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薬物乱用をする親のもとで育つと子どもは

割引あり

親が薬物乱用をすることは,どのような問題が生じるのでしょうか。これまでの研究でも,多くの悪影響が指摘されています。

◎社会経済的地位の低下
◎不安定な家族関係
◎劣悪な子育て環境
◎家庭内暴力
◎子どもの育児放棄や虐待

ざっと見るだけでも,深刻な問題へとつながっていきそうです。もちろん,薬物乱用からの因果関係というよりも,お互いに関連した問題だとは思うのですが。


生活史理論

進化的な観点では,生活史理論という話が知られています。これは,危険で不確実で資源が乏しい環境下では,早めに生殖を試みるなど,より迅速な生殖戦略がとられると考えられています。環境から得られる資源が乏しく,将来が不確実で,平均余命が短い環境下では,現在の生殖により多くを投資するようになり,資源の蓄積にはあまり投資をしないという適応戦略がとられます。

幼少期の環境が,その人の生活史を性急にしたり,遅いものにしたりする可能性が指摘されるということです。


親の薬物乱用と

今回紹介する研究では,親の薬物乱用と,子供の初回生殖年齢との関係について,因果関係に焦点を当てることを試みています。親が薬物乱用とすることは,生活史理論からすれば,子どもの速い繁殖戦略に結びつくと考えられます。

分析の対象となっているのは,スウェーデンです。北欧の福祉国家であり,世界でも所得格差が小さい国として知られています。そしてスウェーデンでは,同棲や婚外子の出産も一般的によく見られるそうです。そして男女平等主義的な社会政策から,父親の育児参加率も高くなっています。一方で,社会経済的地位の低い階層では,飲酒や薬物乱用の問題も指摘されています。

では,こちらの論文を見てみましょう(Parental substance misuse and reproductive timing in offspring: A genetically informed study)。

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