見出し画像

不登校だった娘がロシアでバレリーナになった話#3(子ども時代に決めたこと)

ここからはしばらく、バレエの話をしていきたいと思います。

中学生時代の不登校、そして「死にたい」「消えたい」が口癖だった長女にとって、少なくとも現実を忘れることができるものがバレエでした。

バレエは、おとぎ話のお姫様になったり、青年と恋をする村娘になったり、はたまたネズミになったり…現実の自分とは違う”何者か”になることができました。

それが、当時の長女のメンタルを少しでも救ったのかもしれません。


どこに行ってもお利口な子

小さいころ、長女はどこへ出しても恥ずかしくないようないわゆる
「お利口さんね」
と言われるような子でした。

小学校の個人面談でも必ずと言っていいほど
「何も問題ありません」
と言われていました。

1.子どもなりにバランスをとって生きる

子育てしている方ならお分かりかもしれませんが、子どもって四六時中
「良い子」
でいられる子はいませんよね(笑)
大人だってそうですが、みんな”外面”(そとづら)というものを持っています。
”外面”のいい子はどこかでバランスをとっているのですが、もちろん家の中なんですよね。

長女もしっかりバランスをとっていて、家の中ではホントにだらしなくて片付けが苦手、休みの日は一日中パジャマでも平気という感じでした。

2.中間子あるある

また、我が家の3人兄弟でいうと長女は中間子でしたので、そもそもの自分の立ち位置(空気)をよく読む平和主義という面もありました。
良くも悪くも
「自分さえ我慢すればいい」
という思考がいわゆる”三つ子の魂”だったのかもしれません。

3.読書好きでオタクで”陰キャ”

家族の中では、お茶目でユニークな面も沢山見せていた長女でしたが、とにかく読書が好きでしたので何もない日は一日中本を読んでいました。

ジャンルは、児童文学からラノベ、もちろんマンガ、戦争を伝える人の自叙伝、偉人の伝記となんでも読んでいました。

忘れもしないのが、小学校3年生の個人面談の時に担任の先生から
「休み時間にずっと本を読んでいるんです」
と話があり、先生はそれが心配だとおっしゃいました。

体の具合が悪いのか、友達関係で悩んでいないか…という心配だったのですが、それは大丈夫ですとお伝えしていました。

交友関係は小人数との付き合いを好んでいたので、仲間外れとかいじめにあうようなことはなかったと思います。
今の用語でいうところのいわゆる”陰キャ”でした(笑)
また、特定の漫画のキャラやアイドルが好きなオタク気質もありました。
「好きになったらとことん」
「沼る」
これも、長女が持っていた性質でしょうから、後々バレリーナへの道を純粋に突き進めたのもこの性質のおかげかもしれません。

差別に苦しんだ時期

さて、ここからはバレエの話になります。

長女がバレリーナになりたいと言ったのは、保育園の卒園式で卒園証書を授与された時にみんなの前で夢を発表するという儀式(?)があったのですが、その時に
「わたしはおおきくなったら、バレリーナになりたいです」
と発表していたのが、公式だと思います(笑)

1.初めての移籍は苦い思い出

地元のバレエ教室に4歳から通っていた長女でしたが、高学年になったころ
「このままここにいても、プロになれないと思う」
と言い出しました。

確かに地元の教室は開校して20年ほどの地元では有名な教室でしたが、過去にプロのバレリーナを輩出したことはなく先生も特別な経歴をお持ちではなかったと思います。

また、そもそも教室ではバレリーナを育てるような理念はなく、長女は成長するにつれ悶々としてきたのでしょう。

小学校5年生に上がってすぐ、正直に「移籍」の話を切り出しました。
その時の先生が手の平を返したように冷たい対応だったのは、バレエ教室の移籍あるあるで予習しておいた通りでした。

教え子の将来を応援し、快く送りだすなんていうのは妄想なんでよね。
これを読んでいらっしゃるバレエ教室の先生はいかがでしょうか?(笑)

2.もう子どもではいられない

移籍した先の教室は、海外留学も視野に入れたレッスンが売りの、当時としてはグローバルでアカデミックな教室でした。

月謝は地元教室の倍以上にはね上がりましたが、働いていれば何とかなると思ったのと、なにより長女の成長したいという欲求が満たされることが何より大事という思いの方が強かったです。

この教室でレッスンしていたらプロのバレリーナになれる、という保証なんてないのに完全なる親ばかでしたよね。

そして、同学年や少し上のお姉さんに混ざって格段に厳しくなったレッスンを受けながら、身体も心も成長していくことになるのです。

3.先生に気に入られる子とは

これまでの11年の人生で、長女は優等生タイプでなんでも器用にこなし先生や友達から頼りにされるというポジションにいることを自覚してきました。
それは、小学校生活においては長女の”特権”のような立ち位置でした。

バレエの世界はまた別物です。
教室を移籍してみると、そこそこの技術やスタイルの条件がいいことは教室内では皆当たり前という世界になり、そんな中で何が”差別化””特権化”される要因なのかを考えさせられる場面に直面しました。

それは、一にも二にも先生に気に入られること…
バレエがいくら踊れても、発表会でいい配役につかせてもらえるのは先生に気に入られている子であるという現実は、こんな日本の小さな教室だけのことではなく、海外のプロの世界でも普通にあるのです。

そもそも、「好き嫌い」で生徒を判断するなんておかしい!という気持ちにもなりますがそれが当たり前の世界という洗礼を、この教室では母娘共々受けることになりました。

4.コンクール上位だったのに…

一番、長女をがっかりさせたエピソードがあります。

「次の発表会の配役を決める際、直前のコンクールの順位で判断します」
ということを、教室が伝えてきました。

コンクールにはそれまで何度か出場していましたが、教室内で飛びぬけて上手なのはお姉さんたちでしたので、長女と年齢の近い子たちはほとんどがどんぐりの背比べ状態でした。

ですので、配役と言ってももちろん主役級を踊ることはないのですが、少しでも良い役がもらえると良いなぁ~くらいには母娘で思っていました。

結果的に、判断基準にするといわれたコンクールで同部門の中で入賞したのは長女だけでした。
順位に加えて”○〇賞”という副賞まで付いたので、ある程度の実力を認めていただいたような印象でした。

5.配役というモチベは大事

ところが、発表会の演目の中で長女がいくつか期待していた配役は、結局もらえませんでした。

長女は群舞の中の一つの役止まりでした。
しかし、そのコンクール同部門に出場したけれど順位のつかなかった子は、初めてのPDD(パドゥドゥ)に挑戦する役をもらったのです。

それがとてもショックだった、と後々長女から聞いたことがあります。

もちろん、配役するにあたっては技術面だけではなく向き不向きなどもあるのは当然ですので、コンクールの成績だけで望み通りの配役がもらえるわけではない…それも理屈はわかります。

ただ、この教室ではこうしたことが他にもありました。

「配役オーディションをする」
と言ってエントリーを募っておきつつ、ふたを開けたらオーディションなく配役が決まっていた…
こういうことが続くと、教室への不信感は募りますよね。

約2年半在籍したこの教室では、こうした純粋なバレエ少女のメンタルをへし折っていくスタイル(?)だったおかげでだいぶ鍛えられました。
そうは言っても当時は発表会の配役決めの度に病んでいた長女でした。

バレエが好き、それだけ

発表会での楽屋の様子
ここに写っている子はみんなバレエ辞めました


後日談ですが、そうやって先生から気に入られていい配役についていた子(3人いたのですが)がその後どうなったかというと、誰もプロにはなっていません。
というか、バレエを辞めてしまったようです。

当時、本人たちが本当にバレエが好きだったのかはわかりません。
私の目からは、親の方が熱心だったような記憶があります。

それもわかります。
我が子が発表会でいい役につかせてもらえたら嬉しいし本人のモチベもめちゃくちゃ高かっただろうと思いますからね。

長女とは正反対に…(笑)

1.親は口出ししない

当時の私に、こんなアドバイスがあったら良かったなと思うことを書いていきますね。

なんでも器用にやれていた長女が、例のバレエ教室の中では差別や不遇を感じていたのは親の私も同じ気持ちで
「どうしてうちの子だけ?」
と何度も先生たちを恨みました。

配役決めも、
「言ったことを守れないならそもそも言わないでほしかった」
と直接先生に訴えたこともあります。
先生たちのことを信じて頑張った長女のことを、認めてほしいと思った…

今思うと、浅はかで自分のことしか考えていない母親でした。

2.強さを身につける

バレエを習うというのは、子どもにとって自分との闘いです。

長女のように理不尽な場面に遭遇したり、そもそもバレエを習う環境が自分に合っていないのではないか、自分の思うとおりにいかない…という不満を感じた時にどう対処するのか?という話です。

ほかの教室に移籍しますか?
移籍してもバレエ界は似たり寄ったりですから、また同じことが繰り返される可能性もありますよね。

結局のところ、誰も助けてはくれません。

自分で乗り越える強さを身につけるのに必要な闘い、という意味です。

3.自分で出した答えが正しい

もちろん、嫌なことがあった時
「もうバレエを辞めたい」
と愚痴をこぼす時もあります。

ただその時に、一緒に本心を探ってみてほしいと思います。
「辞めたい」の裏側にどんな気持ちがあるのかを、親が一緒に探したり分析する余地は必要です。

大人だって、仕事で失敗したときに
「この仕事向いてないんじゃないか」
「辞めちゃおうかな」
と口にしませんか?

「辞めたい」の真相を突き止められたら、最終的な答えを出すのは子どもに任せればいいんです。

自分で悩み、もがき、苦しんで、それで出した答えは誰のせいでもなく自分が一番納得できる答えですよね。

長女の場合、
「やっぱりバレエが好き」
中学1年生で、ここから先もバレリーナへの道を突き進むことを決めてしまいました。

子どもにとって、自分で出した答えを自分が信頼する気持ちはとても大事です。
これから先の人生でも簡単にはくじけなくなります。
(そうは言ってもくじけまくりの長女でしたが!)

では、親にできることは何でしょう…
#4でお話していきたいと思います。

























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?