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中国鉄道時刻表を"読んだ"らエモかった #中国鉄道時刻表

 平成最後のコミケは、鉄道メカミリの三本締めと万歳に参加するために日帰りで遠征してきた。その時に、ついでに薄い本を何冊か買ってきたが、そのうちの一冊がこの「中国鉄道時刻表」。全486ページの到底薄い本とは言えない一冊だ。

 時刻表を「読む」という言葉がある。本来、時刻表とは「見たり」「使ったり」するものだけど、時刻表、こと厚くて大きいJTB/JR時刻表においては、それを開き駅名や時刻を追うことによって、想像力を働かせたりする、というような意味が込められているのだろう。もちろん、その他にも意味はあるだろうが。

 筆者も、小学生の頃はJTB時刻表の愛読者だった。当時、図書館が家の近くにあったおかげで、毎月、最新刊が出るたびに借りてきていた。当時、遠いところと言えば東京か大阪くらいのイメージだった自分にとって、その時刻表の隅々まで踊る、まだ見ぬ土地の駅名は、憧憬を呼び起こした。今でもはっきりと覚えている駅名がひとつある。「呉」だ。
 たまゆらーでありそしてラバウルから呉に異動した提督である今の筆者なら、その名を聞いた瞬間に、阪急ホテル側の駅前広場も、反対に大和ミュージアムや港へと続く渡り廊下も、瞬時にその風景を思い出すことができるけれど、当時の自分にとっては読み方さえ分からなかった。呉駅は発着が表示されていた駅だったので、フォントも大きく、そのでかでかと一文字「呉」と鎮座する姿には、なんというか、衝撃を覚えたのと同時に、どういうところなんだろうと、想像を巡らせたことを覚えている。

 けれど、大人になった今、時刻表を読む楽しさは失われてしまった。相次ぐ夜行列車、長距離列車の廃止も大きいが、知識や経験が身についてしまったというのもあるだろう。

 しかし、先日、とりあえずGWは上海を起点に西安と重慶にでも行ってみることにするかと思い、この中国鉄道時刻表をめくり、その10万キロの情報量にただただ圧倒されていると、どうしようもない憧憬と嬉しさを覚えた。これは「あの頃」の気持ちと同じだ、と。

 時刻表なら、元トマス=クック社のヨーロッパ鉄道時刻表だって良かったのではないかと思うけど、そうはならなかった。やっぱり、この日本式の体裁、レ点やら経由なしの二重線、そして漢字の洪水があってこそなのかもしれない。
 広大な大地に網の目のように張り巡らされた10万キロの路線図。いや、その中国の広さを考えれば、まだまだ網ではないのかもしれないけど。ここ数年ずっと高速鉄道の開業が相次いでいるけど、高速鉄道が通ったからといって旧線が短区間の普通列車だけの第三セクターになる…なんてことはなく、長距離列車でない列車を見つける方が難しいし、油断するとすーぐ夜行列車になっていたりする。
 だいたいこの時刻表の分かりにくさはなんだww 編集の皆さんが分かりやすくしようとしているその努力と苦労を嘲笑うがごとく、複雑怪奇な連絡線と長距離列車が目白押し。ハオい…。この路線網を便利にしようとした結果の分かりにくさっていいよね…。こんなん「ぼくのかんがえたさいきょうのてつどうもう」やんけ!

 この楽しさに気づいてから、ふとした時に中国鉄道時刻表を"読みふけって"いる。いつかはこの楽しさも過去のものになるのかもしれないけど、今はどうでもいいww しかし、世界には他にも行きたいところが沢山あるというのに、パンドラの箱を開けてしまった感がすごい。

 中国鉄道時刻表はエモいし、ハオい。ありがとう編集の皆さん。ありがとう人民鉄路。祝你旅途愉快!


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