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#30 昼からお酒を飲みながら、心地よい人間関係の距離感について考えた in ボリビア

2022年9月10日 sábado
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部屋のそうじが終わり、空っぽになった飲料水の20リットルボトルの交換も済み(電話注文してからいつ届くかわからない、という不便さ。土曜日は朝に注文すると、だいたい午前中には届く。)HIITで汗をかき、ヨガのストレッチでスッキリしたのち、作り置きしていたペンネ・アラビアータと白ワイン。のあと、知人からもらったドイツビールを開け、これを書いている。
休日の「昼からビール」の美味しさは国境を超える。

土曜の朝は、そうじから一日スタート、そしてロドリゲス市場へ買い出しへ行くのが習慣になっている。先週は知人に誘われ、朝からサッカーへ出かけたが、次の日、土踏まずが痛くてたまらなかった。

軽い気持ちで参加したが、みんな割と本気だった。

しかし、標高3600mを超える場所で、40歳超えてもなお、けっこう走れたことにびっくり。ヨガと、最近始めたHIITのおかげか。なにより、丈夫な体をくれた両親に感謝です。グラシアス。

週末に買い出しに出かけるロドリゲス市場は、ボリビア・ラパスの中でもお気に入りの場所になっている。お店のおばちゃん、チョリータさんとのやりとりが楽しく、たまに嫌なことも言われるけど、それも含めて人間味を感じるコミュニケーションがくせになっている。私がいつもナッツ類を買うお店のおばちゃんは、最初に会った時に軽く会話をして以降(私が日本人だということくらいしか知らない)、買いに行くといつも「Princesa (お姫さま)」と、私のことを呼ぶ。

初めて会って試食させてくれた日から、私は「プリンセサ」

ここでは常連さんにそういった呼びかけをすることがあるらしい。私は単純に気分よくて、ついついそのおばちゃんのところで豆を買ってしまう・・・顔見知りで、お互い名前も知らないんだけど、プライベートには踏み込まずもつながってる感があって、こういう距離感は心地よいな、とおもう。

お昼ごはんによく利用しているキューバレストランがある。
そこで会った巨漢の男性に、2度目に会った日。私にだけ食後のコーヒーを持ってきてくれた。サービスで。その時も「Princesa」と言われたが、この時はちょっと下心を感じた。。。こういうケースでも「Princesa」は使われるのだな。

「プリンセサ〜」と、突然運ばれてきた、甘いコーヒー

同じく、週に一度くらい食べに行く食堂のご主人(たぶん私と同世代)には最近「Reina(女王さま)」と呼ばれる。どうやらこれも常連さんへの呼びかけの決まり文句のよう。もう半年以上通っているが、いつも「あ、どうも。お元気ですか?」的なやりとりだけで、心地よい。最近、ここの家族構成も見えてきた。どうやら子供が3人いるらしい。そうやって時間をかけて少しずつ近づいていく感じが、いいな、とおもうのは私が日本人だからか。いや、たぶん私の性格からだろう。すぐ距離感をつめてくる人はどうしても警戒してしまう。

今日はボリビア人の同僚の35歳のバースデーパーティに誘われている。彼とは2年前、パンデミック以前に赴任していた頃にも顔を合わせていて、2年の期間を経て今回再び一緒に仕事をするようになってからも、私の提案する活動をサポートしてくれたり、と割と近いところで協働する機会がある。
ボリビア人にしては控えめな性格のようで、相手の様子を見ながら少しずつ近づいてくる感じは、好感が持てる。いや、ちょっと控えめすぎて、もっと意思を示してくれてもいいぞ!という場面も多々ある。まあ、当たり前だが、ラテンといえども、いろんなタイプの人間がいる。

本来が人見知りの私なので、なかなか心を開ける人はいないし、「この人なら、、、」と直感的に感じても心を開くまでに時間がかかる。そんな私にボリビアの多くの人はかなり早い段階で距離感をつめてくるので、本能的に後ずさってしまう。なかには私のストレスになるところまで、おかまいなしに踏み込んでくる人もいたりして。どこまでいっても自分を押し出すタイプの人とは、自然と関係が遠くなっていく、し、そうやって自分を守ることも必要だわ、と割り切っている。海外でサバイブしていくとは、こういうことでもある、とおもう。

昨日、いま動かしているデザインプロジェクトのリサーチで、障害者のデザイナーが属しているというデザイン事務所「PIMIENTA」に、生徒をひとり連れて訪問した。普段の仕事の様子や、どのようにして今の形になったかの経緯など、代表の女性に話を聞いた。

実験的な制作も多いが、基本はテーマに沿って絵を描くらしい。
真剣に話を聞く生徒。フォークを使ってパターンを作ったデザイン事例。

ボリビアでは今現在、障害者をデザイナーとして雇用しているデザイン事務所は、ここ以外にはないらしい。訪問を終え、生徒と話しながら歩いて帰る。二人で「素敵なところだったねー」と。そして、プロジェクトをどう進めていけるかについて話していると彼女が不意に「帰る(戻る)予定ある?」というようなことを私に聞いてきた。「一旦家に帰ってから学校に戻る」と、その後の予定を言う私。「じゃなくて、、、」
「あー、Centro Achumani(前に一緒に行った別の障害者施設)は、また時間決めてワークショップをしに戻ろう!」と、私。
苦笑いしキョトンとする彼女。「ん?どこに戻る話?」
「アツコ、来年3月に日本に帰ってからボリビアには戻ってくるの?」
「あー、、、仕事次第かな。ボリビアでなにかできることがまだあれば戻ってくるかもしれないけどね。今のところ予定はない。」と言うと、
「じゃあ、プロジェクトの計画を立てなきゃね。」と、彼女が言った。

教育の中で生徒に渡せるものなんか、ほんの少しあるかないか。一人でもいいから、その人の中に深く残る種みたいなもんがひとつ渡せたら、まる、と私はおもう。言葉が拙いので、どれだけ通じてるかはわからないけど、私は彼女と会話する時間が心地よく、ミーティングで他の子が現れない時や、二人で障害者施設訪問の交渉に行った帰り道にも、今まで行った国の話やお互いの恋愛の話をしたりしたな、と振り返る。
今年の2月から配属先での活動を本格的にはじめてから半年が経った。
JICAでの中間報告も終わり、

いろんな意味で距離感が微妙な集合写真。(JICAボリビア事務所での中間報告にて)

今は各プロジェクト、授業をどうまとめていくか、終わる形を想定しながら動いているので、生徒にも私が日本に帰るまでにどう展開して結論づけるか、みたいな話を、最近はよくしている。生徒の中には「あと2年いてよ」とか「アツコ、3年いるよね」とか、もう少し一緒にやりたい、という気持ちを持ってくれている子もいて。少しずつ関係が育ってきているのを感じて、うれしい。

アート活動で通っている障害者施設の子たちとも、最後のバイバイを想像すると、なかなかつらい。
こないだの活動では新しい女の子が二人参加したので、彼女たちの作業をサポートしながら作品の写真を撮っていた。すると、いつも参加している子が突然泣き出し、私を叩いてくる。しまいには、机の下に潜って泣きわめいている。言葉をよく理解できない私に、生徒が通訳してくれ「アツコが自分の作品の写真を撮ってくれない」と気分を害して泣いていたことがわかった。その後「ちゃんと描いているとこ、いつも見てるから大丈夫だよ」と言うと、「カスコー、te quiero,(あなたが好き) No te vayas…(行かないで)」と、抱きついて離れなかった。(彼女は私のことをカスコと呼ぶ。スペイン語で、ヘルメット、の意味)と、こんなふうにくっついてきたかと思えば、別の日に会うとそっけなかったりする。

このギザギザは文字。私のお話の本をせっせと作る彼女。「カスコー・・・」と言いながら。

気持ちに正直な彼女たちを見ていると、いつも幸せをもらえる。最後のお別れは、そっけなく「Adios!!!!」てくらいのを、期待している。



2022年9月17日 sábado
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先週の土曜日に招待された、同僚の35歳のバースディパーティがなんだかすごかったので、少しリポートしたい。
午後6時からレストランで、と聞いていたので、親しい友人数人で食事会だと想像していた私。ボリビアでは大抵、ケーキを用意し、外で食事、というパターンの誕生日会が多い。私も先月そんな感じで、8月お誕生日三人の合同誕生日会をしてもらったところだ。

左から、30代、40代、20代
そして、ケーキに顔を突っ込まれるのがお決まり。

この同僚からは、丁寧に招待状がメールで送られてきたのと、念押しの「忘れず参加してね」のメッセージが一週間前に届いたので、かなり気合が入っているな、とはおもっていた。
ボリビア時間を考慮し、私は40分遅れでレストランに到着。「Cumpleaños? (誕生日会?)」とお店の人に聞かれる。「Sí.(はい)」と、こたえると二階へ通された。すると、そこには椅子がセッティングされ、食事会ではない雰囲気。しかしまだ人はまばら、

会場のレイアウトを見て、普通の誕生日会ではないと気づいた。

プロジェクターがある。そして、やたら凝ったケーキも用意されている。スティーブ・ジョブズのイラストに、上にはマイケル・ジャクソンが「Pow!」しているではないか。

この力の入れよう・・・

予定より一時間半くらい遅れて会が始まった。その頃には会場内に顔見知りの教員もちらほら。
そして部屋が暗くなり、彼の生い立ちムービーが始まる。

幼少期、そして家族のことなど自分の半生を振り返る彼の語り。

自分の両親がどんなだったか、また自分に大きな影響を与えたもの、デザインの仕事、音楽など、それらの紹介が続く。そのなかで、チャップリンとマイケル・ジャクソンの存在がいかに自分にとって大事か、と。おう!なるほど。ようやく、私のなかで、ケーキのデザインとつながった。
すると、映像がチャップリンの映画のワンシーンに切り替わり、チャップリンに扮した人のパフォーマンスが始まった。

途中、チャップリンに絡まれ、苦笑いする私。名曲「Smile」に乗せて・・・

余興の人まで呼んで、こんな構成考えて、そりゃ、絶対来てね、て言うわな、と、そこで起こっている出来事をぼーっと眺めていた。結構パフォーマンス長いなー、とおもいながら。すると、今度はマイケル・ジャクソンの曲。いったん、裏にはけたそのチャップリンが今度はマイケルになり、ダンスを披露。「なんだこれは?」と、半ば呆気に取られつつ、そのクオリティの高いとはいえないマイケルダンスを鑑賞。その後、バック・ストリート・ボーイズ?かなんかのダンスで余興が終わった。いつになったら誕生日の彼が出てくるのか??とおもっていたら、裏から化粧が残ったままの同僚が出てきた。
「えーーーーーーーー!!!!!!!!!!全部お前やったんかーーーーーい!!!!!!!!!!」

パフォーマンスを終え、招待客にあいさつする同僚。

この状況がおもしろくて、笑いそうになる私。しかしみんな拍手喝采の大真面目。その後、別の同僚が出てきて、会を回す。まさに結婚式の二次会よろしく。その後、ちょっとした演出を交えて招待客一人一人へ彼からメッセージが渡される。

一人一人ハグを交わしてメッセージカードをもらった
笑えるポイントは多いものの、大切な人だけの大事なお祝いに招待してくれてありがたい。

その後は、2年前に会ったことのある懐かしい人たちと会話も楽しみながらテーブルについて食事。そしてボリビアではお決まりのパターン、どんなイベントでも最後はダンスパーティと化す。12時まで会場で踊ったあと、数人でディスコへ移動。

ちょっとだけなら、とついていき、結局朝4時まで踊るハメに。

閉店になる午前4時まで踊った私たち。だが、誕生日の同僚は、なかなか椅子から立たない。聞くと、「今日のパフォーマンスのために朝6時からダンスの練習をした」「構想と準備に3ヶ月かけた」と。そりゃもう抜け殻だわ。という、おもしろおかしい誕生日会に参加できて、しあわせな一日でした。グラシアス。

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ATSUKINO(アツキーノ)

2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/

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