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【旅エッセイ65】東京攻略(2) 皇居外苑の白鳥

 昨日、初めて東京駅で降りた。

 都会や人ごみが苦手で、豊かな自然に恋い焦がれている私が東京を散策するなんて、自分でもちょっと驚きだった。

 昨日の記事でも書いたけれど、東京駅の駅舎を初めて見て写真に収めた。これも東京駅に慣れていないのが丸出しで、駅舎から遠い出口から出て十五分くらい周辺をぐるぐる歩いて、ようやく辿り着いた。外国人観光客の親子連れが、嬉しそうに東京駅を真正面から撮影していた。私も親子連れのあとに同じ景色を撮影した。

 何時間か居ただけだけど、構内の人の多さに眩暈がした。東京駅の周辺は車のエンジン音や工事の音がどこにいても聞こえて来る気がして疲れてしまった。でも、収穫もあった。

 私はずっと、東京の空は「狭い」と感じていた。これがいつ頃の印象なのかわからないけれど、子供の頃に青森の空を見上げて「空が高い」ことに感動したので、恐らく二十年以上前には東京の空が狭いのだと印象を持っていた。

 私の印象の中に残る空と違って、昨日見上げた東京の空は広々としていた。高すぎるビルに囲まれて圧迫感はあるし、田舎で見上げる解放感に溢れた空に比べればどうしても見劣りはする。だとしても東京の空は決して狭くなかった。

 理由のひとつは電柱と電線がないことだと思う。これは何十年も前から電線の地中化が進んでいて、まだまだ完璧ではないけれど東京駅の周辺には電信柱と電柱が見当たらない。おかげで空が広く見える。高層ビルの圧迫感はあるとしても、私がずっと印象を抱いていた空と違って東京の空がすべて狭く見えるわけではない。それがわかっただけでも収穫はあった。

 東京駅の写真を撮って、次に何をしようか考えて皇居に向かった。

 皇居外苑。なるほどニュースで見掛ける「皇居ランナー」の皆さんはこの辺りを走っているんだな。
 立て看板で「ランナーの皆さん歩行者もいるんだから注意して走ってね(要約)」と注意書きがされていた。
 平日の昼間だったけれど、運動着姿でランニングをしている人も見かけた。

 皇居外苑のお堀を眺める。人波からは離れても、都市の騒音は変わらない。
「やっぱり都会は苦手だ」という気持ちと「都会にも良いところがあるんだな」という気持ちの二律背反が生まれる。記憶にあるよりはずっと広い空と、高すぎて見上げていると首が痛くなるようなビルの群れ。良いところばかりがあるワケじゃないけれど、決して悪いところばかりでもない。やっぱり自分の目で見て判断するのって大事だな、と改めて思う。

 ふと視線を下ろすと、お堀の水上を白鳥が悠々と泳いでいた。私が惹かれる自然の美しさが、この都会にも隠れている。


また新しい山に登ります。