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【掌編小説】55 鉢植えからネギを収穫した話

 ベランダにあるグレープフルーツの鉢植えに、雑草が生えているのを見つける。

 どこから種が飛んできたのか、スギナのような見た目。

 そのまま観察するのも面白いと思ったが、それにしては成長しすぎているし、地下茎を張り巡らされたら厄介なので抜いてしまおう――と引っ張っていくと案の定、根が深そうだ。赤玉土が盛り上がって、ずるずると根が出て来る。

 と、何やら重たい感触があったので指で掘り返してみると、ネギだった。

 スギナと思っていたのは、ネギだったらしい。

 いや、しかし本当にネギだろうか、ネギだとしたら、食べられるのではないか。食べるか、やめておくか。

 そんなことを思いながら、さらに土を掘り返してみると、どうやって育ったのかと不思議なくらいにネギが出てくる出てくる。二本目、三本目と収穫し、六本目、七本目となるとちょっと怖くなってくる。

 最終的に何本になっただろうか、鉢の容積から考えると物理的にありえない量のネギが積み上がる。横になって地中に埋まっていたのだとしても、曲がったところがまったくない。もう一度鉢に戻そうとしても不可能だろう、長さが鉢の横幅を超えているのだから。

 家の者を呼んでネギの山を囲み、さてこれをどうしようかと話し合う。

 しかし、本当にこれはネギだろうか?

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