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映画『銃』 音の使い方と人物描写

最近の若手俳優で1番気になっている村上虹郎君が主演の映画。

◆あらすじ◆
ある日、思いがけず銃を拾った大学生トオル(村上虹郎)が、その圧倒的な存在感に魅せられ、徐々に銃に支配されながら狂気が満ちていく様を描いたノワール作品。

銃を持っている

銃を撃ってみたい

銃を撃つだろう

と、変化していく彼の精神状態。

銃を所持している状態で、
想いを寄せる女性、セフレ、隣人、刑事など、周りの人間との関わりの中で、徐々に狂い崩壊していく1人の男の物語。

彼を疑い訪問した刑事(リリーフランキー)との会話をキッカケに、彼は銃を使い1つの目的を実行に移す。

果たして彼は銃を撃ってしまうのだろうか。

◆◆◆◆◆

はい、
とても好みな映画でした。
と言ってしまうと、観た人には勘違いされそうですが、実際に共感出来てしまう部分が結構あって、自分大丈夫か?って思ってしまう程、入り込んで観てしまいましたね。

絶対にダメだと解りながらも、無意識に少しずつダメな方へ引き寄せられていく感じなんか、まさにそんな事あったなぁ〜って…笑

もちろん犯罪ではありませんよ。

ストーリーとしては、そこまで意外な展開やワクワクするような感じは無く、全体的にシンプルで波のないものでしたが、細部にまで行き届いた丁寧な隠喩表現や、モノクロで見せる色味の感じ、カメラワークと絶妙にマッチした役者の表情などが最高に楽しくて、最後まで全く飽きのこない映像でした。

序盤はモノローグが多く、そんなに説明しなくてもいいのになって、少し残念に思っていたんですが、物語が進むにつれてそれが減っていく。
後半は全然気にならない。

何でだろうと観終わった後も考えていたんですが、個人的な見解としては、
原作である純文学の世界観を序盤のモノローグで表現し、自然にフェイドアウト。
そこからまた自然に映画としての画での見せ方をフェイドインさせていったのかなと思いました。

最初に純文学的な色味で印象付け、クドくなり過ぎないように映画的な見せ方で進めていく感じというか。

なので、途中からは言葉より画で観せている印象でした。

映画なんだから最初から映画的な見せ方でも良いようにも思えますが、純文学の独特な言葉での表現の仕方や、語り手の孤独感なんかが良い味になって、作品に深みを増していたように思えたので個人的には好きな形でした。

あとは、細々ですが、音の使い方、オイルライターやコーヒーでの人物描写など、ほんと細部まで丁寧で、とても観ていて楽しい。

音で言えば、喫茶店で広瀬アリスと話しているシーンでは、周りの音(環境音)が大きくなり広瀬アリスの声はあまり届いていない。

それとの対比で後半シーンでは環境音がなくなり広瀬アリスの声しか聞こえないシーンがあります。

その表現の仕方で、広瀬アリスへの向き合い方や虹郎君の心境の変化が分かりますね。

こういった表現方法はシンプルながら、とてもセンスが良いなぁって思います。

モノクロの映像はベタな感じもしますが、ちゃんとカッコ良く、安っぽくならないし、最後にはその意味もちゃんと画で説明される。

思い出しながらの感想なのであまり整理出来ていませんが、期待の虹郎君の演技は、しっかり主人公の危うさが出ていて良かったし、リリーフランキーは相変わらず最高。

リリーフランキー演じる刑事といえば、傘の表現も良かった。

登場シーンでは晴れていたのに、その後ちゃんと雨が降る事を分かった上で傘を準備しているところとか、キッチリした性格を表していますね。

キャラを演出するのにも抜かりがない。

女優陣、広瀬アリスも、体当たりの日南響子も、クズ女役の新垣里沙もすごく良かった。

なんか書きたい事があり過ぎて止まらないので、この辺にしておこう。

97分の映画でこんだけ話したい事が沢山あるってのは、きっと丁寧で良い映画だからですね。

刺さらない人もいるかもしれないけど、もっと歳をとったらスーパー俳優になるであろう虹郎君の演技を観ておくには最高の映画じゃないだろうか。

親父さん(村上淳)との親子共演も色んな意味で最高!

あと写真にもあるけど、喫茶店でリリーフランキーと虹郎君が話してるシーンは、画がコーヒー&シガレッツ的な感じで最高でした!

ちなみに、このシーンの撮り方も最高でした。

リリーフランキーの顔が見えづらくなるように虹郎君の頭がカメラに被るんですよね。

この時の虹郎君の心の中は、銃を持っている事がバレているんじゃないかという不安と恐怖で焦っていて、きっとリリーフランキーの顔を真っ正面から見られないという見せ方なんじゃないですかね。そんなふうに感じました。

あぁ、止まらない。

とりあえず観て下さい!
オススメです!

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