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ジェンダー言語についてもっと本気出して考えてみたい。

 


「彼」でも「彼女」でもないあの人の死


7月12日、タレントのryuchellさんが亡くなった。

生前「彼」は...と続ける前に、ちょっと手を止めて考えてみたい。

そもそも、たったいま「彼」と書いたけれど、この表現だけでも数分間は迷った。「彼」ではなく、「彼女」なのかもしれない。でも、出会ったときには「彼」だったはずだ。いや、私が勝手に「彼」だと思っていただけで、本当は最初から「彼女」だったのかもしれない。

乙武さんが語られていたように

私が勝手に「彼」だと思っている人は、
本当は「彼女」なのかもしれない。

私が勝手に「いい父」だと思っている人は、
本当は「いい親」であって、「父」と呼ばれたくはないのかもしれない。

じゃあなんて呼べばいいのさ!と
ブチ切れたくもなるお気持ちもわかります。

日本語にはそれに当たる言葉がないからです。

そろそろ日本語にも”They”が必要なんじゃないか


2019年、アメリカで「今年の1単語」Word of the Yearに選ばれた

”Singular They”

彼/Heでも彼女/Herでもない、性別を規定しない3人称単数として使われる”They”のことを指します。


LinkedInはすでにプロフィールのところに
(She/Her)(He/Him)(They/Them)を選択できる機能を有していたり、英語圏ではすでに一般化している印象を受けます。

2023時点、日本語で人を示す三人称単数は
「彼」と「彼女」の二語しか存在しません。

つまり実質上相手の性別をラベリングしなくては
目の前にいない誰かに言及できない性質を抱えているということ。

さらに「父親」「叔父」「長女」など正式な続柄を現す呼称も、必ずどちらかのジェンダーに基づいているのも日本語の特徴だったりして。

理由の一つは戸籍制度にあります

※日本語の特有のジェンダー言語の問題については過去エントリで詳しく説明しておりますので興味ある方はぜひご一読を


「彼」でも「彼女」でもない、日本語の”They”  あなたならどう訳す?


思いませんか。

いや、これ、シンプルに不便じゃん。

「彼」「彼女」と口にするときに人々の頭の中にあるのは

”聞き手ではない誰かについて述べたい気持ち”であって
聞き手ではない誰かの性別をラベリングしたい気持ち”ではないはず。

ましてや、それが誰かの心の中に、小さなダメージを蓄積させてしまう可能性があるなら、なおさらです。

わかりやすい誹謗中傷ではないぶん
ジェンダー言語というのは非常にやっかいな問題です。

例え言われた当人が違和感を覚えていたとしても
相手に悪気が1mmもないことを理解しているからこそ、何も言えず笑顔で受け流してしまう人も多いといいます。

あなたが今日、なにげなく投げた言葉が
誰かを傷つけていたとしたら。

そのとき 「自分にとっては嬉しい言葉を投げたのに」 は、言い訳にならないはず。

「ryuchellさんは、言葉の二重性を深く意識する人。つまり、目の前の相手が自分の言葉をどう思うのかと同時に、その場にはいなくても、対談の後に記録に残った言葉を読んだり、聞いたりする人のことも考えて、コミュニケーションをする人なんだと。そう感じました...(中略) そして、さまざまな人の声が聞こえる耳を持っていました。そういった姿勢そのものが、ryuchellさんが持つ”多様性”を表していたと思います」」

2023.07.15 AERA.dot 


”多様性”とはきっと、その場にいない人に思いを馳せる力のこと


「LGBTに当てはまらない名前さえない人たちも、今は人間が人間を愛する時代だなって僕は思う」

2022.09.02 AbemaTV『りゅうちぇる×ちゃんねる』

わたしの好きな言葉です。ryuchellさんのご冥福をお祈りします。


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