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むさしの写真帖

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写真と記憶と何某と。
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むさしの写真帖

むさしの写真帖

古いデジカメについて書いています。
ただしこれらの記事は2018年前後のものであるので、カメラのほとんどは手許にないのをご承知おきください。

追記: ネタが尽きたので写真、カメラにまつわること。またアラカンおじさんの日常について書いたりします。(2023年霜月朔日)

ヒグラシ

ヒグラシ

もうずいぶん昔の話だけど。

たまたま平日に休みになった夏の終りのとても蒸し暑かった日。
暇を持て余していたぼくは午後からオートバイに乗って、よく行く短いツーリングルートにでかけた。
県をまたぐ道で、かつては有料道路だったが、往復で2時間くらいだから思いつきでオートバイを走らせるにはちょうどいい。

川沿いに進む道の途中、ちょうど県境に差し掛かる辺りに廃屋がある。
地元を走るライダーの間では心霊ス

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都バス

都バス

昨日、娘が忘れていった財布を届けるために都バスに乗った。

ヘウゲモノ

ヘウゲモノ

古田織部という人物はどのくらいの知名度があるのだろう。
本名は古田重然。
豊臣秀吉、徳川家康の茶頭、茶道の織部流の始祖であり、利休七哲のひとりに数えられる。
もともと美濃の守護土岐氏に使え、秀吉に仕えた時に従五位となる。
関ヶ原では東軍に与したのちに10,000石の大名となっているが、豊臣恩顧の大名であるがゆえか、大阪城落城の際に内通の嫌疑をかけられる切腹を命ぜられる。

織部は、やはり大名という

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記憶と出自

記憶と出自

食パンにバターを塗るたびに父を思い出す。
どういう理由だったかは知らないが、昔から休日の朝食はパンだった。

父はトーストとコーヒーで、僕は横で父がトーストにバターを塗る所作を、いつも眺めていた。
父は神経質なほど丁寧に食パンの隅から隅まできれいにバターをバターナイフで広げていた。
トーストされたパンの表面をナイフが滑る「パリパリ」という音と黄金色に光るパンの表面をありありと思い浮かべることが出来

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5月1日

5月1日

4/29ルーベンス・バリチェロ、4/30ローランド・ラッツェンバーガー、5/1アイルトン・セナ。
94年のイモラには呪いがかかっていた。

30年にもなるのか。

名古屋から鈴鹿サーキットは小1時間で到着するから2輪のレースも4輪のレースも度々見に行っていた。
F-1が全国ネットで放送されるようになる前から地元のテレビ局では深夜帯にF3000なんかの放送をやってたりしたから、割とレースの中継にも馴

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諸行無常

諸行無常

諸行無常 ( しょぎょうむじょう、sabbe-saMkhaaraa-aniccaa, सब्बे संखारा अफिच्चा )
生滅の法は苦であるとされているが、生滅するから苦なのではない。生滅する存在であるにもかかわらず、それを常住なものであると観るから苦が生じるのである。この点を忘れてはならないとするのが仏教の基本的立場である。

むこうがわに

むこうがわに

カメラを持って立ち止まってはシャッターを押す。
ただそれを淡々と繰り返す。
誰のためでもなくて何かの目的のためじゃなくて。
そういうのがとても幸せである。
本当にあるかどうかも分からない、形すらはっきりしない結果を求めてあれこれ考えるのは「休むに似たり」であるのだ。
何かを表現できたりしなくていい。
する必要もない。

なにが違うのだろう

なにが違うのだろう

これはたまたま見つけた、写真家のホンマタカシさんが撮った国分寺。
インタビューに沿うかたちでの撮影だろうから、ホンマタカシさんの目線だけということではないかも知れないけれど、ぼくが日常的な風景として見ているものと、プロの写真家の目線はなにが違うのだろうと思ったので撮ってみたのだ。

もうこれは単純な興味からなので、別にどうしてもそこが撮りたかったわけではない。
ただ、このインタビューの写真を通して

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現わすものは

現わすものは

端的であるべきだと思う。
そして叙事であるべきだとも思う。
それゆえの揺ぎなさが際立つものであれと願う。
それがイノセンスである。

凛としてそこに在るだけ。そして、その存在の緊張が投げかけた水面に広がる波紋で胸が震えるといい。

須田一政

須田一政

僕的には「エグい」写真を撮る人である。
アサカメに掲載されたこの辺の写真はミノックスを使っていたらしい。

僕はその辺りから彼を知った。
「エグい」と書いたが、別段これに定義がある訳ではない。
エグいは「刳み」から来ている言葉だと思うが、食べ物などの灰汁から感じる苦みを表す言葉である。
彼の撮る写真は日常的ではあるが、非常に「間の悪い」日常だと思う。
これはあくまで例えの話だが、ハービー山口さんの

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