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『きしみ卿のタンタカタン ~きしむ街~ 短歌10首』

あつらえたビルのまにまに夏が降る すべてのコインロッカーに遺書

駅のないホームで猫撫で声を出し 世界の終りせがむ腐乱死体たち

ほんたうの山手線は螺旋です 上っていくのも降りていくのも

うち捨てた錆びた電車の中いっぱい埋め尽くす蝶 鱗みたい青く

人の降る音だけがする公園で透明だけどほんたうに痛い

図書館で本の尻尾とふたりきり 沈む夕陽とどんぐり数え

紅信号のない河渡って花手紙 夜のポストに抱かれて散って

ぎゆ、ぎゆ、と電信柱が鳴く夏の底を這って帰る夜の魚

手品師が指を鳴らせば街の端から折り畳まれて月までパタリと

月割って半分食べたら風の街 双眼鏡じゃ探せない今は

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。