マガジンのカバー画像

短歌についての文章・評論

3
運営しているクリエイター

記事一覧

口語にとって韻律とはなにか   ――『短詩型文学論』を再読する――

1. はじめに

 平成二十七年版の「短歌年鑑」(KADOKAWA)を読んでいてとても驚いた箇所がある。特別座談会「短歌は世代を超えられるか」の小島ゆかりの発言である。

小島 五島さんの「鍋つかみ」の歌も、一字アケを使って字余りまでしているんだから、もっとリズムで読ませてって思う。

 ここで言及されている歌は、以下に引用する短歌のことだ。

くもりびのすべてがここにあつまってくる 鍋つかみ両手

もっとみる

句またがりのこととかだらだら考える

昨夜、後輩の小林通天閣さんと句またがりについてTwitterのリプライで話していたら、「(句またがりによる句と句の)溶接のメリット」は何でしょう、とたずねられました。

そもそも句またがりについて「句の溶接」ということを定義したのは小池光なので、立ち返って彼の「句の溶接技術」という評論を読み直してみました。(砂子屋書房の現代短歌文庫、『小池光歌集』に収録されています)

「句の溶接技術」で、小池は

もっとみる

斉藤斎藤「ちから、ちから」についてのノート

(この文章は2015年6月4日に「京大短歌」ホームページの「一首評の記録」に掲載したものです。)

   *

雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁 斉藤斎藤「ちから、ちから」『渡辺のわたし』(bookpark、2004)

昨夜(2015年6月3日)、テレビ朝日系列の「マツコ&有吉の怒り新党」で、斉藤斎藤さんの短歌が紹介されていた。Twitterなどで視聴者からかなりの反

もっとみる