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宮﨑あおい主演、葛飾北斎の娘を描くドラマが無料配信中。クリエイティブに携わる全人類必見の一作。『眩(くらら)〜北斎の娘〜』

「テレビ、ラジオ、インターネットを通じて、世界に向けて多言語で情報を発信」しているNHKの国際サービス『NHKワールド JAPAN』にて、『眩(くらら)〜北斎の娘〜』が英字幕付きで無料配信されていました。

江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の三女である、お栄の半生を描いたドラマです。主演は宮﨑あおいさん。また、葛飾北斎は長塚京三さんが演じられています。

Part1は2023年7月24日、Part2は31日までの期間限定とのこと。英字幕が入っていますが、本編はすべて日本語です。

本作は、第72回文化庁芸術祭賞テレビ・ドラマ部門大賞を受賞し、また本ドラマの演出に携わった加藤拓氏が、当作品によって第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞も獲得しているそう。Blu-ray化もされています。

「なにこれ気になる」っていうより前に、宮﨑あおいさんが出演されてる時代劇!ということで条件反射的に開いて観ちゃったんですけど。本編合わせて73分もの長さながら、気づいたらあっという間でした。

とにかく、画家、イラストレーター、アニメーター、漫画家……いや、絵だけじゃない、映像でも音楽でも文章でも何でも、あらゆるクリエイティブに携わる全ての人が見るべき作品だと感じました。まだ見てない方は「まずは見て!」と言いたいのですが……。

ちょっとだけネタバレ語りますね。

(※以下、ネタバレ注意)

脱・清純派⁉︎酒も飲むしタバコも吸う宮﨑あおいにグッとくる!

そもそも葛飾北斎に娘がいて、父と共に画家として活動していたなんてことすら知らなかった方も多いのではないでしょうか。僕は知らなかった!

ただ、その娘が煙草も吸うわ酒も飲むわで……ちょっと、清純派の宮﨑あおいさんのイメージとかけ離れてるからびっくりしました。まぁ、実際のお栄さんはどんな方だったかはわからないので多少脚色も入ってるんでしょうが……。

しかし序盤シーン、同業者である画家の男性の元に嫁いだところ、その旦那の絵が下手だったのでバカにしたら離縁されたというのはどうやら史実だそうwその結果、父・北斎の元で絵の手伝いをすることになるんですけど。

こんな宮﨑あおいさんも、ちょっとイイなぁ。なんかグッときましたw

「己が満足できねぇもんでも、歯あ食いしばって世間の目に晒す」プロフェッショナル・北斎の言葉に震える

さて前半、オランダのシーボルトからの注文で「蘭画」を描くことに奮闘するシーンからもうすでに熱かったですね。「蘭画ってぇのは、見えたものをそのまま描き写してやがる」「色。ひとところでも、色が濃く、薄く……」と、浮世絵とはまったく違う描き方に頭を悩ませる弟子の弥助(三宅弘城)とお栄。

気分転換に、お栄は知人の池田善次郎(松田龍平)に連れられ、絵の題材にもなっている芸妓たちを見に行くことになりますが。そこで「人の顔も体も、光の当たり方で色が違う。一色じゃない」「光と影が色を作ってるんだ」ということに気づきます。

……が、出来上がった作品を見た北斎からは、「辛うじて、遠い近いはある。影も付いてる。けれど、まるでコクがねえ」と厳しく言われてしまいました。それに対して「描き直させてやもらえませんか」「こんな代物納められねぇよ」と訴える弥助とお栄を、厳しく叱って言う北斎のセリフが、また。

「ならおめぇら、いつ満足する⁉あと3日か?それとも30日か!3年かければきっとできると言い切れんのかい!三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか?こうして恥を忍ぶからだ!己が満足できねぇもんでも、歯あ食いしばって世間の目に晒す。悔いてる暇があったら、とっとと次の仕事にかかれ」

これぞ、プロフェッショナルですよね……震えました。

「三流の玄人」と「一流の素人」、未来があるのはどちらか

「三流の玄人」と「一流の素人」っていうのは、要は「腕はショボいけどちゃんとそれを生業にして食ってるやつ」と「腕は凄いけどそれを生業にできていないやつ」ということだと思うんですけど。

これ、まだ夢を追いかけてる途中の人にとっては「絶対後者の方がいいだろ。だって将来性あるもん」なんて思いがちかもしれないですけど、実は逆。ヘタでも、ちゃんとそれを生業にできてる方が偉いってことなんですよね。

ちょうど、タイムリーなことに、Twitterで「ぬこー様ちゃん」さんの漫画が流れてきましたけど……。

「俺が編集長ならOK出さないけどな~」「こんな中途半端な漫画 世に出すなんて恥ずかしくないの?」なんて言っちゃえるこのおじさんこそ、絶対に漫画家になれない人の典型。

プロになると絶対に「〆切」とか「納期」ってものが付いて回りますから。基本的に、それに間に合わせられない人はプロ失格。次の仕事なんて与えてもらえません。

もちろん、「じゃあショボくても納品さえすりゃいいのか」ということは、そんなことでもないんですけど。世に出された時点で、やはり評価は受けてしまいます。それこそ今ではネット社会なんですから、SNSでもバンバン悪口書かれるのが、本人の目にも入ってきてしまいます。

「恥を忍ぶ」ということはつまり、自分の不満足だけでなく、そういう批判にも耐えながら「次は絶対、もっとうまいものを作ってやる」と悔しさを抱いて前に進んでいくしかないということですよね。

「思う先から、描きてえもんが逃げていきやがる」絵に魅せられた父と娘の哀愁

ただそれを承知して絵を納品するものの、落ち込んで愚痴を言うお栄。「なんで私は絵なんてもんに魅入られちまったんだろうね。苦しいばっかりだ」なんて嘆いていると、父からはこう言われてしまいました。

「俺だって、おめぇ、満足なんざしてねぇよ。あー……もっとうまく、もっと、もっとって、いつも願うのに。思う先から、描きてえもんが逃げていきやがる」

天才と呼ばれた葛飾北斎自身も、同じように苦しんでいたとは。

ドラマでは終盤に北斎が死ぬシーンについても描かれていますが、実際、北斎はその際にこんな言葉を遺しているそうです。

翁死に臨み、大息し天我をして十年の命を長ふせしめバといひ、暫くして更に謂て曰く、天我をして五年の命を保たしめバ、真正の画工となるを得べしと、言吃りて死す。

葛飾北斎 江戸時代の長寿の老人の老後の過ごし方(その4)|団塊世代の我楽多(がらくた)帳

天があと10年、いやあと5年でも生かしてくれたら、本物の絵描きとなれるのに、と。遂には最後の最後まで満足できなかった北斎。しかし生涯現役を貫いた画家として、これほどまでに幸せなことはないと思うのです。

満足なんてしてしまえば、隠居するのみ。きっと北斎という人は、例え100歳まで生きても、120歳まで生きても、同じセリフを吐いて死んだのではないでしょうか。

……っていうか、ぜんぜんちょっとじゃねぇよ。だいぶアツくネタバレ語っちまったよww

まぁ、他にも衝撃的なシーンが多々ありますからね。この時点でまだドラマの配信画面開いていない方は、すぐリンク踏んで楽しんでいただければと思うんですけど。

ああ、せっかくなのでもう1回リンク貼っておきましょう(親切)。

本当、こういう作品が全世界へ向けて配信されているということは大事だと思いますね。まだまだ知らない日本の歴史や文化が多々あるな……。

ちなみに、原作小説もあるんですって。

うわぁ、気になるわ……ドラマじゃボカされてた、あんなところやこんなところまで描かれてるんでしょうか??積読が増えてしまうw(沼です

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