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「歴史の研究」を読む

今の世界が置かれている現状がまさしくトインビーが指摘する状況に酷似し、日本も例外ではないことに気付くためにも推奨したい本。
全十二巻(英文)、作者はトインビー(英国)。また和訳も刊行され下島連など二十五巻。また関連図書もいつくは出版される。

21文明を記述

歴史研究家のトインビーは、イギリスの大学においてで古典学を学ぶ。王立国際問題研究所の部長勤務するなど経歴を持っている。WWⅠ終戦後の1919年、外務省に所属しパリ講和会議の専門委員会にも携わっていたそうです。
氏は、ペロポネソス戦争(紀元前5世紀の終わりにギリシアの二大ポリス、アテネとスパルタの対立から起こった戦争)に直面した古代ギリシアと世界大戦に直面するヨーロッパ文明が類似しているという着想を得た。その視座を世界全体に拡大し書物として『歴史の研究』を執筆。冒頭述べたとおり12巻から成り、1934年に1から3巻、1939年には1から6巻までが、1954年に1から10巻までが出版。1961年に第11巻と第12巻を前10巻までを再考察した書物として発表したとされる。

この本の特徴は、国家を中心とする歴史観を否定し文明社会を中心とした歴史観を提示。西欧文明の優位を退け、

一、 第一代文明
  シュメール、エジプト、ミノス、インダス、殷、マヤ、アンデス
二、 第二代文明
  ヘレニック(ギリシア・ローマ)、シリア、ヒッタイト、バビロニア、  インド、中国、メキシコ、ユカタン
三、 第三代文明
  ヨーロッパ、ギリシア正教、ロシア、イラン、アラブ、ヒンドゥー、
  極東、日本、朝鮮

これら21文明を世界史的な観点から記述されている。

歴史の親子関係など

氏は、第三代までの諸文明は歴史的に親子関係にあると説明する。つまり、文明は以下の4過程を経て次の世代へ移行する述べる。

発生→成長→衰退→解体

また、文明は

1 外部における自然・人間環境
2 創造的な指導者

この2条件によって発生する。そして文明は以下の条件により成長する

1 気候変動や自然環境
2 戦争
3 民族移動
4 人口の増大

しかし、それらに挑戦(応戦)し失敗することで「弱体化」が始まる。終いには「衰退」に向かうと考えている。
そうすると、指導者は事態対応の能力を失い、社会は指導者に従わなくなり、統一性を失う。そうして内部分裂が進むことから、その指導者は保身のために権力を強化する。しかし、結果的に大衆はプロレタリアートによる反抗を通じてその文明は解体されると定式化した。

有名な言葉に・・・

「いかなる大国も衰亡し滅亡もする。しかし、国が衰弱する要因はいくつもあってこれは自覚できる、その対処もできる可逆的なものである」
「ただ、一番厄介な大国衰亡あるいは滅亡につながる要因は何かというと『自分で自分のことを決められなかった国は速やかに滅びる』」
と述べている。
これは、ローマ帝国の滅亡を指している。国の防衛を傭兵に依存したことを指している。

最後に

前述の文明が滅ぶ3つ要因がある。そのようにトインビーが述べる。

1 自国の歴史や神話を学ばない民族
2 自国の未来に対する理想を失った民族
3 心の価値観よりお金や物への価値観を大事にする民族

今の世界に対する不安を抱く、抱かない?
そう悲観的になら必要もないが、楽観もできないような気がする。