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【名画をプロップスタイリングしてみる Vol.10】ジャン・オノレ・フラゴナールの「ぶらんこ」

今日の1枚はジャン・オノレ・フラゴナールの「ぶらんこ」
ロンドンのウォレス・コレクションにあります。


フラゴナールは18世紀フランスのロココ芸術を代表する画家です。


ロココってどんなんかというと、皆さんもご存知マリー・アントワネットなど貴族達の華やかで楽し気な生活が思い浮かびますね。ロココ芸術は優美さや繊細さ、華美という特徴があります。


さて、こちらの「ぶらんこ」。穏やかな光が射し込む緑豊かな庭園で、ぶらんこに乗る女性が見られます。

なんだか甘美な雰囲気の漂う絵ですね。


女性は屈託のない笑顔でぶらんこの揺れに合わせて靴を空中に飛ばしています。その靴の先に見える天使の彫像が「しー」って口に指をあてていますね。この恋が秘密の恋だということを示唆しているのでしょうか。



そして左下の茂みに隠れて女性のスカートの中を指差して見上げている男性が、この絵を依頼したサンジュリアン男爵です。彼は悪名高いプレイボーイで有名な男爵で、「女性が乗っているブランコと、かわいい彼女の足元が見える場所に自分を描いてください♡」という注文で依頼したそうです。どんな依頼やねん。


ちなみにこの時代以前は恋愛を主題に描かれた絵は神様たちの恋愛(ギリシャ神話など)に限られていたので、実在する人物の恋愛が描かれるようになったのもロココの特徴です。


さて、右の木陰にぶらんこの紐を引いているもう1人男性がいるのがわかりますか?彼は女性の召し使いでしょうか?

否、そんな甘い設定なわけがない。彼は女性の夫なんです!!


そう、この絵は白昼堂々たる不倫の様子を表しています。出た出た、ゴシップかよ~!わたしゴシップな絵選びがちですね(薄々気づいてた)

ちなみにぶらんこは性的な意味を持つモチーフで、脱げやすい靴は「尻軽」を表しています。または道徳や宗教の教えからの解放を表しているとも言われています。

絵って何にでも意味あるんやな(笑)


しかしこの女性と男性、てんで悪びれる様子もなく暗さもなく、めちゃくちゃ生き生きとしてませんか?

17世紀~18世紀のフランスでは、貴族の女性達はとりあえず結婚(出産)さえしてしまったら役目を果たしたも同然、そこからが人生の本番とばかりに宮廷内でゲームのように自由に恋愛を楽しんだそう。この時代の宮廷恋愛を象徴する言葉として、「ギャラントリー」(優雅な趣味的恋愛)という言葉もあるぐらいです。

この絵に描かれた男女もきっとこの恋を、心から謳歌していたのでしょう。


ちなみにこの絵、ディズニーの「アナと雪の女王」にも出てくるし、「ラプンツェル」はこの絵に描かれている女性の奔放さや陽気さをイメージしていると言われています。


わたしはこの絵をロンドンで見た時、全然意味を知らなかったので、「筆致が細かくて光の描写やドレスが綺麗な絵ね~♡」ぐらいの感想だったのですが、真相を知った今、なんだか浮世離れした滑稽さに愛しさすら感じ始めたので、きっとまたこの絵を見れた時、違った感想が出てくるんだろうなぁと今から楽しみです。

アートは見るタイミングによって全然感じ方が変わるのもおもしろいところですよね。

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