お正月を挟んで、実家に帰省していた。
実家は平素自分が住んでいる場所よりも気温が低く、夜間は屋内も割と冷え込んでいたけれど、布団の中はぬくぬくで、朝までホカホカで眠ることができていた。

自宅に戻ったら、実家よりは温かいはずだった。
年末に使っていた寝具をそのまま使い、お風呂上がりに布団に入る。
すぐに眠りに落ちたけれど、夜中に寒さで目が覚めた。

布団をしっかりとかけている筈なのに、布団の中が寒い。
発熱した体温が、そのままどこかへ吸い取られているのかと錯覚するほど寒い。
どんな真冬であっても、一度温まった布団の中は朝までほっかほかの筈なのに。
何時間も布団の中で眠っていた筈なのに、背中に手を入れるとひんやりしている。
お腹の上に手を置くと、お腹の上も温かく感じない。

おかしい・・・
慌てて押し入れから羽毛布団や毛布をだし、既にかけていた羽毛布団の上に追加した。
それでも寒い。いつまでたっても、布団の中は温まらない。

もしかして・・・
体温が吸い取られ続ける呪いでも受けているんじゃなかろうか。
そんなことを思いついて心の中で自宅周りに結界を張りながら、そんな阿呆な呪いってあるのかなと思った。
どんなに掛けるものを追加しても、布団の中は朝までひんやりしたままだった。

私はいわゆる低体温ではない。
平熱は３６度５分ほどあるし、身体を動かせばもっとあがる。
他の人と手が触れた時、相手が女性であればだいたい私の方が手が温かい。

翌日の夜は、厚い昔ながらの綿の掛け布団を追加した。
ありとあらゆるものを掛けて寝てみた。

・・・・・・お
・・・・・・おもい
・・・ふ・・・布団が・・・おも・・・い・・・

身動き一つ出来ないほど、布団は重かった。
それはそうだ。今私の身体の上には、薄手の毛布、薄手の綿の掛け布団、羽毛布団が二枚、厚手の綿の掛け布団、厚手の毛布が掛かっている。
こんなの新手の拷問のようなものだ。
息苦しい。寒さの前に重さで身体がおかしくなりそうだ。

仕方なく、薄手の綿の掛け布団と羽毛布団を外してみた。
それでも十二分に布団は重かったけれど、一晩中体温を吸い取られた昨夜のトラウマがあったので、身動きが出来ない重さの布団にもぐりこんだ。

それでもまた、夜中に何度も目が覚めるほど、布団の中はひんやりとしていた。

おかしい。
流石にこんなに阿呆みたいに掛け布団を掛けているのに寒いなんて。

ネットで調べてみて、すぐに原因が判明した。

これまで私は二階の和室で眠っていた。
昔ながらの戸建ての和室は隙間風で寒いけれど、布団の中が寒かったことは一度もなかった。
けれど、とある理由により夏頃寝る部屋を一階のフローリングの部屋に変えたのだ。

”フローリングは床からの冷気でとても冷える。”

ネットにはそう書いてあった。
私は厚手のマットレスの上に布団を敷いてその上に寝ていたから、まさか床からの寒さだとは気がつかなかったけれど、マットレスでも防げないほど床から冷気がくるのだと知った。

その日の夜は、ソファベッドにマットレスごと布団を移してみた。
ソファをベッドにしているのだから、床からはだいぶ高さがある。以前、真冬にこのソファベッドに布団を敷いて、温かく寝ていた経験もある。これなら大丈夫だろう。
それでも念のため、毛布二枚に厚手の掛け布団をかけることにした。

・・・ていうか
・・・・・・この掛け布団と毛布のコラボ
・・・おも・・・い

昔は冬は当然のように使っていた厚手の綿の掛け布団は、羽毛布団に慣れた身にはめちゃくちゃ重たく感じた。
寝るのにも体力が要るものだ。

そして夜中。

・・・さむい！

私はやっぱり目が覚めた。
布団の中は流石にひんやりとはしていなかったが、なんとなくスースーする。背中が温まっている気がしない。
お腹の上に手を置くと、身体の上側は昨日までと違って温かい。

・・・・・・マットレス、お前の仕業か。

私が使っているのは、厚みのある低反発マットレスだ。
もしかして、この厚みがサイドからスースーする冷たい空気を取り込んで、布団を冷やし続けているのではないだろうか。
そう仮定して、次の日の夜はマットレスと布団の間に一枚別の敷物を挟んでみた。

・・・・・・はぁ・・・

その夜、布団はちゃんと温まった。
私が今まで知っていた、朝布団から出たくなくなる、あのぬくもりだ。
そーっと重たい綿の掛け布団をめくってみた。
年末までそれで寝ていた、羽毛布団と薄手の毛布だけでもしっかりと布団の中は温まっている。
マットレスめ。なんてことしやがる。
お陰で大量の重たい掛け布団をうっかり掛けて、圧死寸前の目にあったじゃないか。

マットレスが冷たい空気を取り込むということは、夏は逆に放熱して涼しいかもしれないと思いながら、フローリングで寝る場合は冬のマットレス使いをやめることにした。

もしかして、冬に布団が寒くて眠れないと困っている方がもしいるのなら。
そのマットレス、冬はやめてみませんか。

いや、こんなコントみたいな事をしているのはきっと、私だけなんだろうな。。。