなり読めるし、内容も少女漫画っぽいです。

恋愛系の作品も、無駄なエロの少なさや純愛だったりする点で、完全な男性向けレーベルの作品とは違った感触を受けます。(透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。)や(あおとさくら)などがそういう傾向の作品です。

どちらかというと近年の方が、中性的な作品の受賞を増やしている感じでしょうか。

投稿作作成時の注意点

異世界ファンタジーを書くのであれば

世界観と、主人公が一体となっているような作品が多いです。(カンスト村のご隠居デーモンさん)など、その設定の根幹であるご隠居デーモンさんが主人公ですし、(奇世界トラバース)ではすでにその世界で名のある冒険者が主人公です。

そのため、描かれるのは主人公の成長よりも、主人公の格好良さや、その世界での主人公の生き様になります。成長するキャラは主人公以外のキャラに押し付けてもいいでしょう。

異世界の不思議で魅力的な世界観を如何に描ききり、その中で生き生きしたキャラクターを動かせるか、という勝負になってくるのだと思います。
まず、世界観です。素敵な世界を作り込めるでしょうか。

結果としてこのカテゴリーでは、ウジウジ系主人公、ボッチ系主人公はほぼいなかったです。異世界転移ものだと大体ウジウジ系になると思いますが、そういった作品はこの間は受賞しなかったみたいですね。

【このカテゴリーの作品】
ドラゴンズロアの魔法使い〜竜に育てられた女の子〜(鏑木ハルカ)
双翼無双の飛竜騎士 (ジャジャ丸)
新婚貴族、純愛で最強です (あずみ朔也)
奇世界トラバース 〜救助屋ユーリの迷界手帳〜(紺野千昭)
コロウの空戦日記(山藤豪太)
その商人の弟子、剣につき(蒼機純)
竜歌の巫女と二度目の誓い(アマサカナタ)
カンスト村のご隠居デーモンさん 〜辺境の大鍛冶師〜(西山暁之亮)


現代物(ファンタジーなし)を書くのであれば

完全現代物で見ていくと、高校が舞台の作品が3、大学・社会人が舞台の作品が4と、やや高い読み手の年齢層も想定されている気がします。
なんとなく、メディアワークス文庫ライクな作品が多い気もします。

このカテゴリーは恋愛、またはラブコメ要素は必須で、全ての作品がボーイミーツガールを含んでいます。モテない男子系の主人公が多く、だからこそ主人公が作中で成長する必要が出てきます。

もっといえば、主人公、ヒロイン共々成長していく作品が、ほぼ全てでした。

【このカテゴリーの作品】
透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。(志馬なにがし)
嘘つきリップは恋で崩れる(織島かのこ)
あおとさくら (伊尾微)
陽キャになった俺の青春至上主義 (持崎湯葉)
ただ制服を着てるだけ(神田暁一郎)
ブービージョッキー!!(有丈ほえる)
俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ(りんごかげき)


現代ファンタジーを書くのであれば

ファンタジー・あるいは特殊設定の色合いが強くなると、主人公が格好良くなっていき、主人公の立場が現代物によってくるとボッチ系になってきます。

世界での出来事を見せたいのか、主人公の自己実現を見せたいのか、このカテゴリーでは自作の分析が重要でしょう。

また、如何に目玉要素の掛け算をして、目新しい作品を作るかというのが試されます。
「不死✖️探偵」「ボディガード✖️学園」「ヴァンパイアハンター✖️ギャル」「恋愛カウンセラー✖️異能」「ぼっち✖️タイムリープ」「SF✖️百合」「同人サークル✖️救世主」
受賞作はどれも、それぞれの目玉要素が混じり合ってオリジナリティを作っています。

自作に二つ以上の目玉要素があり、それがうまく絡み合っているかという点については、よくよく確認した方が良さそうです。

【このカテゴリーの作品】
不死探偵・冷堂紅葉 01.君とのキスは密室で(零雫)
異端な彼らの機密教室1 一流ボディガードの左遷先は問題児が集う学園でした(泰山北斗)
ヴァンパイアハンターに優しいギャル (倉田和算)
恋を思い出にする方法を、私に教えてよ(冬坂右折)
どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる(相崎壁際)
忘れえぬ魔女の物語(宇佐楢春)
貴サークルは"救世主"に配置されました(小田一文)


最後に

ここまで傾向的なものをなんとなくまとめましたが、しかし受賞する作品の傾向はその年によって大きく異なります。

特に2020年は衝撃的な年で、私の中ではラノベに分類されない作品が半数あり、ラノベギリギリの作品が2作品でした。

編集部様もおそらく毎年戦略があり、色々試しているものと思われますし、あるいは現在刊行中の作品との兼ね合いもあるでしょう。そして、その考えは表面的な情報をいくらなぞってもわからない部分ではあります。

なので、最終的に受賞するかどうかは運なのかもしれません。ただ、運をどれだけ使うかはまた、その人次第なのでしょう。

5%の確率で受賞する作品を一回投稿して受賞するのは難しいですが、30%の確率で受賞する作品を十回投稿して受賞しないことも、また難しいのです(約97.2%の確率で受賞します)。

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