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【NetMission Academy2024】インターネットガバナンスを考える

2023年、ひょんなことがきっかけて、京都で開催された国際会議「インターネットガバナンスフォーラム(Internet Governance Forum | IGF)2023」のパネルの一つに登壇しました。

そこでの出会いから、NetMission Acadmy2024に参加した経験について書こうと思います。

インターネット、デジタル、私たちの社会

2年くらい前からユースピースビルダーとして関わっている、UNDPPA(国連政務・平和構築局)の北東アジア事業の一環で、テクノロジーやデジタルスペースと平和構築についてパネルメンバーとして話してきました。

インターネットやデジタルは専門ではないのですが、新卒の時に少し働いていたコンサルファームでは、ちょろっとドローンUTMのプロジェクトに関わっていたり、公共部門として政府レイヤーに関わるデジタル・テクノロジー(AIの活用やサイバーセキュリティなど)の話はよくなされていました。テクノロジーが私たちの社会・生活に与える影響については兼ねてから興味はあったのです。
加えて、大学院でナラティブ(物語)やセンスメイキング(意味論、という感じかな)や認知レイヤーでの、権力の不均衡や暴力について深掘りして行った時、ナラティブ(物語)やディスコース(言説)がもたらす影響に関心を持っていました。メディアや支配的言語が、知識としての情報を創造し、流布することで、権力を持っていくとすると、インターネットやソーシャルメディアの普及により、マスメディアから個人発信の時代へ移り変わったことが社会的に意味することは、ウェルビーイングや働き方、雇用やビジネス以上に、大きいのではないかと思っています。
デジタル空間の言説の関係、特に民主主義や政治、選挙に関わる文脈、また差別的で嫌悪的な感情の循環(これはしばしば実際の暴力にも結びつく)、としてデジタル空間での人権や、アイデンティティの形成や他者化は、個人的に非常に関心を持っている分野でした。

そんなバックグラウンドから、活動を通してデジタルに関わるパートを担当したことによって、会議への参加が決まったのです。

インターネットガバナンスってなに?

まず、インターネットガバナンスという言葉自体、あまり知られてないと思います。

私が昨年参加した会議は、IGF(Internet Governance Forum | インターネットガバナンスフォーラム)とあるように、この会議は国連が主宰している「インターネットガバナンス」に関する会議です。

私もこの会議と、そこからのご縁で参加したアカデミーがなければ全然知らなかった世界なのですが、これだけインターネットが普及しデジタル化した世界で、知っていて損がない世界だと思います。

UNESCOによる説明がこちら。

Internet governance is the complementary development and application by governments, the private sector, civil society and the technical community, in their respective roles, of shared principles, norms, rules, decision-making procedures, and activities that shape the evolution and use of the Internet.

(意訳)インターネットガバナンスとは、政府、民間セクター、市民社会、技術コミュニティがそれぞれの役割において、共有された原則、規範、規則、意思決定プロセス、そしてインターネットの発展と使用を形づくる活動を、補完的に開発し適用していくことです。

Internet Governance (UNESCO)

ざっくりいうと、インターネットに関わる政策全般の意思決定がインターネットガバナンスと考えて、大きくは間違っていないと思います。

持続的なインターネットの発展のために、国連のような「マルチラテラル」システムではなく、「マルチステークホルダー」システムを採用していることも大きな特徴です。
インターネットの歴史から遡っても、元々はアメリカのエンジニアの開発から始まっています。国家だけが政策の意思決定主体になるのではなく、技術者、民間セクター、市民社会(ユースも含む)が等しく発言権を持ち、意思決定することが、インターネットの世界では取り入れられています。

Multistakeholder mechanismについて

NetMission Academy2024にて、ユースアンバサダーになりました

IGFでは、世界各国からユース団体がさまざまな提言をしていました。インターネット上のジェンダーギャップやジェンダーに基づく暴力の予防対策について、デジタルデバイド、デジタルリテラシー、サイバーセキュリティ、ダークWeb、誤情報・偽情報の流布、環境負荷、"sprinternet"とも揶揄されるインターネット空間の分断(インターネットは本来民主的でユニバーサルな空間であるという理念のもと作られているが、検閲やフィルターバブルによって分断されていることからきている)などなど、さまざまなトピックに対して、世界各国の事例やそれぞれのステークホルダーの立場からの提言を聞き、ものすごくエキサイティングな場でした。

特にアフリカや南アジアのユースの存在感が際立っていて、ユース団体同士がパネルに共同登壇している場面も多くありました。

NetMission.AsiaとNetMission Academyについて

その中で、アジア太平洋地域の若者に対するアカデミーを主宰しているNetMission.Asiaの存在を知りました。

NetMission.Asiaは、アジア地域のユースのインターネットガバナンスの議論への参加を促し、影響を与えるための、ユースネットワークです。

NetMission.Asia is a network of passionate young Asians dedicated to engage and empower youth on Internet governance discourse with the aim to enhance youth mobility and create impact in Asia.

(意訳)NetMission.Asiaは、インターネットガバナンスの議論に若者を巻き込み、エンパワーすることを目指し、情熱を持ったアジアの若者たちのネットワークです。この目的は、若者の活動の幅を広げ、アジアにおける影響力を創出することにあります

What is NetMission Asia?

そんなNetMission.Asiaが主宰しているオンラインのインターネットガバナンスコースです。
アジア太平洋地域のユースで学生であれば、誰でも応募可能。インターネットやデジタルの世界をより深く知りたいと思い、バリバリの人文科学学生だったのにも関わらず、勢いで申し込みをしました。

グループ面接を経て、無事参加が決定し、2023年12月から2024年2月まで、オンラインでアジア太平洋各地から集まるユースと共に、インターネットガバナンスを学びました。

アジア太平洋はものすごく広いです。ニュージーランド、ミャンマー、フィリピン、バングラデシュ、ネパール、インド、マレーシア、カンボジア、スリランカ、パキスタン、ベトナム、パプアニューギニア、ブータン、香港などなど。

インターネットは地理的な距離関係なく活用できるツールです。かつ、先ほどSprinternetという言葉を紹介しましたが、例えば中国のようにGoogleのサービスが使えない地域だと、たとえ地理的に近くても、インターネット空間の分断は大きなものです。また地理的に離れていても、たとえば同じ言語やアプリを使っていたら、情報空間の距離はとても近く感じられます。
それでも、海底のファイバーケーブルがネット通信を支えていて、インターネットでも地政学的は大事です。

アジアというアイデンティティ、とくにアジア太平洋とまでなると、なかなかアイデンティティとしては認識しにくいのですが、アジア太平洋という枠組みの中で、こうしたネットワークと学びの機会を得られたことに、感謝しています。

この学びから、また次のアクションにつなげていきます。

New gTLDとDotAsiaについて

ちなみに、このアカデミー及びNetMission.Asiaを運営しているのがDot.Asia Organizaionです。

インターネットの基本的な仕組みとして、ドメインシステムがあります。私たちがWebサイトにアクセスするときのURLですね。その一番最後にある.jpや .com、.orgといった部分のこととトップレベルドメイン(Top Level Domain)と言います。

あまり知られていませんが、今から10年ほど前に、このTLDの新しい仕組みが取り入れられ、New gTLDと言います。
実はこのトップドメイン、さまざまな形があるのです。

New gTLDの一覧はこちら。
https://www.iana.org/domains/root/db

こうしたドメインを運営するのは非営利組織で、ドメインによって、その収入の使い道が異なります。たとえば.ecoであれば、さまざまな環境保護活動に利益が使われるとか。

.asiaの収入は、アジア太平洋圏での慈善活動に使われます。
インターネットアクセスの改善や、環境問題など多岐にわたる中で、若者の能力開発としてNetMission Academyの運営にも使われているそうです。

虎の保護活動にも使われています!
https://www.ajitora.asia/

TLDについては、私も全然よく知らなかったのですが、ユニークなドメインがたくさんあるので、何かサイトを立ち上げるときには、理念に共感するドメインを選ぶのも一つの手だと思います。

世界は、ユースの声を求めている

アカデミーの最後に、「インターネットガバナンスの世界では、まだまだアジア太平洋のプレゼンスが小さい」という言葉がありました。

アフリカ大陸に住んでいると、この大陸のユースの持つ、貪欲に未来を作るパッションとリーダーシップに圧倒されることがあります。
アジア太平洋の中でも、日本を含む東アジアでは、儒教の影響もあってか、年功序列の意識が強く(もちろんリスペクトを持つことは大事ですが)、意見を持ち、希望を諦めずにボイスアップするユースがもっと増えることは、未来のために大切なのではないかと思っています。

UPPAでの活動はYPS(Youth, Peace and Security)という、意思決定プロセスにユースの声を取り入れることを掲げたアジェンダのもと、ユースピースビルダーとして関わっています。
平和構築分野に限らず、今持続的な未来のための転換期を迎えている世界で、若者の声が求められています。

ユースだから参加できる、スキルアップかつネットワーク拡張の機会にもなります。政策の世界なんで遠いように感じるかもしれないけれど、私たちの、あなたの立場だからこそ見える現実や考察をインプットする機会は意外とたくさんあります。

国際会議の前には、大体Call for inputというような、関係者や当事者、専門家の意見をインプットする機会があります
特にインターネットガバナンスは、「誰でも」参加できるコミュニティがたくさんあります。

私自身も、ギリギリユースと言えるような立場ですが、世界を新たな視点から見て、新しい世界を作る一員として活動していきたいと思っています。
もし一緒に何かしたい!という人は、ぜひ何かできると嬉しいです😊

Thank you, NetMission.Asia 🫶

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