見出し画像

ボヘミアン・ラプソディ和訳後分析⑧~明日(あした)の今頃~ballad

こんにちは。

前回の⑥⑦では、バラードの歌詞の分析とは少し離れて、バラードの原型「カウボーイ・ソング」と、映画の関連についてタイトルや曲全体にからめてお話ししました。

今回は、しらべるうちに、アルバムをさかのぼって、バラードの歌詞について気づいたことを述べます。


バラードの1番の、If I’m not back again this time tomorrowというところです。

this time tomorrowの意味がよくわからないので、しばしば分析が中断してしまいましたが、デビューアルバム「Queen」にヒントがありました。

Doing All Rightの歌詞に同じものがありました。


"Doing All Right" from "Queen"(1973)
Written by Brian May and Tim Staffell

Yesterday my life was in ruin
Now today I know what I'm doing
Got a feeling I should be doing all right
Doing all right

Where will I be this time tomorrow
Jumped in joy or sinking in sorrow?
Anyway I should be doing all right
Doing all right

should be waiting for the sun
Looking round to find the words to say
Should be waiting for the skies to clear
Every time in all the world

Should be waiting for the sun
And anyway I've got to hide away

(Ahhh, ahhh, ahhh, ahhh, oooh)

Yesterday my life was in ruin
Now today God knows what I'm doing
Anyway I should be doing all right
Doing all right

Doing all right

持っているCDに歌詞カードが入っていなかったので、Queen OfficialのYoutubeから書き起こしました。でも10行目とかCDとセリフが違う気が。ググっても歌詞が様々出てきて混乱中。多分ライブとかも歌詞が違うのでしょう。まあ、細かいところはいいでしょう・・・。

この曲は原曲はSmileのもので、ボーカル兼ベースのティム・スタッフェルさんとブライさんが作りました。

歌詞もちょっと違います。タイトルも「Doin’ Alright」でした。


これはボラプの映画でも、大学のパブみたいなところでsmileがギグ・シーンで演奏いてます。さらに映画でこの曲は「Doing All Right (...Rivisited)」という名で、ティムさんがボーカルで映画用に新しく録りなおされています。歌詞もコーラスのところがskies are blue(←to clear)とかsmileが基本ですが、一部クイーンの歌詞にもなっていて、ミックスされています。つまり、この曲には何パターンもあります。。。


とにかく、this time tomorrowがあります。


これこそ私が探していた答えです。


この感じです。

ティムさんとブライさんとロジャさんと、もしかしたらフレディと、他の、売れることを目指すミュージシャン志望者。夢見る若者がシェアハウス。

Where will I be this time tomorrow
Jumped in joy or sinking in sorrow?
Anyway I should be doing all right, Doing all right

明日の今頃、自分はどこにいるのか?
喜びで舞い上がっているか、悲しみで沈んでいるか。

この明日をも知れない生活。

20世紀初頭のパリのボヘミアン(アーティスト)のような生活。

映画でも描かれていますね。

戻りますが、この歌の始まりも同じような雰囲気。

Yesterday my life was in ruin
Now today I know what I'm doing
Got a feeling I should be doing all right, Doing all right

昨日(まで)、自分の人生は死んでいるも同然だった。
(だけど、)今日、今この瞬間、自分が何をしているかわかった。
自分のしてることはうまくいくぞ、って感じたんだ。

これは最後にも繰り返されます。

「明日の今頃」、この1970年頃のウソ偽りのない若者たちのぎりぎり感。

これです。


これを描きたかったんだと思います。

もし明日の今頃戻らなかったら、は、この感じなのです。


「人生を投げ出しちゃった」はみんな言えます。

ブライさんは父親に勉学を捨てたと思われてロックを反対され、ロジャさんは歯学部を中退、ティムさんもフレディも最初から歌手になろうとして親を欺いてアートスクールに入ったかもしれない。みんなの思いをいれたのではないか。

親の望むことは、堅実な人生。息子(達)は勉強が自分を救うとは思えなかった。

泣かせるつもりはないけど。

今、うまくいきそうな感じをとらえて、もし明日の今頃戻らなかったら、と問う。

もしかしたら、学生時代のいつも描いていた妄想なのかもしれない。


また、デビューアルバム「クイーン」に収録されているこの曲は、歌詞は一部変えられているものの、フレディの声はティムさんそっくりで、最初スマイルバージョンを聞いたとき、フレディが歌っているのかと思いました。

というか、4人とも美しいコーラスをするくらいなので、声が似ているのかもしれません。

でもフレディも、友人のティムさんが抜けたからスマイルに入ったわけで、ティムさんの代理としてわざと似せていたのかもしれません。ティムさんやスマイルに対してリスペクトをしていたのではないでしょうか。

クイーンの最初の曲として知られる「keep yourself alive」のように、この曲はきっとフレディやクイーンの大切な曲で、ライブではアールズコート(1977年6月6日)でも演奏されました。

驚異的なことに1年ごとにアルバムを出し、ライブのセットリストもバンバン変えて古いものは演奏しなくなるのに対し、これらの曲は原点を思い起こさせる大事なものだったに違いありません。ファンにとっても。


また、前述ですが、同じアルバムのフレディ作詞「グレート・キング・ラット(Great King Rat)」にも似たような歌詞が。

Where will I be tomorrow
Will I beg, Will I borrow
I don’t care, I don’t care anyway

明日自分はどこにいるだろう
物乞いをしているか、盗みをしているか
どうでもいい、いずれにしてもどうでもいい

this timeはないものの、同じセリフです。

ボラプにもかなり関連がありますね。


そして、もう一つ思い起こされるのが、似たような映画です。

1969年、ダスティン・ホフマンがでた、「真夜中のカーボーイ(Midnight Cowboy)」。


ネタバレ注意!!


この映画は成人指定された映画で初めてアカデミー賞をとり、すぐに成人指定が解除されました。

主演はジョン・ヴォイト(1938-)。アンジェリーナ・ジョリーさんの実父で、彼女が幼い頃離婚してからは疎遠らしいです。トゥーム・レイダーで親子役で話題にも。クリント・イーストウッドと同じく業界で珍しい共和党支持者だそうです。

ダスティン・ホフマン(1937-)は言わずと知れた、アメリカの人気俳優。ユダヤ人の血を引きます。そのせいか熱烈な民主党支持。身長はたった167㎝(アメリカではかなり小さいのでは)。真っ黒な髪と真っ黒な目。2年前映画デビューし、その年の「卒業」はサイモンとガーファンクルの歌でも同様人気に。しかし次の映画がこれで、なんとチンピラ役。

大人の女性とウフフな学生役(28歳くらいだが)で知名度を上げてから、2年後にチビ(ヴォイトは191㎝)の汚れ役に。

ヴォイトさんも1967年で映画デビューし、この映画カーボーイで知名度を上げました。彼も移民の家系(というかアメリカだし)で、二人はほぼ同じ年(30歳くらい)です。

二人ともアカデミー賞にノミネートされています。

この映画は監督がイギリス人で、英国アカデミー賞もとっています。

人種、宗教、娼婦、男色、アメリカンドリームなどがつまった社会派の作品です。とても深いようです。私は一回見ただけで意味がよくわからずあまり覚えていませんが、ラストは衝撃です。

とにかく、カウボーイの格好をしたテキサス出身のジョー(ヴォイト)が、自分の男性的魅力でジゴロ(ハスラー)になろうとして1969年のNYにやってきたものの、相手にされずに苦戦。娼婦に騙されたり、男娼の道に入ってしまったり、ダスティン扮するチンピラに最初カモにされたりします。

ダスティンの役は汚らしいチンピラですが、名前はRatso(ラッツォ)。アメリカではRat(ネズ公)とよばれる、とぼやきます。

これはGreat King Rat?

フレディは、1980年後半から90年頃に、イギリスの豪邸をダスティンが見たいというので一度招いて会っています(ダスティンは勘が鋭いのか生前のフレディに会うなんてすごいです)。

劇中でラッツォは最後は何かの病気でなくなります(最大のネタバレ)。

ラッツォが何歳の役か知りませんが、ラット王も44歳、5月21日の誕生日に梅毒で亡くなるところから始めります。

もしかしたら、影響を受けているかも。

または偶然。

フレディは1969年とかは当然稼ぎがないので、映画代を出せたか知りませんが、食べずに演劇とかをしょっちゅう見ていたそうです。

ダスティンも低身長なのに映画では自己プロデュースとかして、まったくそれを感じさせません。アラブ系(ユダヤ系をそういうのなら)移民という以外にもフレディに似たところもたくさんありますね。

当時もしフレディや周りのイギリスの若者が、イタリア発アメリカでヒットした西部劇やカウボーイにハマっていたらチェックしている可能性は高いです。

そして、その映画のテーマに衝撃を受けるに違いありません。アンディ・ウォーホルのパーティーシーンもあり、本当は本人が出るはずだったみたいです。カナリ前衛的な映画です。フレディはウォーホルにも写真を撮られており、自身でも10th album"hot space"1982ではウォーホル風のジャケットを自らデザインしてます。

田舎から一旗揚げようと都会(NY)にでてきた若者が、自身の美しさを武器に奮闘しますが、うまくいかず、男娼の道にもはまってしまう。

この時点でロンドンに来たフレディが重なります。


因みにダスティンさんはジャズピアニストを目指していましたが、いろいろ進路に迷い、医者を目指したりもしつつ、演劇の道に入ります。

イーストウッドの「許されざる者」(1992)で悪役のジーン・ハックマンとは俳優めざし一緒に住んでいたらしいです。また、ダスティンさんはイーストウッドの「マディソン郡の橋」や「マーガレット・サッチャー」のメリル・ストリープさんとは、「クレイマー・クレイマー(Kramer vs Kramer/1979)」で共演し、ノミネートだけでなく初めてアカデミー賞をとります。

さらに、スピルバーグ氏もユダヤ系で、フレディのバイセコー(7thアルバムJazz/1978)にも歌詞に「ジョーズ(1975)」が出てきますが、ダスティンと同じくウクライナ系のユダヤ人の血を引きます。そしてスピルバーグはフレディと同い年です。

あとはルーカス(1944ー)のスターウォーズ(1977封切、バイセコーにも歌詞がでてくる、Jazzツアーライブにダーズベーダー出る)についても書きたいですが、長くなるので割愛します。


こんな感じでこの時代はいろいろなものがリンクしている気がします。

これは、20世紀初頭のパリや後のNYもそうなのでしょう。色んな芸術家がジャンルを超えて刺激し合います。もっと昔の絵画(ダヴィンチとか)や音楽(モーツァルト・べートーベン)の世界、文学などもそうです。


まとめると、

Doing All Rightにバラードの謎の単語this time tomorrowのヒントがあった。

ということと、

仮説として、影響を受けていそうな映画に、当時の

「真夜中のカーボーイ」及びダスティンとその監督などがいそうということでした。

↑5252文字になったのでここでいったん止めておきます。


ごちゃごちゃになってしまいましたが、wikiなどで調べると当時の色々な共通点がわかって興奮してしまいました。

「明日(あした)の今頃」の謎はちょっとわかりました。

あの当時の原点の風景なのかもしれません。

苦しくもあり、楽しくもあり、今(曲のボラプを作成した1975年くらい)となっては大事な思い出。

そして、

「真夜中のカーボーイ」は見たかわかりませんが、とにかくフレデイの中では60年代後半はカウボーイがブームだったことが予想されます。

また、フレディ達が若者だったころ、ハリウッドやロンドン、他ヨーロッパの劇場や様々なシーンなどでは、次々に新しいアーティスト(俳優、バンド、脚本家など)や価値観が生まれ、とても刺激的だったに違いないと思います。


次回は、バラードはいったん離れて、再びオペラティック・セクションの分析をしたいと思います。

ありがとうございました。←5656字



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?