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高校生の私が、先生と付き合った話9

梅雨に入った6月下旬。ある日の帰りのHR。
「矢島さんはHRが終わったら職員室に来てくださいね。ハイ、解散」
林先生はそう言うと颯爽と教室をでていきました。

「なに、あずみ。なんかやらかしたの?」
「いや・・・心当たりはないけど」


なんだろなー、と考えつつ職員室の林先生のところを訪れました。
ドアを開けて、いつも1番にチェックする鈴木先生の姿はまだありません。

林先生に声をかけると、引き出しから分厚い書類の束を出し、わたしに手渡しました。

「はい、これ。卒業公演で使うホールの資料一式ね。使用申請も自分たちでしてみようか。あとは、中等部の先生がホールの管理してるから一度訪ねてみて」
「わかりました、ありがとうございます!」
「それで、卒業公演の進捗状況はどうかな?」
「それぞれ演奏する曲を選びはじめたところです」
「選曲は大切だからねえ、じっくりね」

そのあとも少し林先生と卒業公演についての話をしていると、鈴木先生が教室から戻ってきました。
軽く会釈するとニコっと笑顔を返してくれました。
やっぱりかっこいいな~と会えた喜びをかみしめていると、「ところで、矢島さん。今回の進路調査票ね、まだ出ていないけど・・・S音大で変わりない?」と急に進路の話をぶっこまれました。

「あ~・・・そのつもりではいます」
「了解。じゃあ金曜までに提出してね~」
そう言うと林先生は部活に行ってしまいました。


林先生と鈴木先生の机はすぐ近くだったので、ちょっとでもお話してから帰ろうと鈴木先生に声を掛けました。

「鈴木先生、今日もすぐ部活行っちゃうんですか?」
「一服(コーヒー)したらね。三者面談も始まるし、今週きっついなぁ」
鈴木先生は卓上カレンダーを遠い目で見て、ため息をつきました。
まだ慣れない担任業務に加え、ゴリゴリ体育会系の部活の顧問をするとなるとそりゃ大変なはずです。

なにか明るい気持ちになれる話題はないかな・・・と頭の中で検索しました。
そうだ、もうすぐ(?)夏休みじゃん!
(思考が幼すぎた。笑)

「あと1ヵ月で夏休みですね!鈴木先生はどこか行ったりするんですか?」
「遠出だとA県とB県にそれぞれ3日くらい行くよ」
「えっ?!」

それは・・・旅行ってことでしょうか、先生?!
ちなみにどなたとでしょうか?!

「ちなみにそれはどういうアレで・・・?」
頼む、墓参りとかであってくれ・・・!!!!!









「??いや、普通に部活の遠征だけど??」
「めっちゃいいですね!!(?)」

少し考えればわかることなのに、鈴木先生のこととなると焦り散らかしてしまいました。
ああ恥ずかしい・・・。
とりあえず彼女はいない説は濃厚になったので落ち着きを取り戻しました。


「観光でもできるならめっちゃいいんだけどね(笑)」
鈴木先生は低い声でフハハと笑っています。

「そうですよね、先生たちには夏休みってないですよね・・・じゃあ夏休みは部活ばっかりですか?」
「去年の感じでいえばそうなるかなー。基本的には朝から16時くらいまで部活だったかな?でもそのあとには秋にある国体に向けて練習があったりするから、結局1日中いることになるなぁ」
「国体?うちの高校が出るんですか?」
「国体って県対抗戦だから県内の有力選手が集まってチーム作るんだよ。そのコーチとして参加することになってんのよ」
「すごーい!」
「そんなことないない(笑)」

鈴木先生は謙遜しますが、うちの高校のバレー部は強豪って聞いているし、そこで指導しているなんてすごいのにと思いました。
けれども、謙虚なところも鈴木先生の素敵なところの1つです。

「それじゃもう体育館行くね」
え、もう?と思ってしまいましたが、しつこい生徒とは思われたくないので、職員室をあとにしました。
(すでにじゅうぶんしつこい生徒だったけど。笑)


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