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《親ペン雑記#9》仕事の『言い訳』10パターン

 ソニーの再建を題材にしたこの記事で『言い訳』という言葉が出てくるのは末尾の次のくだりだ。少し長いが引用してみると――

「平井はエレキを知らないから、〝外〟から来た人間だから簡単に人が切れるんだ」とよく言われました。とんでもない。社内でも社外でも、つとめて笑顔でいたけど心が痛まないわけがない。誰だってそんな(リストラなどの)決断はしたくない。でも、私がやらないとまた先延ばしになってしまう。
言い訳や愚痴はなし。経営者はなんと言われても結果を出さないといけないんです。この時の社員には、ソニーに対する貢献に感謝の気持ちを伝えるのと同時に、なぜそういう判断に至ったかをその場で伝えました。それが最低限の礼儀だと思ったからです。
(太字引用者)


 人間、特に仕事などで追い詰められ、また、失敗したり、厳しい決断を迫られると、どうしても『言い訳』がましいことを言って一時しのぎのストレス解消に走りがちだ。その結果泥沼にはまって、後がない状況に追い込まれてしまったり、自らの評価を決定的に貶めてしまうことになる
 いい機会なので、そんな人の言い訳を見抜き、あるいは、自ら言い訳の誘惑に陥らないようにするために、【仕事の『言い訳』10パターン】と題して整理してみることにした。


(パターン1)『それは社員の仕事だろ!』

 普段、現場でパートさん・アルバイトさんを使っているような仕事をしていると、一度はこのセリフ聞いたことがあるのではないか?面倒な仕事を頼むと、あるいは、たまたま虫の居所が悪かったり、多忙だったりすると、このセリフを繰り出して逃れようとする……
 言うまでもないが、このセリフは典型的な自家撞着である。作業割当を決め、誰にどのタイミングで何をやってもらうかジャッジするのは、文字通り社員の仕事。くだんのパートさんは、社員の仕事はやらないと宣言しながら、堂々と社員の仕事である作業割り当てに踏み込んでいる。越権行為なのだ。もちろん、クレーム処理など責任ある社員が執り行うべき業務もあるだろうが、大半は当たらない。


(パターン2)大声を出す

 世の中には大声でまくし立てて、威嚇し、話に割って入る間を与えず、周囲を黙らせて自説・言い訳をゴリ押ししようとする輩がいる。
 もちろん、いかなるディスクール(言説)も、大声にしたところでその信憑性が増す訳ではない


(パターン3)だんまり

 これは、ある意味始末が悪い。攻める足掛かり、(失敗した)相手を反省させるとっかかりを提供してくれないのだ。何か深い訳があるのでは、とさえ思わせる。数ある言い訳の中でも強力な部類の言い訳かも知れない。
 状況にもよるが、このような場合は、本人自ら弁明の機会を放棄しているのだから、さっさと(処断して)先に進んだ方が有益かも知れない。


(パターン4)しかとする

 注意しても、しかとして無視したり、表面だけ恭順の意を示すのは、反省を伴わない立派な言い訳の一態様であると思われる。


(パターン5)淡々と訳の分からないことを語り続ける

 時々いるのが、特に反抗的になる訳でもないが、淡々と言い訳を繰り出し、しかも、それがもどかしい位ピントを外れた意味不明の内容である場合だ。
 こういう場合は、一度黙ってもらって、理路整然と反駁できないよう言い聞かせるべきかも……


(パターン6)噓をつく

 これは、明らかに嘘とわかる場合もあるが、困るのは巧妙な隠蔽工作を伴う場合だ。裁く側にも油断ない抜け目なさが要求される。簡単に信じず、継続調査すべき。


(パターン7)話を逸らす

 言葉巧みに話を逸らしたり、より大きな問題、カテゴリーの中に埋没させようとする手法がある。相手のペースに持っていかれないこと。


(パターン8)記憶にない・自分ではない

 問題の核心に触れようとすると、途端に記憶喪失の症状を発する。立証責任をこちらに押し付けてくる分、ある意味最強の言い訳手法と言える
 明らかに本人に責任があると分かる場合は問答無用という手もあるが、禍根を残さぬためにも決定的な証拠固めが必要となってくる。やっかいだ……


(パターン9)普段の自分ではなかった

 失敗した自分そのものを、普段の自分ではない、あたかも別人のように仕立てて(=普段通りの冷静な自分だったら失敗はしなかった)、同情・減刑を誘う手法。もとより、そんなに甘くはない。


(パターン10)言い訳自体を盾に取る

 失敗の理由・状況を詳細に述べ立て、不可避の事態であったと主張する。これは、冒頭の(パターン1)同様典型的な自家撞着と言える。そんなに詳細に説明できるなら、なぜ事前にリスクを回避できなかったのか、ということだ


 言い訳のパターンにはまだまだ様々な態様があるかも知れないが、つくづく自分では真似したくないと思う。思わず咄嗟に言い訳が出てしまわないよう自戒すべきだと思うのだ。



#日経COMEMO #NIKKEI

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