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『天使の翼』第13章(1)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 チャンスとは、偶然の中から、偶然という名の様々な出来事の中から、自分との関りを見付けだす、見つけ出せる眼力そのものに他ならない。
(銀河帝国第一王朝時代の国民的なアスリートが、インタビューで「いいチャンスでしたね」と聞かれ、憮然として答えた言葉とされる)

 『風のデイテ』の噂は、瞬く間にアンコーナの高原地帯、ローラのいう所の『空白地帯』に広まっていった。
 なにしろ、高原地帯に散在する村や町に、マウンテンデビルにまたがった見目麗しい(?)女性吟遊詩人が降り立つのである。文字通り、天使……いや、それは秘密……女神の降臨的な(ごめんなさい)叙事詩的なシーンだ。
 マウンテンデビルという謂わば神獣と長年かかわってきた地元の人たちにとっても、デビルに人が乗る、というのは、前代未聞の出来事であった。ある村に降り立った時、感極まった一人の古老が教えてくれたのだが、恐らく、デビルに人が乗ることを禁ずる法律はない、らしい……そんな事態が起きるとは誰も想定していなかったのだ。これは、デビルハンター族に係わる法制の盲点だとも言える。

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