日経新聞×noteお題企画×小説

初めての投稿です。

日経新聞×noteお題企画

#お金について考える

の作品募集のタイトルを見て小説ブログを始めました。

行動を起こすきっかけになるような小説を独自の理論を含めて綴ります。

【見えてくる事】

―第1話―

『今月もやっぱりピンチだなぁ~』


何故か毎月月末になるにつれ

お金が底をつく俺(山川のぼる)は

つい最近28歳になった。

もちろん貯蓄なんてあるわけない。


仕事では

先輩が「お前なら出来る」とか言って都合良く仕事を押し付けくるし、
後輩は仕事の事じゃなくプライベートな恋愛相談ばかりで完全に俺を下に見てるし
同期は飲み会を断ってばかりの俺の文句を言っているに違いない。



転職は何度も考えたが毎月の支払いがあるし、
すぐに仕事が決まるかも分からないからと
楽しくもない仕事を続けている。

ここ数年面倒な事ばかりに
頭の中を占領されて頭が痛い。



部屋に帰った所で悶々とするだけだし、


月末は近所のベンチが2つ置いてあるだけの
広場で日が暮れるまで一人過ごしている。


『金持ちになりてーなー

そうすりゃこんな生活から抜け出せるのに。

支払いの為に生きるなんて、

一生このままじゃ困るんだけどな』


なんて事を地面を歩く小さなアリを
みながらつぶやいていると、


珍しく隣に誰か座った。

見た目は70は越えてるじいさんだろうけど、

猫背の俺よりもよっぽど背筋がシャキッとしている


ベンチは2つあるんだから
そっち座れよと思っていたら


「お金の事ばかりじゃなーお前さんの頭の中は」


急に話しかけられて驚いた、というか
そんなに困った感じに見えてんの?俺・・・



『な・・・なんでそんな事が分かるんだじいさん』



「んなもん顔見りゃすぐ分かるわい。
僕は常に何かに追われているんですぅ~とな」



間髪入れずに俺の頭の中の実況を続けるじいさん。



「いつも同じ心配が頭の中を巡って不安がいっぱい。

周りの人間は信頼できんし
気持ちが休まる時がないし
でも支払いの為に仕事はやらなきゃならないし。
昔はモテてたのに彼女は出来ないし
こんな生活もう嫌っ!か?」



なんだか俺の頭の中が全部さらわれたみたいだ。
じいさんのニヤニヤしながら言う言葉がグサグサと突き刺さる。

まさにおっしゃるとおりですよ。



「ついでに言うとの、

猫背は自分に自信が持てていない、
腰痛は経済的な不安、
肩の痛みはあれもこれもやらなければという義務感を背負う事で起こる」



じいさんの言葉を聞いていると
俺の人生が哀れに思えてきた。


俺を苦しめている肩こりも腰痛も猫背すらも


体が悲鳴を上げる程

お金の問題は俺にのし掛かっているらしい。




『じいさん、そんなに色々分かるなら、
なんか運気的なもんををサクッと
上げる解決方法を教えてくれよ。』



「そうじゃの~。

じゃがお前さん中々続かんじゃろう?」


『おっしゃる通り!
ぜひ簡単なのでお願いします!』



いつの間にか俺はじいさんと師弟関係のようになっていた。



「そうじゃのう。
とりあえずお前さんは口角を使え。」



『なんで口角?』



「わかりやすく言えば

口角はもろもろの運のスイッチじゃと思え。

口角を上げればオンに

口角が下がればオフとな。



あと足腰が弱すぎる。
スクワットを1日20回は必ずしろ。


あと、ありがとうの回数を増やせ


金もかからんから良いじゃろう?


あと部屋も汚すぎるから片付けた方が良いんじゃが


まぁ、今日はここまでじゃ。」



そう言ってじいさんは去っていった。





なんか最後の方トレーナーみたいになってたな。




しかし、なんで部屋の状態まで分かったんだ・・・まぁじいさんはそれも顔を見れば分かるのだろう。




俺はじいさんから教わったやり方を

【ありがとう笑顔筋トレ】と名付けた。

自宅に戻りさっそくやってみる事にした。

見栄っ張りの俺は外装が洒落たグッドデザイン賞のデザイナーズマンションに住んでいる。家賃は高い割に部屋は狭いが外からの見ばえも通勤への利便性も良いのが利点で選んだ。

身の丈に合っていない事は分かっている。

でも男のプライド的なものが邪魔をして住み続けている。

そんな俺の部屋は、ごみ屋敷レベルに物があふれているわけではない、ハズ。

あまり動かなくても済むように身の周りに物を置くくらいのもんだ。

ひとまずスクワットが出来るスペースを確保する為クローゼット代わりになっている物干しポールを足元に転がってる漫画や雑誌、資料も一緒にブルドーザーのようにベランダ寄りに押し込んだ。

口角を上げるって、笑顔って事だよな?

鏡を見ながらニヤっとしてみた。

それはもう絶望的に不自然な顔だ

でもじいさんはスイッチだと言っていたし、
俺はニヤニヤして「ありがとう」と言いながらスクワットを試みた。

こんな俺でも昔はサッカーで足腰は鍛えてたんだ。
ま、足首の故障で諦めちまったけどな。

20回のスクワットはもちろん余裕だった。

一瞬体育会系のノリがよみがえりかけて100回くらいやってやるかと考えたが、今の俺じゃやる気が続かなくなる事は目に見えている。

じいさん、絶妙な回数設定に感謝するぜ。


しかし部屋の片付けはハードルが高いな~。

スクワットはどこでもやろうと思えば出来るけど

片付けとなると要るもの要らないもの分別→収集→捨てに行くとか作業工程が多すぎる。

ひとまず今俺の第一使命は足腰を鍛える!と、
いう事にした。

でも片付けはした方が良いのは分かりきっている。

あ、そうだ姉ちゃんに相談してみよう。



8歳上の姉は専業主婦で

「節約!スパルタ節子ママ」という

ちょっとした人気ブロガーらしい。
ちなみにそのブログは俺は見た事はない。


姉には10歳になる息子と旦那から
「ボス」と呼ばれている家庭内天下人だ。


昔からケチだった姉の口ぐせは
「それムダじゃない?」


で、俺は口うるさい姉と会うのをなるべく
避けるようにしていたが、

今回はある依頼をする為に

節約術によって建てた
「節約御殿」なる姉の家へ足を運んだのだ。



一週間前に会ったじいさんの話を姉にすると


「すごいじゃんその人。全部図星だったんだ~。で、その筋トレは続いてんの?」



『今の所はね。変化的な実感はないけど。
それよりさ、姉ちゃん俺の部屋片付けてくんない?』



「はぁ?嫌よ。あんた知らないの?
片付けって自分の意思でやらないと意味がないのよ。

誰かに片付けてもらった所でまた同じ状況になるだけだし。そんなの時間の無駄なだけ」

私がこの家を建てられたのも自分の意思で節約したからなんだから。」



片付けの依頼はすぐさま失敗に終わったが、確かに自分の意思じゃないとだよなぁ。





しかし旦那も息子もよくこの気の強い姉の節約術とやらに付き合ってられるよなぁ。



休みになると男二人は


「行って参ります、ボス!」


と言って図書館や公園など
無料開放されている場所で遊んでいるらしいけど・・・


まぁ家族関係は悪くないみたいだしそれはそれで良いんだろう。






いつの間にか姉はパソコンを開いて何か検索し始めていた。



「この子紹介してあげるわ。

最近副業で片付けメソッドを始めて
モニター募集してるから。
ちょっとクセ強め女子だけどご近所だから都合つけやすいし」



おぉ、これは新たな展開だな。


一週間の【ありがとう笑顔筋トレ】の効果が出てきたかな?

≪続く≫

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