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現代詩2

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過去に発表した現代詩の作品集です。
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記事一覧

【詩】大空からの涙

大空からの涙 揺りかごに揺られるような心地良さに いつの間にかうたた寝をしていた 当然訪れ…

【詩】ひな祭り

ひな祭り 「今日は楽しいひな祭り」と歌うメロディーが どうしてこんなに切ないのだろう 3…

【詩】寄り道

寄り道 緊迫したミーティングを終え オフィスに戻ろうと乗ったタクシーは 月末と秋雨が重なり…

【詩】月の鏡

月の鏡 群青色の夜空 神さまのおとぎ話みたいに 満月が静かに微笑む 散りばめられた星屑の下…

【詩】絆

絆 青々とした強気な自我に反し 刹那の戯れへの未練を残しながら 抗えない力に導かれるように…

【詩】公約

公約 リビングで うとうと  久しぶりに心地良い昼寝をしていた 子供達と一緒にさっきプール…

【詩】非常階段

非常階段 以前住んでいた我が家のリビングから 水色のオフィスビルが見えた 隣の大きな月極駐車場を挟んだ路地の向こう 12階建てのビルの端に付いていた非常階段は 「く」の字を表裏でいくつも積み重ねて 壁に貼り付けただけのような 危なっかしさが漂っていた その非常階段のてっぺんで 平日の朝8時過ぎに煙草を1本吸う男がいた 彼は天気を完全に無視して どんな日も無防備なまま 南の方角を見ながら鉄格子に寄りかかり ゆっくりと煙をくゆらした そして1本吸い終わると重そうなドアを開け

【詩】読む

読む 早朝の私鉄駅 小銭入れのジッパーを無意識に開け閉めしながら 券売機の前で運賃表を見上…

【詩】薬指

薬指 三歳になったばかりの娘が 赤いクレヨンで絵を描いてくれた たどたどしい線がかろうじて…

【詩】休憩

休憩 休憩 彼女はとうとう離婚してしまった 自分の痛みを小さな缶に無理矢理詰め込み ハンマ…

【詩】独り占め

独り占め 花冷えの午後 白いトレンチコートの下に 薄紅色のセーターを着込んでいた 桜並木の…

【詩】ひがん

ひがん 春分の日が終わろうとしている 境界のない空が 穢土を知らない子供のような 屈託なく…

【詩】怖い一日

怖い一日 午後にはまた あの人に会わなければならない 怖い 先日投げ付けられた ネガティブな…

【詩】完璧な人

完璧な人 ~ドクター3 春の花達が翻弄される気紛れな天候に包まれ 今朝も虹色に輝く花粉光環が青空に映えていた 患者で溢れる総合病院 私は顎周辺の皮膚がかぶれてしまった そのうち治るだろうと高を括っていたら 我慢できない痛痒さという枷で かぶれが悲鳴を上げた 私の担当医は若手のエリート男性 彼は立ち居振る舞いだけでなく 顔にも落ち度がない 新品のマネキンみたいにきれいな肌 会計の順番を待っている時 彼が助手達を引き連れて 颯爽と目の前を歩いて行った 白衣の医師の後ろ姿