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『天使の翼』第12章(2)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~

 わたしが最初に考えたのは、近くに誰かいないかということ――敵であるSSIP,シャルル、ローラ……そしてデビル・ハンター……
 わたしのいる低木の茂み――半径3標準メートル程のごく小さいもの――は、砂地の窪地にあった。窪地のふちは、風化した砂岩で……つまり、わたしは、あそこまで這い出していかなくては、周囲を観察することはできない。少なくとも今見える範囲には誰もいないし、倒れてもいない……エアカーの残骸らしきものもない……
 (なぜこんな所に、吹っ飛んでたのかしら、わたし)
 疑問を感じた途端、シャルルの身が心配になった。
 危険がどうのと言っている場合ではない。わたしは、茂みから這い出て立ち上がった。その時になってようやく、わたしは、自分の体のことを考えた――生乾きの湿った状態――なぜ濡れているの?――でも、どこも痛くない……わたしは、体をひねったり、のばしたり、さすったりしてみた……怪我はないようだ。……SSIPのパトロール・エアカーに乗っている時、いつもの習慣でちゃんとシート・ベルトをしていたのだ……いや、おかしい。シート・ベルトをしていたら今もわたしはエアカーの車内に取り残されているはずで、こんな所に横たわっていたというのは……

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