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「それでも夜は明ける」

原題:12Years a Slave
監督:スティーブ・マックイーン
製作国:アメリカ・イギリス
製作年・上映時間:2013年 134min
キャスト:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ
劇場公開日:2014/3/7

 勤務があると気になりながら見逃してしまった映画も当然ながら多い。映画に集中したい為に基本的に映画館へ足を運ぶが、条件が整う場合はネット配信を利用することがある。
 この映画は実話として、且つ、「過去」を描いているように錯覚するが、終始観ている間厳しいものに締め付けられるのは人種差別が「過去」の遺恨ではなく連綿と現在に繋がっていることの現実を知っているからだろう。
 この映画を観終わったtimingでKKK元最高幹部のデービッド・デューク氏(66)の上院議員選挙立候補表明記事(2016/7/22)を読んだのは偶然とは云え映画では本当のハッピーエンドを描けなかったことを突き付けられる。
 元最高幹部とあるのは、KKK現役では立候補出来ない為で実際彼は「米国で白人が脅かされているとした上で『欧州系米国人』はみずからの利害を守るための政治家が必要だ」と主張している。当然、彼らの思想の中に有色人種の日本人も守られてはいない。ニュースでも報じられているように最近のアメリカでは警察が介入した事件でデモを生じさせることがまた多くなっている。

 「自由黒人」の言葉が消化出来ず、つまり納得出来ず映画を観ることになった。自由日本人が存在しないように、敢えて「自由」を付与すること自体其処には制限付きの人種差別が在る。当時の記録では毎年一割程度の自由黒人と云われる方々が居た。彼らは脆い「自由」を守る為に「黒人奴隷」を買わざるを得なかった状況もあったらしく、心情を察すると重いに尽きる。
 結末の描き方は評価が分かれるところだろう。現実に近いと云えば絵空事の印象にしない分よかったのかもしれないが、後味はどうか。
 ブラッド・ピットの出演は意味があったか疑問だ。寧ろ、プロジューサで徹した形が彼の評価を上げたように映る程、私には残念なシーンだった。

 主役はソロモン役のキウェテル・イジョフォー。彼の自由証明書がパスポート同様携帯しない場合は如何に彼を守ることが出来ず、12年の長きに渡り黒人奴隷者と白人社会の間に落とされた故のそのどちらにも所属していない立場から生じる葛藤、元の生活への復帰を描いてる事が映画のテーマだ。
 だが、大農園主エドウィン・エップス役マイケル・ファスベンダーが出てくるところからどちらが主役かと流れが変わるほど選民主義を体現した彼の暴力をもってしても何も満たされない人の業の表現が圧巻だった。
 監督とファスベンダーのこれまでの関係を考えると監督は彼に任せるところが大きかったのだと納得する。
★★★☆

 


 


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