日経新聞×noteお題企画×小説 2
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前回の小説の続編です。
【見えてくる事】
―第2話―
姉が紹介してくれたアサカさんはカウンセリングのみで片付ける気持ちを高めるらしい。
珍しくブログを見てみたけど、
プロフィール欄にある資格の取得数がすごくてちょっぴり引いた。
まぁでも姉の紹介だし話を聞いてもらう事にした。
カウンセリング場所は姉の家の近くだったのだが、
高級ホテルのラウンジのように広く見渡してみるとフィットネスジムや本がずらりと並ぶ図書館のようなスペースや飲食店もあるようだ。ビリヤード台もある。
はじめて見る場所に圧倒されているとアサカさんが現れた。
いかにも仕事が出来そうな雰囲気のスタイルの良い美女だ。かなりテンションが上がった。
おっと、今日はお話を聞いてもらう立場だった。
頭を切り替えてシャキっとしよう。
『はじめまして、山川と言います。』
「はじめまして。アサカと申します。
こちらはシニア専用分譲マンションです。
祖母がこちらに入居していて基本的に1階は入居者のスペースですが、私も自由に使えるんですよ。
どうぞおかけください」
『あ、はい』
俺の疑問は一気に解決したと同時に俺のレベルの低い相談を聞いてもらう事に罪悪感を覚えた。
アサカさんは目の前には座らなかったのだが、きっとこれも意味があるんだろうなとか考えていると
「こちらが本日のカリキュラムになります。」
そういって数枚の紙を渡すと同時に彼女は急にしゃべり始めた。
「私はあらゆる学びを深めてきました。
そのメソッドを組み合わせてー」
彼女は話し続けているが途中から耳に入らなくなった。
きっと資格マニアみたいになって色々とこじらせたんだろうな。
まあ俺は話を聞くのは嫌いじゃないし、耳を傾けた。
「―部屋の状態が悪くなると邪気菌(じゃききん)が増殖しやすくなります。」
『邪気菌?なんすかそれ。』
「生活に悪影響を及ぼす"邪気と菌"を合わせた考え方です。
こちらに記載してある欄を見て山川さんの部屋と心身の状態を照らし合わせてみてください。」
はぁ、なになに?
リストにはこう記されていた。
邪気菌が溜まりやすい生活環境や心身状態
①暗いもの
暗い照明、暗い気持ち、くすんだ顔色
②汚いもの
身のまわりの整理が出来ていない、便秘
③くさいもの
不衛生な生活による悪臭、体臭
④冷たいもの
低体温、代謝不良、冷え症など
⑤じめじめしたもの
湿気、むくみ、性格
俺が当てはまるのは③のくさいもの以外だと思いたい。
だが限りなく俺はジャキ菌マンに近い存在だという事にショックを受けた。
『ほぼ全部当てはまってるんですけど・・・
もしかして俺、におってます?』
アサカさんの表情は変わらない。
俺がにおってるかどうかはスルーされたようだ。
まぁそんな事ないですよ、と言ったところで本当かどうか疑ってしまうし、におってますと言えば傷つける可能性があるからスルーが得策だよな、初対面だし。
という事で今の質問は俺の中でもスルーする事にして質問を変更した。
『このリストと片付けと一体何が関係あるんですか?』
「山川さんは、裕福な方と貧しい方の家の中はどのようなイメージをお持ちですか?」
『そりゃ~セレブと呼ばれる人たちの家は高級で美術品とかが壁に飾られてて優雅な感じですよね。家の中は常にピカピカなイメージですね。
お金がない人の家は色んな意味でごちゃごちゃして荒れてて汚れてるイメージですね・・・あ。』
アサカさんは俺の気付きにすかさず反応した。
「実は映画やドラマなどで貧困な家を表現する際には"物"をとにかく増やして雑多に置き、
逆に裕福な家を表現する際は物を減らしすっきりと片付いた空間の対比を用いています。
もうお気付きですね。
邪気菌を減らす為には、【片付け】が重要なんです。」
俺はすっかりアサカさんの話に夢中になっていた―。
≪続く≫
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