見出し画像

【旅エッセイ58】日本一?の華厳の滝

 小学校の時、修学旅行で華厳の滝を観た。

 ガタガタ揺れるエレベーターで滝の下まで降りて、いよいよ滝が見えた時に歓声を上げた。轟々と唸りをあげて落ちる大量の水と、飛沫を巻き上げる滝壺の大迫力に興奮したのを覚えている。肌を濡らす霧雨の感触ですら思い出せる気がする。

 大人になってから華厳の滝を観に行った。子供の頃に感じた興奮をもう一度味わいたくて。

 エレベーターは記憶にあるほどガタガタ言わない。20年ぶりくらいだから、まあ新しくなっているのかも知れない。そしていよいよあらわれた滝を観た時も、感度はなかった。正直に言って二度目の訪問で観た華厳の滝は「え、こんなに小さかったかなぁ」と感じた。

 何日も晴れの日が続いて水量が少なかったからか、それとも子供時代の感動を過大に覚えていたからか。どうにも滝が細い。水が少ない。記憶の中の十分の一くらい。いやそれは言い過ぎかも知れないけれど、とにかく迫力に欠けていた。

 記憶の中の華厳の滝は日本一の名に恥じない姿だったのに、二度目に観た滝はまるで全盛期を過ぎて成績を落としているスポーツ選手を見ているようで、悲しかった。

 きっと雨が続いたあとや、時期を選んでいけばもっと水量が多くてキレイな滝が観られるのだとは思う。人間だって体調が悪い時もあるし、自然の景色だって万全じゃない時もある。風邪をひいて咳をしながら思う。そんな日もあるさ、と。

 写真は二度目に観た時の華厳の滝。

 三度目に訪れる時は、思い出に負けない雄大な華厳の滝の姿を観たい。


また新しい山に登ります。