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ちょっとエロい大人のバレエストーリー

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大人のための、ちょっと官能的なバレエショートストーリー。バレエ好きなあなた、バレエ経験者のあなた、覗いてみませんか……?
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「漁師とバレリーナ」

「漁師とバレリーナ」

緑色の点滅。
アタシは跳ね起きる。
あの人からだ。
時計を見ると2時14分。
あの人からのLINEはいつも真夜中に来る。

緑色の点滅。
99%あの人からだ。
スマホを開くのが怖い。
ううん、やめなさい、瑠璃。悪い想像をするのは。

最後に会ったのは4ヶ月前だったか。
港まで迎えに行って、高速のインターを降り最初のラブホに入った。

「このあいだ舞台袖で、すごく怖くなった」
「どうして?」
「まだ

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「プログラムの写真」

「プログラムの写真」

「佳代さん、写真は?」

お教室に着くなり麻子先生に言われて気づいた。

まずい、今日が締切りだった。うっかりしていたわ。

おばあちゃんの入院やら何やらあって、忘れてしまっていた。

3カ月後、通っているバレエ教室の発表会がある。そのプログラムに載せる写真のことだ。

バレエの発表会というものはお金がかかる。出演料、衣装代の他に、チケットを何十枚も買わなければならなかったり。

でも麻子先生は、

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「楽屋」

「楽屋」

深呼吸して残り香を味わう。いい匂い。

……がするような気がする。

憧れの人がつい10分前までここにいた。

バレエファンなら知らない人はいない人気ダンサー、春田篤史サマ。

活躍はバレエに留まらず広範囲に渡る。

男性化粧品のCM出演、モデル、人気アーティストのPV参加。

東京ガールズコレクションにモデルとして出演したのも話題になった。

小顔で手足が長い。身長は180㎝を超える。

塔子は

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「ユキ先生」

「ユキ先生」

最初のプリエから順番がまったく頭に入ってこない。ユキ先生が一生懸命説明しているというのに。寿美香は、ユキ先生の右のうなじから目をそらすことができない。

キスマーク。

他のレッスンメイトは気づいているのだろうか。気づいていないはずがない。なにしろ、ユキ先生の肌は雪みたいに白い。その細いうなじに、ハッキリと赤い痣がついているのだから。

そうか、もしかしたら皆は、あの赤いものが虫刺されくらいにしか

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「アシノユビ」

「アシノユビ」

コトが終わった後、慎二が左足の指をさすっている。

「どうしたの?」

「折れたかも」

「ええっ! なぜ?」

「美香子のせいだよ」

美香子はやっと悟った。

そうか、またやってしまったか。

「さすが足の指鍛えてんなあ……」

褒められているんだろうか。皮肉なのか。複雑な気分だ。

5歳から36歳の今までバレエをやり続けていれば、そりゃあ足裏の筋肉や指も鍛えられている。何百回、何千回とタンデ

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「動画を送ります」

「動画を送ります」

よっぽどのことがない限り、バレエのレッスンは休みたくない。

だが、以前は風邪気味でもレッスンに行くと治っていたのに、この頃は悪化するようになってきた。

これが年を取るということなのか、と50代になったばかりの晴美は思う。

寒気がする。やっぱり休んだ方が良さそうだ。

ただ、今日から踊りの振りに入るわよ、と茜先生が言っていたことが気がかりだ。
白鳥の湖第3幕「花嫁候補たちの踊り」が今度の発表

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