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超音波診断装置を使った病態把握



最初に、、、

この記事は、私が超音波診断装置を業務の間で使用する際に、参考にしている論文などを病態別でまとめて、チラッと確認できるための
場所にしたいと思っています。

・腱板断裂の評価

超音波における腱板断裂の評価について説明します。

腱板断裂の分類

断裂の括りとしては完全断裂と、不全断裂に分けることができる。
腱板損傷は、あくまで断裂がないの状態のことを指す。

ARCRというのは関節鏡視下腱板修復術の略語です。
Debeyre patte変法というのは腱板断裂のサイズが大きい場合に、筋前進術と言って棘下筋と菱形筋の筋膜を割いて、棘下筋を引き出してきれた腱板の代わりにしちゃおうというなかなかすごい処置です。

腱板の超音波画像について一緒に見ていきましょう。

棘上筋を写す際には、まず付着部である大結節の形を理解することが大切です。大結節はSperior facet(上面=SF)、Midlle facet(中面=MF)、inferior facet(後面=IF)に分かれています。
近年の報告では、棘上筋は、SFとMFの両方にオーバーラップして付着していると言われています。

棘上筋自体を直接的に写したければ、SFを狙って画像の描出を心がけてもらえると先ほどのような画像が出てくると思います。

正常画像の詳しい説明
→腱板自体は腱組織であり、連続するコラーゲン線維の層構造です。

また三角筋と、棘上筋の間には、肩峰下滑液包(同部位に脂肪層=Peribursal fat padという脂肪組織の層)が存在しています。

実際の症例
部分断裂症例
こちらは棘上筋の部分断裂(滑液包面断裂)の症例のエコー画像です。

部分断裂の症例と判断(診断はできない)する場合には、以下の3つの所見は絶対にチェックしておきましょう。
①大結節の骨不整像:滑液包面断裂や小断裂で認めるケースが多く、腱板断裂陽性的中率70%と言われています。

②腱板実質のLow echo像:これは断裂した腱板内に水が流れ込むことで断裂部が黒く抜ける(Low echo)現象を指しています。

③Peribursal fat padの陥凹:腱板が欠損したところが凹むため、腱板の上層にあるPeribursal fat padが欠損部に落ち込む現象を指します。
この所見を認める場合には、『腱板断裂陽性率100%!!』とかなり頼り甲斐がある所見です。
以上①〜③を踏まえてもう一度画像を見てみましょう。



・肩後方組織のエコー解剖

・肩の後方組織

肩の後方にある組織にはどんなものがあるでしょうか?
まずは棘下筋が頭に浮かぶかと思います。

・棘下筋の解剖

棘下筋は、肩甲骨の棘下窩から大結節のmiddle facet(通称MF)に付着する腱板(インナーマッスル)の中の一つの筋肉です。
この棘下筋は横走線維と斜走線維に分かれると言われているのも
特徴のポイントと言われています。

・棘下筋横走線維と斜走線維の機能


このように、棘下筋といっても線維が分かれていること、分かれている線維によって機能が違うことを理解した上で身体所見の評価をしていくことが重要かと考えています。
横走線維であれば1st外旋
斜走線維であれば2nd外旋位で筋力の評価をしてみましょう。

・ではでは超音波ではどう見えるか?


どうでしょうか?ご自身の持つ解剖とエコーでみた画像は一致しますでしょうか?

それでは、後方組織の解剖を当てはめていきましょう。



エコーは表層から深層に向かって組織を写し、画面に画像を作り出します。
ベースの解剖知識が大切なことは間違いありません。
触診や、マッサージなどでアプローチをする際には『深さ』なども意識して
アプローチをしていくことをお勧めします。


・最後に、、、アプローチの話

解剖がわかった上で、ではそれぞれの組織を効率よく施術するにはどうしたら良いのか、文献的考察を交えて説明します。


エコーでご公明な林典雄先生(理学療法士)の報告では
エラストグラフィー(組織の弾性率=硬さ)を測る機能を使って肩関節の肢位別での肩後方腱板の組織弾性の違いが発見されています。
実際にデータとして出ていると客観的かつ効率的に組織への介入ができるなと私は考えています。


・肩前方の組織(肩甲下筋腱と上腕二頭筋長頭腱)

今回は、肩の前方の支持性を高めてくれている前面組織について解説をしていこうと思います。

・上腕二頭筋長頭腱(Long head of humeral biceps)


関節の運動には必ず『転がり』と『滑り』運動と骨運動が伴います。
肩の屈曲や外転時には骨頭は下方ないし、後方などに滑ります。
これは、骨頭自体が肩峰に衝突するのを防ぐようになっているからです。
ここで動的(静的でもあるのかな)な構造の一つとして上腕二頭筋長頭腱が重要になってきます。
起始停止だけを見るのではなく、上腕二頭筋がちょうど骨頭の真上を通るの点に着目してください。
この走行から、骨頭が上に上がろうとした時に、上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかりそうですよね?
骨頭が持ち上がりすぎないように押し下げる『デプレッサー作用』を持っているのです。

・LHBを抑え込むのは!?

デプレッサー機能の話をしましたが、肝心なLHBが安定してなくては機能が発揮されません。
このLHBを構造的に安定させてくれているのは『横靭帯』です。

『横靭帯=Transverse hemeral ligament)』と言います。
この横靭帯は、肩甲下筋腱から延長してできている組織と言われています。
つまり、LHBの安定性には肩甲下筋腱(以下:SSC)との連続性が重要なポイントとなってくることが予想できます!

・肩甲下筋腱断裂とLHBの所見との関連性

ではここで肩甲下筋腱断裂がLHBに対してどの程度の関連性があるかを紐解いていきましょう。

これはある論文の内容をちょー簡単にまとめています。
いわゆる腱板断裂の診断を受けて手術(鏡視下腱板修復術=ARCR)を行なった患者を、SSC断裂を合併しているケースとそうでないケースに分けて
さらに術中のLHBの超音波の所見結果を考察した研究です。
結果は、、、
基本的に腱板断裂例の患側(術側)のLHBは、健側と比較して平均断面積が大きかったことに加えて、SSC断裂を合併している群では、有意に非合併例に比較して平均断面積が大きかったと報告されています。

この結果から、LHBの断面積の増大には肩甲下筋の断裂が関わってくると言えますね。
臨床でもLHB由来の痛みなどをよく経験するかと思いますが、腱の状態を把握し、その裏に他の病態が合併していないかを深く考えることも重要だと思います😊


・本題のエコーでのLHBの映し方

では、本題のエコーでのLHBの映し方を簡単に説明します。
①骨のランドマークを設定すること(小・大結節)

②小結節(LT)と大結節(GT)に対してプローブを平行に当てる。
 これはLHBを輪切りに映すようにプローブを置くので短軸像を描出。

③あとは、プローブを操作し、LHBをはっきり写すこと。

触診をしっかりできている方であれば大体すぐに映せます!!

・LHBの超音波所見

短軸像の時に正常に対する異常な所見として覚えておきたいものをまとめました。

この所見をまずはしっかりと確認できるように健常のLHBの描出をたくさん練習し、いざ疾患を有していそうな人に超音波検査を実施してもらえたらと思います。


・肩甲下筋の基本解剖


肩甲下筋の特徴は、筋束が上部と下部に分かれている点です。
基本的には下垂での内旋運動で全体が作用しますが、特に下部筋束は
外転角度が上がると『骨頭を下方に引きつける』ように働きます。
この骨頭を下げる動力源として肩甲下筋が非常に重要です。
(骨頭が肩峰に衝突しないようにしている)

また、上腕骨頭を前方から押さえ込む唯一の腱板のため、他の腱板筋群と比較して筋肉の断面積が大きいのも特徴です。(SSCは、16.30㎠)

(生理的筋断面積:棘上筋-5.72㎠、棘下筋・小円筋-13.74㎠)

またこちらの記事に記載していますが、肩甲下筋の腱は、横靱帯と連結しているので上腕二頭筋長頭腱を安定化させているのもポイントです。

・肩甲下筋の細かい解剖

少し細かい解剖ですが、肩甲下筋腱は上腕二頭筋長頭腱を上から押さえ込むだけではなく、下面からも支えています。

下からも上腕二頭筋腱を支えていることから、肩甲下筋腱の付着部(ここで言うところの肩甲下筋腱の上部の方)が断裂してしまうと上と下面からの支えがなくなるため上腕二頭筋腱が不安定(亜脱臼や、脱臼)をしてしまうのです。

・肩甲下筋のエコー解剖と描出

実際の肩甲下筋に関するエコーでの描出方法です。

描出の仕方は、上腕二頭筋長頭腱を映す方法と同じで、骨性のランドマークとして大結節と小結節に対して短軸方向にプローブを当てます。
そうすると上記のような画像が画面に出てきます。
ここから

肩甲上腕関節の外旋を行うことで肩甲下筋が外側方向に引き出されるので
筋の全長を映し出すことができます。

・重要な超音波所見

基本的には他の腱板を評価するときと同じで
腱の線維fiburillar patternの不整がないか、腱板表層にある脂肪層(peribursal fat pad)の陥凹がないかどうかをチェックします。

実際のところ、完全断裂の超音波検査の感度は86%と比較的高い数値が出ていますが、部分断裂に関しては、あまり良い報告がないみたいです。
私は鳥口下滑液包に水腫を認めた場合には腱板断裂が怪しいな
→fiburillar pattern不整や、LHBの亜脱臼・脱臼がないかは必ずチェックするようにしています。

こちらの記事には、どんどん項目を追記していきますので、皆さんスキして登録しておいてください😀


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