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気負わずにただ見る~山下清展@SOMPO美術館 私感

今日は、新宿・SOMPO美術館の山下清展の内覧会に行ってきた。
山下清、と言えば、「放浪の画家」と呼ばれ、映画『裸の大将』などでも知られている(らしい)。
らしい、と言うのは、映画を見たことがないし、そもそも私自身、山下清という人をあまりよく知らないからだ。
花火の絵の人、貼り絵を作った人、と二言で終わってしまうレベルだった。
だが、それがかえって良かったのかもしれない。
予備知識や気負いなしに、ただ幼少期から始まる彼の作品と、彼の人生そのものと向き合うことができたのだから。

山下清という人間を、一言で言うなれば、「子どものように無垢な心を生涯持ち続けた人」
だろう。
放浪しながら絵を描いた、というイメージが定着しているが、実際は、旅先で見た風景を、家に帰ってから、作品に仕立てていた。
そもそも放浪の旅自体、絵を描くことが目的ではなかった。実際、彼の荷物には、絵の道具は含まれていなかった。

最初に旅を始めたのは、自分がいる養護学校での生活や周辺の風景に飽きたのがきっかけだった。
行き先も、暑ければ北に向かい、寒ければ南に向かう、とまさに心の赴くままに決めた。そして、人の通る道ではなく、鉄道の線路沿いを歩いた、という。必ず駅につけるから、という理由で。
一般常識よりも、彼なりのルールに従って生きていたと言えよう。

展示風景から

そして、たまにふらりと家や学校に戻っては、旅先で出会った風景を貼り絵にし、出来事をノートに記した。
びっしりとページを埋める字や、大きなものから、ピンセットで摘まんだ方が良いような小さなものまで、様々な大きさの紙片やこよりを用い、寸分違わずに再現された風景からは、彼の几帳面な性格やたぐいまれな記憶力が感じられる。

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