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「対象年齢」の意味


 子供が遊ぶおもちゃ。そのほとんどには「対象年齢」が書いてあります。それこそ100均のおもちゃでさえ。
「んー。でもこれって守らなきゃいけないの? たぶん遊べるっしょ」
 と大人の視点で思って2歳になる子供に「対象年齢3歳以上」のおもちゃを与えているのですが、それでもってようやく、わかりました。
 たしかに「対象年齢は、そのおもちゃを与える基準になる」のです。

 最初に対象年齢を気にしたのはプレゼントでいただいた、おままごとセット。マジックテープでくっついている木製の野菜やハンバーガーなどを、木製の包丁で切るセットです。これが対象年齢3歳以上。
 これは「さすがに切るのは難しいだろう……」と思いましたし、実際、2歳が近づいた現在やっと切れるようになってきました。
 1歳半ぐらいまでは包丁を横にしたままカンカン打ち付けて、しまいには野菜を両手でちぎっていました。その頃は「でも遊べてるからいいじゃん」と思ったわけですが、そこで気づきました。
「メーカーの考案した正しい方法で遊べる基準が、3歳以上なんだな」と。つまりは「包丁で切って遊べるのが、おおよそ3歳以上なんだな」ということです。
 2歳近くでも上手に切れるアイテムは限られますし、ダメなこともあれば、うまい具合で包丁が入って切ることもできます。入った角度によっては「んん~~!!」と声が出るぐらい、力を入れても切れないこともあります。なるほど、その仕組みを理解し、カットできる角度や力などを見定められるのがたぶん3歳なのだな、と。だって包丁、逆さまだし。そりゃ入らんよ。

 あまり対象年齢を気にしていなかった、いろんな仕掛けが装備されたボックス「やりたい放題」は対象年齢が8ヶ月以上ですが、1歳の誕生日にプレゼントして最初に遊べるのは数種類でした。ティッシュやボタンなど「押す」「引く」の動作はできるものの、コンセントやカギの「差す」「回す」ができないので、おやおや対象年齢は過ぎているのにな、と思いました。
 しかし成長するに従い、できることがどんどん増えていく。だから「8ヶ月でも遊べるけど、すべてできるようになるにはまだまだかかるので、対象年齢8ヶ月以上なのだな」と理解できました。1歳半にもなると、全動作ができるうえに遊びつくして興味の対象からはずれていきました。
 このへんでやっと「脳の発育と、できる動作の成長で対象年齢が決まるのかな」と思い始めました。

 まだ対象年齢を意識していなかった頃、100均で買ってきた対象年齢3歳以上の「魚つりセット」は、初日からポイ(すくう網)を握って壊されました。
 もちろん魚をすくえないし、でも手で拾って手桶に入れることはできて、楽しそう。遊んでいくうちにお手本を見せて、壊れかけのポイの上に「ここに乗せるんだよ」と乗せてあげると、自分でポイに乗せて振り落として手桶に入れるようになりました。
 その後「手首を返す」動作を会得。1歳4ヶ月ぐらいで対象年齢3歳以上のおもちゃをマスターしたのです。
 でも、セットに入っていた平たい桶には、あまり入れません。お風呂で普段使う手桶にばかり、入れています。
 そのあたりの認知も含め、このおもちゃは対象年齢3歳以上なのかとぼんやり思っています。あと、ポイを壊さないこと……(買い直しました、笑)。

 そういえば車のおもちゃがないなぁ、と思って購入した「トミカ」も対象年齢3歳以上。もうここまでくると、なぜその年齢設定なのかわかってきます。
 トミカはしっかりしているものの精工で小さいため、口に入れる可能性がある。チョンと押せば走るけど、押すよりも手に持ったまま床に這って転がして遊んでいる。そのへんのボーダーが3歳以上なのでしょう。
 一般に、1歳台であれば大きめでプラスチック製の自動車を与えると思います。それなら手に持って前後させて遊ぶのに適したサイズだから。
 しかし、100均にあるそれらも対象年齢が3歳以上だったりします。逆に謎が深まってしまいました。

 似たような積み木も「木製」「プラスチック製」「お米由来成分」という素材から、パーツの大きさに複雑さなどで対象年齢が違います。
 そのためメーカーが「口にしても大丈夫か」「この動作はできるか」「それ以外の動作で遊べて、長く使えるか」などの検討を経るのでしょう。同時に成長による可能な動作の範囲で、対象年齢を決めているのだと思われます。
 だから「やりたい放題」は一部の動作から始める基準で、対象年齢8ヶ月以上。「魚つりセット」は全部の動作が正常にできる基準で、対象年齢3歳以上。口に入れない前提の「トミカ」は3歳以上で、プラスチック製の車はおそらく素材的な意味で3歳。「木製の」おままごとセットは危険度が低いから3歳以上だけど「プラスチック製の」廉価品は同じ3歳以上だったり、5歳以上だったりとマチマチなこともあります。
 こうした基準は、メーカー独自の判断によるものだそうです。メーカー開発者の経験則でもって対象年齢を決定するので、開きが生じると聞きます。安全性に自信があるメーカーは対象年齢を低めに見積もるでしょうし、そうでなければ高く見るでしょう。だから積み木は基準がバラバラなんじゃないでしょうか。
 そのため、大人の目線で「これで遊んでほしいなぁ」というおもちゃは、対象年齢を気にするようになりました。キーボードの対象年齢は低めでも「押す動作」が中心なので「弾く」までの基準ではないのは一目瞭然。ドラムセットもしかりで「叩く」だけなら確かに3歳以上で問題ないわけですね。でも音声ガイドがあってドラムが1個のアンパンマンだと、一気に対象年齢が1歳ぐらいになったりもする。なるほど、と思うと同時に、いかにそれまで自分が「大人の視線と遊んでほしい願望」で見ていたかを自覚しました。
 メーカーが積み上げた経験則は、初めての子供を育てる親にも役立ち、また自分の経験則としても積まれていくのを感じます。

 しかし、ひとつだけ謎なものが残りました。
「ブルーナボンボン」という、ラバー製で空気で膨らませ、乗って遊ぶだけのシンプルなおもちゃ。簡単に言えば「座れるミッフィー」です。
 たしかに、小さいと何かにまたがることや降りることが難しいので、その動作ができないと難しいでしょう。しかしその動作はウチの子で見る限り1歳半ぐらいでおよそできているし、気がつけば乗って座りながらテレビを見ていることもありました。
 でも、これの対象年齢は「5歳以上」。
 なぜ……と思うのですが、きっと「足がつかないかもしれない」という可能性や、あるいは落下事故でもあってクレームがついたんでしょうかね。世知辛いけど、謎の対象年齢はきっと、原因はクレームです。

 最近こうやって「対象年齢を気にするものの、その理由を考えることで、自分の子供に与えても大丈夫かどうかを判断する」視点が備わってきたように感じます。
 やたらめったら買えないし、本人が気に入らなかったらどうしようもないんですが、それを把握できただけでも「親として成長した」ように感じます。いや感じさせてくれ。じゃないと男親なんて「いてもいなくても」と言われてしまうから……(泣笑)。
 あと、こういう視点を持てば「またパパはよけいなもの買ってきてー!」と怒られることも減りますよ。たぶん。

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