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ITの活用で、介護スタッフの職場環境と介護サービスはもっとよくなる。

 介護・保育事業を展開するヒューマンライフケアには、IT推進室という部署があります。介護の現場は、介護ケア記録やご利用者様への連絡帳を手書きで記録したり、報告書等をFAXで送ったりと、まだまだアナログが幅を利かせています。「ITを活用することで、介護スタッフの働き方や介護サービスをより良く変えていくことができる」と考えるIT推進室長の田島哲志さんに、お話を伺いました。

ヒューマンライフケア IT推進室 室長 田島哲志さん

――まずは、IT推進室の業務内容について教えてください。

 私は2015年10月にヒューマンライフケアに入社し、広告・WEB関係の業務や採用担当を経験後、2018年から今の仕事をしています。IT推進室では、介護現場での課題をスタッフからヒアリングして、ITの活用で解決できそうな課題を見極めたうえで、現場にとってインパクトの大きいものから優先順位をつけて実行に移しています。コピー・FAX複合機の入れ替えといった細かな案件を含めると、20個くらいのプロジェクトを並行して走らせています。

――介護現場にとってインパクトが大きいものとしては、具体的にはどんなものがありますか?

 一例としては「バイタルアプリ」が挙げられます。介護の現場では記録業務が多く、ご利用者様のその日の体温・血圧・脈拍などを測定し、拠点に残す記録と、ご利用者様の連絡帳に手書きで記入し、さらに月ごとの記録も別に作成します。介護スタッフは、同じことを3回も書かなくてはいけないわけです。バイタルアプリは、ご利用者様のバイタルデータを1回入力すれば、自動的にすべての必要書類に転記されるようにしたものです。このほか、2022年4月にリリースした社内ポータルも、今後ブラッシュアップして機能がフルに使えるようになれば、格段に便利になると思います。

――社内ポータルには、どんな機能が?

 これまで当社の入社手続きは個別にメールでやりとりをしていて、申請の窓口もバラバラでした。それを1つのWEBサイトに一本化して、社内ポータルにアクセスするだけで本社への一連の手続きが完了するようにしたのです。現在は拠点長以上の人しか利用できませんが、ゆくゆくは全スタッフに開放して、スタッフへの連絡事項や業務マニュアルなども全部、社内ポータルを見ればわかるようにしていこうと考えています。当社は全国175事業所に、約2,300名のスタッフが働いていますが、パート勤務の人は会社から支給される個人用メールアドレスを持っていません。全スタッフが社内ポータルにアクセスできるようになれば、必要な情報を自分で取りに行くことができ、社内の各種申請手続きも自分で完結できるようになる。スタッフを管理する拠点長の負担が減り、スタッフも業務上必要な情報を素早く入手できるようになるので、さまざまな面で業務の効率化に役立つと思います。

――IT推進に取り組むうえで、心がけていることはありますか?

 まず、現場の人たちの話をよく聞くことです。現場で働く人たちは、非効率・不便なことも「これが当たり前」と思って疑問を抱かず受け入れていることもありますし、「こんなことで困っている」という話をしてくれても、本人たちにはその解決策が見えていないケースも多々あります。「どんな解決策を現場に提示できるのか。手段は本当にITが適切なのか。」ということを常に念頭に置きながら、現場で働く人たちの声に耳を傾けています。

 システムやアプリなどの基本的なアイデアは私たちが固めますが、実際のシステム設計や開発は外部の業者に委託します。その際、特に心がけているのが、誰にでもわかりやすく簡単に使えるものを作ることです。当社のスタッフは、20代から80代まで幅広い年齢層の人がいます。スマホやパソコンの操作に不慣れな人も、もちろん少なくありません。若者から高齢者まで、すべての人がストレスなく使えるものを開発しないと現場で活用してもらえないので、システムやアプリを開発する際は「どうすれば、実家の母にもすんなり使ってもらえるだろう?」と考えながら、操作性などに工夫を重ねています。

――介護分野におけるIT活用の可能性について、どのようにお考えですか?

 介護におけるITの活用というと、介護支援ロボットなどを連想されるかもしれませんが、私は違うと思います。介護は「人」あってのサービスです。ロボットに介助されるよりも、温もりのある人間から介護を受けたいと思う人がほとんどでしょう。介護スタッフも、ご利用者様に寄り添い、尊厳を守りながら、自分の手で、温かな声かけと心配りをしながら介護に取り組みたいと願っています。しかし、煩雑な書類作成や事務作業などに時間を割かれ、本来の介護の仕事に専念できないことに心を傷めている人が多いのが現状です。介護以外の業務を効率化し、スタッフがご利用者様によりよい介護サービスを提供できるようにすることが、いまの介護業界に求められているITの役目だと考えています。
 また、ITの活用により、介護サービスそのものにも新たな可能性を開くことができると考えています。例えば、ネットでつなぐことによって、拠点の垣根を超えてスタッフやご利用者様がつながることができます。遠く離れた介護施設をネットでつなぎ、ご利用者様が一緒にレクリエーションを楽しんだり、オンラインツアーや世界中の人たちと交流できるようなレクリエーションを提供したりすることも可能でしょう。「あのデイサービスに行けば、こんなレクを楽しめる」と、ご利用者様に魅力を感じていただけるようなサービスをITで実現できるといいな、と思っています。介護スタッフ、ご利用者様ともに「本来のやりたいこと」をサポートすることが、ITの役目と利用価値だと考えています。



<ヒューマンライフケア株式会社・会社概要>
ヒューマンライフケアは介護保険法施行前の1999年より介護事業を展開、現在では全国でデイサービスやグループホームなど各種介護事業所を175事業所(2022年11月現在/FC含む)展開しています。


※2022年10月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。
肩書き・役職等は取材時のものとなります。

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