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平和な釣り場は殺人現場となった

釣った魚を刺身にして食した。
これは私の夢であり、高いハードルであり、勇気が必要な挑戦であった。

今年は何回も海釣りに行き、たくさんの魚を食してきた。
サッパ・イワシ・サバ・カマス、そしてみんな大好きアジ。
食してきたと言っても、全て火を通して食してきた経緯がある。
火を通せばまずは安心だからである。

しかしここは日本。
日本人たるもの、やはり最終的には刺身に挑戦したいと切に思っていたわけだ。
本当にありがたいことに、日本人は魚の鮮度を守るために研究を続けてきた。
そして美味しく食べるための研究もたくさんしてきたのである。
海に囲まれた島国だからこそ蓄積されてきたノウハウがたくさんある。

今回は良型のアジを釣り上げることができた。
それをきっかけに、刺身を作ってみようと思ったわけだ。

魚にはすぐに食べたほうが美味しいものと、
時間をあけて食べたほうが美味しいものがあるという。
アジはすぐに調理して食べたほうが美味しい魚だ。

刺身で食べようと思った時に気をつけること。
それは鮮度をキープすることである。
食中毒や寄生虫にも配慮する必要がある。

必要なことは、釣り場で魚を締め、血を抜き、内臓を取り出すことだ。
つまり今までキッチンで行っていた作業を釣り場で行う必要がある。
しかも生きている魚を締めるのだから、相当ハードルが上がるのである。
つまりリアルタイムマーダーである。

死んでいる魚を処理するのと、生きている魚を処理するのでは残酷さも違う。
釣り場で売っているアジは茶色っぽい色をしているが、
釣り上げたばかりのアジは白っぽい。
締めるとだんだんに目の色が濁っていく。
締め方が悪かったのか、痙攣のような動きもあった。
これは完全なるマーダー発言なのである。

血抜きも終わった味は海水を少し入れたジップロックに入れ、
ガチガチに保冷して持ち帰る。

持ち帰って魚を捌く。
出刃包丁がないと本当に処理がしにくい。
3枚おろしという先人の知恵は、
魚を美味しく食べるためによく考えられた方法だと改めて感じる。
皮を剥かなくてはいけないが、これが簡単にはいかない。
Youtubeの人はいとも簡単にやっていたのになぜだ。
寄生虫をチェックするには、捌いた身を光に透かして黙示する。
そもそも寄生虫は内臓に潜んでおり、魚の死後に内臓から身にうつる。
でも安心はできないわけなのだ。

何とかかんとか処理を終え、30分ほど冷蔵庫で冷やす。
捌いた魚は一度冷やすと身が締まって美味しくなるらしい。
魚屋さんが切り身を冷蔵庫のショーケースに入れて売っているのは、
鮮度を保つほかにも理由があることに気づく。

そうして口に入った味の刺身がどれだけおいしかったことか。
美味しかったというか、命をいただく有り難さを改めて感じた。

おそらく魚料理の世界はまだまだ奥が深い。
しかし美女にモテるにはこのくらいで十分かと思ったりするが、
面白いのでこれからも続けていきたいと思うのである。

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