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【漫画書評】『夜、海へ還るバス 』森下裕美

サラサラ飲める水だな~、と思って飲んでいたら、血だった…。
これはなんか、そういう物語。

不穏な夢を見てしまう女性がいる。
結婚直前に、自分は“レズ”かもしれないという不安に悩む。

そして、婚約者に、結婚は“レズ”を試してからと約束させ、
試行錯誤する。

ひょんなことから同じマンションに住む女と出会い、
メチャクチャ嫌いなタイプなはずなのに
その女とずるずると、関係が深まっていく。

やがて……。

この嫌いなタイプの女とのやりとりが絶品!
どうやったらこんなものが描けるのか。

ほんと。
サラサラ飲める水だな。
と思って飲んでいたら、
血だった…。
そういう物語。

得たいのしれない、さまよい続ける、
尻のもっていきようのない、
ちゅうぶらりんな気持ちが
そのまま生きて、ここにある。

バスはいつまでも、
自分に向かって動き続けてる。

生き物みたいな、生ものみたいな、
胎動している漫画。

こういう毛色の、
静かにぐわっとくる漫画とか
芝居とか大好き。

この漫画は、どこにも落ち着いてない。
生き続けてる。
有機物だ。

なんてものを本に閉じ込めてあるんだ。
これがアシベくんの作家なのか。

装幀もいい。
キャラも気持ち悪いくらい
生っぽく血が通ってる。

すごいなあ。
脱帽しかできん。

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水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。