【泣】少年野球に熱中した父親の末路(8)
少年野球の試合には時間制限がある。
特にリーグ予選などではチーム間の実力に開きがあることが多く「7回まで」などと回だけで決めてしまうと永遠に試合が終わらない可能性があるからだ。
この時間制限で一度うちのチームは痛い目を見た。
ブロック予選の決勝戦で、7-6で負けていた。ピッチャーの調子が悪く、フォアボールや守備のミスでの失点が続いてイヤなムードだった。ただ打線はクリーンナップが機能してコツコツ得点を重ね、あと1点まで迫っていた。
規約では「90分または7回」と決まっている大会で、6回裏のうちの攻撃に入ったときにはすでに80分が過ぎようとしていた。
うちは7番からの攻撃で、7番、8番が三振とゴロであっさりツーアウトとなり、3人目の9番打者がバッターボックスに立ったとき、試合時間は残り3分だった。
スリーアウトになった瞬間、1分でも試合時間が残っていれば次の回に入れるという規則なので、ランナーなしのツーアウトで9番打者という状況を考えると、さっさとアウトになって次の回の攻撃に賭けた方が勝つ確率は高い。
ところが、その時に限って9番打者が粘ってファウルを繰りし、7球目を空振りしたときには試合時間93分で、試合終了になってしまったのだ。
その経験から、監督は「三球三振」というサインを作った。
「好きに打て」というサインを、腕でバツを3回作って打ち消すという分かりやすいサインだった。
そのサインの説明をする際に監督は「あくまで作戦としての三球三振だから」と付け加えた。その意味するところは「そのサインを出されても自信をなくさないように」ということのようだった。
側でその話を聞いていた父親たちも特に反応はなく、私もそのサインについて深く考えることはなかった。
そのときは、まさかイチタが最後の試合でそのサインを出されるとは夢にも思っていなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?