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映画「トールキン 旅のはじまり」覚え書き

「今日見たいっ!延ばしたくない」

 そんな思いに取りつかれて、映画館へ。

 目当ては『トールキン 旅のはじまり』。作品の存在を知ったのも今朝のことだ。

 タイトルからお察しの通り、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の作者トールキンの若いころを描いた伝記映画である。

 彼の生涯については、戦争に従軍したこと、言語学の教授だったことなど、断片的に知ってはいた。

 が、「こういうことがあった」と文章として読むのと、映像として多少の想像や小ネタ(戦場で彼のお供をする部下の名前がサムだったり)を交えつつ、大きなスクリーンの中で再現されて見るのとでは、入ってくる度合いが違う。包丁のように、ずっしりと重く深く刺さってくる。

 第一次世界大戦中の、「地獄」「死の国」という形容がぴったりの戦場。(なんとなく、生前、戦争の経験を話さなかった祖父のことを思い出した)

 そこを、親友の姿を求め、朦朧とした意識の中で彷徨う主人公ロナルド・トールキン。

 さしはさまれる回想。母親のこと。「宝」とも言うべき3人の友人との出会いと、彼らと結成したクラブ。大学生活。恋。

 交互に挟まれながら進んでいく物語は、さながらエーディスとのデート中にトールキンが語った、国の中心の大樹を思い起こさせる。

 そして、友人たちとの色鮮やかで輝かしい思い出と、死体が転がり、毒ガスが撒かれる戦場(現在)、双方が、物語を形作る根となっていく。

 まさに「中つ国」を舞台とする物語が生まれてくる、そのプロセスをたっぷりと見せられた。

 青春を共に過ごした四人。うち二人は戦争で死に、二人は生きる。

 生き残ったトールキンは、三人目の子供に、友人の名をつけたことが、エンディングで語られている。

 

 『ロード・オブ・ザ・リング』が好きな人だけではなく、『スタンド・バイ・ミー』が好きな人もこの映画は良いと思うのではないだろうか。

 それに当てはまらなくても、この『トールキン』は、是非におすすめしたい。

 最後に私が言いたいのは一言。

 とにかく、時間が出来た時に行ける上映館に足を運んでください。

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