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モダニズム建築に“日本”を見つける

法隆寺宝物館を初めて訪れたのは、大学生の時。
非常にモダンな現代建築にも関わらず、並々ならぬ日本らしさを感じました。
その正体が何なのか知りたくて、建築をスキになっていきました。

#建築をスキになった話 私の場合【目次】

・幼少期と思春期に重ねた原体験
・京都での寺社巡りに夢中になる
・法隆寺宝物館で感じた不思議な空間体験
・日本人としてのアイデンティティ



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幼少期と思春期に重ねた原体験


幼少期はイギリス、思春期にはアメリカに住んでいた。
いわゆる駐在員家庭だったのだけど、好奇心が旺盛な両親は、「せっかくの海外駐在なのだから。」と様々な国への旅行や美術館に連れていってくれた。

モロッコ、スペイン、イタリア、フランス、スイス…。

サグラダ・ファミリアやドゥォーモ、テート、グッゲンハイムなど一般教養としての有名建築物も沢山訪れた、らしい。

残念なことに、イギリスに住みヨーロッパ周遊をしていた頃の記憶はあまりない。

ただ幼少期に世界中のたくさんの「本物に触れる」という原体験を通して、思春期でアメリカに渡る頃には、随分と客観的な視点で行く先々の旅行地や建築物を見るようになっていた。

それだけ子供の頃から海外生活を経験し、多くの都市を巡っていると聞けば、大人になる頃には、更なる刺激を求めて、世界に飛び込んで行く人になるのだろうと想像してしまうとおもうが… 私の場合は逆だった。

京都での寺社巡り

日本に帰国して、大学生になると寺社仏閣巡りに夢中になったのだ。
正確には、石庭と茶室。

何にそんなに夢中になっていたのだろう。

その頃には理由も分からず、ただ本能に突き動かされるまま、気がつけば毎週末夜行バスに乗って京都や奈良に行ってた。
アルバイト代もフリーの学生ライターとして稼いだお金も、全てつぎ込んでいた。

そんな頃、法隆寺から皇室に献上した宝物が、上野の法隆寺宝物館に所蔵されていると聞いて訪れる機会があった。それが、谷口吉生の建築との出逢いだった。

法隆寺宝物館で感じた不思議な空間体験


煌めく水盤を横目に、小さなにじり口のようなエントランスを入ると、ハッと息を飲んだ。

繊細なルーバーから柔らかく差し込む光、風で揺れる柳、背筋が伸びる心地良い緊張感、端正なディテールと静寂な空気。あまりにも、美しかった。

たぶん、口を開けたまま暫く立ち尽くしていたと思う。
他の来館者の邪魔になっていることにようやく気づき、目に付いた臙脂色の革製の椅子(名作椅子のCAB!)に腰掛ける。

改めて眺めてみて、不思議なことに気がついた。
極めてモダンな建物にも関わらず、その空間には、私がいつも見てる寺や茶室と同じような“和”を感じたのだ。

自然が織りなす陰影の美しさ、静寂さ、心地良い緊張感…。同じだ。

しかし、伝統的な日本建築の技法や和の素材を強調しているわけではない。
極めてモダンな空間にも関わらず、その空間性には“和”を感じる。もっと言えば、その辺りの日本建築よりも日本らしいさえ思った。何故なんだろう?

その疑問は、建築をスキになった大きなきっかけの1つになった。

この日を境に、まず谷口吉生の建築を巡るようになった。豊田市美術館、猪熊弦一郎美術館、東山魁夷せとうち美術館…そのどの空間にも“和”を感じ、ますます建築にハマっていった。

日本人としてのアイデンティティ


きっと私は、法隆寺宝物館という空間に「日本人のアイデンティティ」を見つけたのだと思う。それまで寺社仏閣巡りへと突き動かしていたのは、海外生活を通して自らの、日本人としてのアイデンティティを知りたくなったからなのだ、と後々気づいた。


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#建築をスキになった話 #法隆寺宝物館 #谷口吉生 #寺巡り #建築 #ライター #日本 #デザイン

様々な方々の#建築をスキになった話 が十人十色で面白い。企画して下さったロンロさんにありがとうございます。

実は、建築をスキになったきっかけはもう一つ。それもまた折を見て書こうと思います。




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