ユーモアというのは基本的に望ましい行動で，ユーモアをもつ人というのは望ましい人物だと考えられる傾向があります。しかし，他者に対して悪意をもったユーモアの表現も存在しています。

たとえば，次のような「笑い」です。

◎gelotophobia（ゲロトフォビア）：嘲笑の対象となることを予期し，笑われることを恐れる傾向
◎gelotophilia（ゲロトフィリア）：笑われることを喜び，笑われることがやりがいのある体験として認識され，笑われることが他者からの評価の表れだと認識する傾向
◎katagelasticism（カタゲラスティシズム）：他者を笑いの対象とすること，他者をおとしめ，嘲笑の対象とすることを喜ぶ傾向

ゲロトフォビアをもつ人は，笑いを悪意あるものと誤解する傾向があり，人間関係で苦痛を抱きやすくなると考えられています。一方でゲロトフィリアをもつ人は，円滑な対人関係や良好な社会的相互作用が期待されることもあるようです。そしてカタゲラスティシズムは，相手の反応を気にせず対人関係を営むので，自己中心的で周囲の人が迷惑を感じるかもしれません。

ナルシシズムとの関連

これらのような特徴的な笑いのパターンは，ナルシシズム（自己愛）的な傾向に関連する可能性があります。特に，他者の評価を気にして，他者が評価することで自分自身の評価を高めようとする，過敏で脆弱なナルシシズムの側面は，こうした特定のパターンの笑いに関連するかもしれません。

では，本当に関連が見られるのでしょうか。この論文で確認してみましょう（Vulnerable narcissism is related to the fear of being laughed at and to the joy of laughing at others）。