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美しい時間

散歩から帰ってくると、書斎の窓の外に猫が丸まっていました。
いつもこの中庭のガーデンハウスの上で遊んでいる、白い靴下をはいたような黒猫。中庭にはもう一匹、靴下を履いていない小さめの黒猫と、ふわふわした茶色っぽい毛の青い目の(だと勝手に思っている)猫が遊びにきます。

通りに面してズラーっと並んだ、一般的に想像されるようなレンガづくりのオランダの建物の中には、実はこんなかわいらしい空間があって、私がオランダの暮らしの中で気に入っていることの一つです。

1階に住んでいるオーナーのヤンさんが手入れをしているお庭にの池には、小さな黄色い睡蓮が咲き始めました。天気のいい日はお隣にある保育所のお庭で遊ぶ子どもたちの声が聞こえてきます。

向かいの1階にはご夫婦と男の子2人の家族が住んでいて、いつも家族揃って時間をかけて夕飯を食べています。(覗き見するわけではないけれど、オランダの人はあまりカーテンをしないのか、家の中がよく見えてしまいます。)その隣のおうちにはおばあちゃんがおそらく古い家具に囲まれて一人で暮らしています。隣り合うキッチンで、おばあちゃんと隣の家族がそれぞれ食事の支度をする。それぞれに流れるそれぞれの時間が美しくて、つい、夕暮れ時にはそっと目を向けたくなる。そして、自分自身の暮らしも、この美しさとともにあることを感じて、「ここに暮らせてよかったなと」飽きずにそう思うのです。

隣にそっと、誰かの暮らしがある。そこに、それぞれの時間が流れている。この美しい景色もきっと、これまでもずっと近くにあったのだと思います。
そう思うと、今ここにある時間も、そしてこれまですごしてきた時間も、とても美しいものだとあらためて思っています。

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