石の上には3年もいなくていい

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#若者に向けたメッセージ」です。

フリーライターになって今年の5月で5年目に差し掛かる。これまで3社の企業で働いてきたが、なんとフリーライターとして働いてる年数が1番長くなった(フリーライター歴と、勤続年数を単純に比べていいかはわからないが)。不安定な仕事なのによく続けているなと我ながら感心する。ちなみに勤続年数の最長は3年半。新卒で入った会社だ。

大学卒業後、就職先が決まった時は「とにかく3年は働け」と親から散々言われた。「石の上にも三年」のことわざになぞらえて、そう諭された人も多いのではないだろうか。だが、3年という年数にどれだけの意味があるか明確に理解して話している人はほとんどいないのではないかと思う。

かくいう私も明確な理由があって新卒で入った会社を3年半続けたわけではない。3年以内で辞めたら、親にうるさく言われそうだなと思ったから続けてたのもある。しかも次に決まった会社は使用期間(約3ヶ月)であっさり辞めてるし。親には絶対に怒られるから、このことは言っていない(その次に決まった会社は3年4ヶ月続けて辞めたから許して…)。

2回の転職経験をもつ私だが、会社を辞める際の心持ちには気をつけていた。それは「この会社がもう嫌だ」という気持ちで辞めないこと、必ず前向きな気持ちで次の会社に転職することである。なんでそう考えたのかというと、“逃げ癖”がつくと人生辛くなるなと思ったからである。一度逃げることを許してしまったら、自分の中にある“諦めのハードル”が低くなって、仕事だけでなくいろいろなことに忍耐力がなくなってしまうんじゃないかと、そんな気がしたのだ。

人間は何かと言い訳ばかり考える生き物だから、やる理由よりやらない理由を探す方が容易い。逃げ癖は自分の将来の幅を狭めてしまうリスクになり得るものだ。若者に「とりあえず3年は働け」と諭す大人たちは、逃げ癖をつけるなという意味で言っているのもあるのではないかと思う。だから「この会社がもう嫌だ」はあくまで退職のきっかけで留めて、実際に次の会社を決める時は“自分のやりたいことをやるために一歩踏み出すんだ”と思うようにしてた。

まぁ、私が運動部出身の根性論女なのは大前提として聞いて欲しいのだけど、決して「逃げてはいけない」という意味ではない。この考えはすべての人に当てはまるわけじゃないし、ブラック企業からは早めに逃げてと声を大にして言いたい。

ちなみに私が新卒で入ったその会社はブラックではないにせよ、まあまあハードなグラフィックデザインの会社で、月の残業時間は100時間近くになってたし、徹夜だって何度も経験した。でも下手にやりがいなんかもってしまったから、脳がバグって3年半も働いちまったってわけ。楽しかったけど。

私はその会社で制作進行管理というスケジュールや品質管理に関する職種で働いていて、商業施設のフリーペーパーやポスター作りに携わっていた。でもやっぱり自ら何かを作り出すクリエイティブな職種への憧れを捨てきれなくて転職を決意し、前職の経験を活かして次の会社にはプロデューサーとして入った。だが、コピーライターの仕事にも携われると聞いて入ったものの、いざ働いてみたら面接時の条件と違う点がいろいろあることに気づいて、やりがい搾取される前に使用期間で辞めてしまったのだ(あの時は本当にすみませんでした)。

確かに制作進行管理としての経験を活かすなら、ディレクターやプロデューサーの仕事は次のステップとして想像しやすい。でもそれじゃ何も変わらないとようやく気づいて、ライターとして働ける場所を探した。職種を変えるのはかなりのハードルの高さだったけど、制作進行管理の経験を買ってもらってBtoBの専門誌を作る小さな出版会社に入ることができた。まぁラッキーだったんだと思う。

その会社を辞めた後は、そのままフリーライターの道に進んだ。30歳の時のことである。今度は3社目の実績をもって大手出版社に営業へ。計算してやってるわけじゃないけど、自分のこれまでの経験を活かしながらうまく人生を進められてきたなという自負はある。でもそれは自分の経験を無駄にしないという決意があったからだ。

決意とは、覚悟である。別に同じ会社に3年いる必要はないと思うけど、転職する時に覚悟はもっていて損ではない。自分の人生への覚悟を決めて転職すれば、安易な逃げ癖はつかないんじゃないかと思う。

若い時には気づかなかったけど、人生って短い。人生100年時代なんて言われるけど、精力的に働ける時間はそんなにないわけだ。じゃあやりたいことはやりたいうちに。私には大した職歴があるわけではないけど、いま楽しく働けているのは要所要所でちゃんと覚悟をもって決断してきたからなのかなと思わなくもない。いま一歩を踏み出したい人の力に少しでもなれば幸いである。

執筆:otaki
編集:真央

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