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《親ペン雑記 #2》一方通行のコミュニケーション

 日経電子版の記事【デンソー26年に倍増 東海の製造業、活躍進む女性管理職】では、官民で進む女性活躍への取り組みがリポートされているが、私が注目したのは、文中の次のくだりだ――

21年度以降に手軽に育休中の女性が職場とコミュニケーションできるような「育休アプリ」の導入も検討する


 人間の社会で、日常的な事に始まって大きなプロジェクトに至るまで、何事かをなすには、何にもましてコミュニケーションが、コミュニケーションの質量が重要になってくる。そこに十分な量のコミュニケーションがあって、かつ、その質が高くなければ、情報が正確に共有されず、誤解を残したまま事が進行して、満足のいく良い結果が得られなかったり、計画そのものが頓挫してしまうことにもなるだろう。
 育休中の女性が気軽に職場とコミュニケーションできるような仕組みは、出発点としてとても重要なことに違いない。


 人と人との関係で出発点となるコミュニケーションの不足が原因で物事が滞ったり、軋轢が生じたりするのは、そんなことは望んでいない当事者にとって実に残念で不幸な現象だ。ところが、実際には日常的にいたる所でそのようなことが起きている。
 例えば、コンビニという所には、言ってみれば社会の縮図のような性質があって、様々な人間模様が観察できる。もちろん、最近はソーシャルディスタンスの影響で距離をとるから、なかなかそのような現場を見聞きするようなこともないが、最近もこんなことがあった……


 お客が店員さんに何かを要求しているのだが、聞き取れなかったらしく聞き返したのだ。その時のお客の反応は、怒って大きな声で「袋!」というものだった。
 もちろん店側にはお客様に誠心誠意対応する義務があるが、マスクをしてただでさえ声がこもっており、しかも、お客と店員さんの間には分厚いビニールが垂れ下がっている。声が小さければ聞き取れなくても不思議はなく、つまり、そもそもコミュニケーションが成立していない……怒って一方的に店員さんを責めても仕方ないように感じた……


 また、ちょっとややこしいがこんな場面を目撃した。
 某コンビニのマイルが貯まるなどお得な機能があるアプリが、某バーコード決済と連携して、支払いのバーコードをスキャンするだけで良くなった。それまでは、アプリのバーコードと支払いのバーコードをそれぞれスキャンする必要があった。
 ややこしいのはここからで、後日親切な店員さんが教えてくれたのだが、実は、レジの操作で、アプリの入力画面(商品などを入力するのと同じ画面)と決済の入力画面は別の画面だという。今までは、商品などのバーコードを入力する画面でアプリのバーコードをスキャンして、その後、決済手段を選択して(画面を切り替えて)、支払いのバーコードをスキャンしていた訳だ。
 お客はそんなこと知るはずもない。私が目撃した場面では――
 お客「アプリでお願いします」
 店員「は、かしこまりました(レジ画面をアプリの入力画面に戻している様子)……(お客のスマホを見て)あれ、某バーコード決済ですね?」
 お客「違うわよ、アプリって言ってるでしょ」
 店員「あの……アプリの入力と決済の入力は違いまして……」
 お客「はあ?」
 店員「(説明をあきらめる様子)分かりました(再びレジの操作画面を決済の入力画面に戻して、お客の差し出している支払いのバーコードをスキャン)ありがとうございました」
 ……


 第4次産業革命の下、IT化が進行する中、世の中がどんどん便利になっていく一方で、コミュニケーションの取りにくい複雑な事象が発生していることは間違いない。コミュニケーションには、何よりも忍耐と、相手の言っていることを理解しようという謙虚な姿勢が必要だ。それなくして、一方的な、あるいは高圧的な姿勢では、そもそもコミュニケーションが成立しない。情報を正確に共有するには、自身の見解をいったん脇に置いて、まずは、相手の言っていることに耳を傾ける必要がある。
 日経電子版の記事や、身近な事例を通して、改めてコミュニケーションの難しさと重要性、一方通行のリスクに陥らないことの大切さを考えさせられた。


#日経COMEMO #NIKKEI

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