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徳川忠長レット

昔、長七郎江戸日記というテレビ時代劇がありました。
毎回、冒頭のナレーションで主人公の松平長七郎は駿河大納言の忘れ形見と解説していました。
駿河大納言とは誰かというと、その名の通り、駿河の大名であり、徳川家光の弟、徳川忠長。
ガレットを作りながら、ふとそんなことを妄想した記録。


材料

干しエビ 適量
卵    お好きなだけ。
ピザ用チーズ お好みで
ミニトマト  これもお好みで
蕎麦粉  あるだけ
水    蕎麦粉より若干少ない量
塩    適当
オリーブオイル 焼く数による
我ながら適当な分量だなあ。

二代将軍の徳川秀忠と正室のお江の間には二人の男子が誕生。竹千代と国松。後の家光と忠長。
長男の竹千代は虚弱で吃音もあったとか。弟の国松は容姿端麗で利発。
竹千代は幼少から親と引き離され、乳母の春日局によって育てられました。
これらの要因から、秀忠とお江は国松の方を可愛がっていたとか。
このままでは、徳川家を継ぐべき長男の竹千代の立場が危うくなると感じた春日局は家康に直訴。家康は一計を案じます。


蕎麦粉を若干少ない水で混ぜ合せ、塩を一つまみ。

孫達の元を訪れた家康、菓子をやろうと手招き。
先に立ち上がって取りに行こうとした国松を、家康は一喝。
「国松はそこに控えておれ」
そして家康は家光にだけ菓子を与えました。徳川家の家督を継ぐのが誰なのかを目に見える形で示したということ。
家光は実は家康と春日局の間に生まれた子供だという都市伝説?めいた話があります。
この話もその根拠とされることがあります。又、家康を神として祀る日光東照宮を整備したのは家光。家光自身も同じ地に葬られていますが、秀忠の墓所は別。


電子レンジ500wで30秒加熱。こうすることで発酵させるのと似た効果。

長幼の序ということが言われ、長男が家督相続するのが定着したのは江戸時代。家康の処置がそれをスタンダードにした?戦国時代では能力ある者が家を継ぐことがありました。そうでないと家が潰れますから。
家を継ぐのは一人だけで、他の子はその家臣となるという相続は室町時代からの習わし。武士だけではなく、百姓でも田畑を継ぐのは一人で、他は小作人になるか、他家に養子や婿にいくことが普通。
現代は分割相続になっています。子供達が家の財産を分け合う。一見、これは平等なようですが、代を経る毎に家の財産はどんどんと細分化されて小さくなっていく。鎌倉時代までの社会はそのようにして破綻していったのと同じ道を現代の日本人は歩んでいる?


オリーブを引いたフライパンに生地を広げて焼く。

家督を継いで、三代将軍になったのは家光でしたが、忠長も将軍の弟ということで駿河を中心に五十万石近い領地と権大納言という高い官職を得ました。
しかし、彼はそれに満足出来なかったのか、大坂城の城主になりたいと言い出しました。
将軍の弟である自分ならば、大坂という西の要を治められるという自負があったのか。或いは弟として。大坂城主として将軍の役に立ちたいと思った?
家光が上洛する時、忠長は大井川に船橋を掛けたことがあります。船をずらりと川のこちら岸から向こう岸にまで並べて通行の便を図ったのですが、却って家光の不興を買うことになってしまいました。
当時、防衛上の理由から大河に橋を架けるのは禁じられていました。恒久的な橋ではないにしても、船橋もそれに近いと見做されたということ。


生地がある程度焼けたら、具を乗せていく。

又、父親の秀忠をもてなそうと、自ら鉄砲で鴨を撃ち、それを汁物にして供したことがありました。ところが、その鴨は江戸時西の丸の堀にいた鴨。
西の丸は家光が住んでいる所。そこに向けて鉄砲を撃つとは謀反に等しいと怒らせることに。このように忠長の心配りは裏目に出るばかり。


卵も乗せる。

そうしたことの不満からか、よろしくない行状が噂されるように。
たとえば、駕籠に乗っている時、駕籠かきの尻を脇差で刺して、驚いて逃げ出した駕籠かきを斬り捨てた。
鷹狩に出た時、休息した寺で小姓が雪で濡れた薪に火を着けられなかったことに腹を立てて、手討にした等々。
こうした行状を咎められて、秀忠の死後、それを待っていたかのように家光により改易。高崎にお預けという処分。


蓋をして水を少量入れて蒸し焼き。

歴史というものは勝者が書く。故に物言えぬ敗者は殊更に貶められる。忠長にもそれが当てはまるのではないかと思うことがあります。非道な振る舞いと言われることもすべて本当なのか?もしかしたら針程の些細なことを棒のように誇張?


何だか目玉焼きっぽい。

高崎城主、安藤重長の元に預けられた忠長。高崎に居ること一年二か月。幕府から切腹の沙汰が下されました。
寛永十年(1633)高崎の大信寺において、徳川忠長は28歳の生涯を終えました。
高崎城と大信寺の動画をどうぞ。↓


徳川忠長レット

卵を乗せていないバージョンも作った。厚めに焼いた蕎麦粉生地がもっちり食感。
蕎麦にだけ含まれているポリフェノール、ルチン。抗酸化物質で活性酸素を除去する働き。各種ビタミンや良質なタンパク質も摂取。
微かな塩味しか付けていませんが、乾燥海老からいい味。仕上げに黒胡椒を少し振ると、更に味が引き立つ。
具の乾燥海老、ミニトマト等は家にあった物。お好きな物をお使い下さい。

海老のように腰が曲がるまで長生きは出来なかった忠長卿、赤心と言うべき真心もあったかもしれないということから、赤いミニトマト。
大信寺にある墓所、哀れを覚える風情でありました。詳細は↑の動画を御覧下さい。
覇気ある忠長卿、もう少し早く戦国の世に生まれていれば、思うように活躍出来たかもしれないと妄想しつつ、徳川忠長レットをご馳走様でした。

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