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新井素子「ショートショートドロップス」、三浦しをん「天国旅行」を読んで/本の話

この頃、短編をいろいろ読んでいる。
私は「とっぷりと物語の世界に浸れるのが小説の醍醐味」と思っている節があったので、手に取るのは中編以上のものが多かった。でも先日江國香織さんの「号泣する準備はできていた」を読んでから、短編もいいなとなりここ数日読み漁ってる。

まずこの「短期間でいろいろと読み漁れる」というのが新鮮な経験で、面白く感じる。

次から次にぽんぽんと話が読めて、その度「こんなオチ!?」「わかる〜」「うまいな〜」「え…どういこと…」と、ころころと心が動いて楽しい。重い話はあまりないので、所要時間だけでなく気持ちの面でも気軽に読めるし、もし気になったところがあったり、よかったなと思ったりしたら、その場でサクッ再読できるのもいい。

短編の中でも特に短いものはショートショートと言う分類になるらしいのだけど(厳密な定義はないらしいいが)、短いものは五ページしかない。五ページしかないのに、ちゃんと物語になっていて、きっちりオチまであるので唸る。しかも、そのオチが意外性のあるものが多い。

新井素子編「ショートショートドロップス」

この本のショートショートはちょっと不思議な話も多いのだけど、短いからこそリアリティがあるというか。断片的にしか情報がないからこそ、もしかしたらこんなことってあるかもしれない、って思わせるものがある。
日常でも「なんかあれ不思議だったよね」とか「よく考えたら変じゃない」みたいなささやかな違和感の残ることって時々あると思うんだけど、大抵の場合「ま、いいか」と流しちゃう。それの延長っぽい感じだから、有り得なくないかもと思うのかもしれない。

些細な描写をコツコツと重ねてクライマックスに持っていく長編、勢いよく爽快に駆け抜ける短編、どちらもそれぞれ良い。

それから、短いと初めての作家さんでも気負いなく読める。なんといっても5〜10分で読めちゃうから。そして、そうやっていろんな作家さんを読んでも、好きな作家さんは、あぁやっぱりいいな!この人!って再認識するのもまたいい。

私は、この本の中では、宮部みゆきさん、三浦しをんさん、辻村深月さん、恩田陸さんがやっぱり好きだなと思いました。有名どころのど定番のご面々だけど、やっぱり面白いよね。

でも、特に一つ選ぶなら辻村深月さんの「さくら日和」が好きでした。これは、不思議な話でもなんでもなくて、おそらく誰でも子供の時にこれに類する経験あるよねっていうことが書かれているんだけど、それを語るためのエピソードが秀逸というか。ごく普通の世界のこんなに何気ないエピソードで心の琴線をゆらす感じ、流石でございます。感嘆しました。

三浦しをん「天国旅行」

三浦さんは先述の本にも掲載がありましたが、ちょうどこの前長編の「愛なき世界」を読み終わったので買ってみました。

まだ「星くずドライブ」しか読んでいませんが、三浦さんの描く儚い愛はいつ読んでも素敵です。

ショートショートといえば、創設者は星新一さん。お名前と生みの親だというのは記憶にあったけど、お恥ずかしながら読んだことがないので、読みたい本リストに入れました。

読めば読むほど、読みたい本が増えていく。
積読は増えれば増えるほどいいんです。

あぁ本は面白い。

栫彩子(カコイアヤコ)関西が拠点のフリーのフローリスト。 店舗を持たず、受注制作でアレンジ・花束を制作し宅配便でお届けしています。書くことも仕事にしたい。趣味は読書と英語と3DCG。

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