世界史をやっていると色々と厨二病的カッコイイ名前がある一方で、たまに訳の分からない名前も出てきたりします。
世界史上最も訳の分からないというか、最強というか、笑える名前として名高いのが、なんといっても”宇宙大将軍”でしょう。

いや決してロボットアニメの悪役の名前でも、戦隊シリーズの敵幹部の名前でもありません。
れっきとした歴史上の人物の名前なのです。

時は６世紀の中国。
南北朝時代と言われる動乱の時代を迎えていました。

北朝の一つ、東魏の武将候景は再三反乱と寝返りを繰り返した挙句、その領地と部下ごと南朝の梁に寝返ります。しかし怒り狂った東魏の討伐軍に敗れ遥々安徽省に逃走を余儀なくされていました。
こうして亡命先でも追い詰められた候景でしたが、そこで大人しくしていれば良いものを、臣下の一人王偉が「兵は拙速を尊ぶ」とかいう有名な文言で候景を唆し、今度は梁に反乱を起こします。
当時の梁は北朝を上回る大国だったものの、仏教を大事にしすぎて国論が分裂、そこに飢饉やら疫病やらが重なり、1000人あまりの候景軍にもかかわらず各地の不満分子が次々合流。
たちまち10万の大軍に膨れ上がった候景軍は、549年梁の首都建康（南京）を包囲、和平に応じるふりをして皇帝を捕らえ遂に建康を陥落させたのでした。

その後、傀儡の皇帝を建てた候景は梁の実権を掌握します。
得意絶頂の候景は相国（梁の総理大臣）兼　漢王（漢民族の王）兼　都督六合諸軍事（東西南北天地全ての軍司令官）とこれまた凄い称号を名乗ったのですが、更に調子に乗ってつけた称号がなんと　”宇宙大将軍”
人類の200万年の歴史でもここまで恥ずかしい・・・いや壮大な名前を名乗った人物は候景以外いないでしょう。

さて、この無敵艦隊、リチャード獅子心王、エドワード黒太子を上回る世界史上最強っぼいネーミングの座を欲しいままにした宇宙大将軍閣下ですが、やっぱり皇帝の称号も欲しくなったらしく、結局梁も滅ぼして、オーソドックスに”漢”という王朝を建てます。
せっかくなので宇宙皇帝とか宇宙大帝とか名乗ってくれたらよかったのですが、そうする間も無く反乱軍に敗北。
たった5ヶ月で敗死し、建康の門前に吊るされた挙句、その死体は飢えた庶民に食べられてしまったそうです。
こうして歴史に燦然と名を残す名前、”宇宙大将軍” も無敵艦隊並みの名前負け夜郎自大厨二病ネームで終わったのでした。

#名前の由来