綺麗なブルーになってください

ほんとうに、死んでほしいと思った。心の底から、きみに死んでほしいと思った。よく人は他人に殺意をおぼえるというけれど、これはそうではない。だってわたしがきみを殺したいわけではないから。ただ君は静かに、誰かの手によってではなく、苦しむことなく、死んでください。
 
 
永遠になることを美しいと思った。死んだら永遠だ。永遠に起きないし永遠に口を利かないし永遠に眠らない。そしてきみは永遠にわたしのものでいてくれる。そしてわたしも永遠にきみのものでいられる。なんて美しいんだろう。
 
 
きみはぼくのことをきらいだと言ったね。きっとそれはぼくも同じだよ。ぼくたちは恋人同士だけどそれと同時に敵同士でもあったから。あまりに違いすぎるぼくたちは、いつでも相手のいちばん嫌なところが目について、それをにくんでいた。正反対だからうまく嵌まるだなんて大嘘だよ。正反対だから余計デコボコになって、生きにくくなる。息をするために一緒にいるのに、一緒にいると息がしづらい。
 
 
きみはいつだって誰かに愛されていたね。反対に僕は血のつながっていない誰からも愛されなかった。君と出会って初めて、恋愛感情で愛されることを知った。人生で初めて、「愛している」という言葉を直接誰かに伝えた。でもさ、それって良いことだったのかな。君といるときの僕を僕は好きになれなかった。君の態度にいつも怯えていた。僕以外に愛している人がいる人の恋人になる辛さを知った。ありがとう。でもさ、僕だけを愛してくれる人なんているのかな。もしかしたら、複数の中の一人だとしても愛してくれているんだからしあわせなんだろうか。今この瞬間この世に君の恋人は僕しかいないはずなのに、どうしてきみは僕だけを見ていてくれないんだろう。僕と君以外の全てのものがなくなってしまえばいい。そうすれば嫌でも仲良く暮らすだろう。誰かと自分を比べて落ち込んだり、君の愛情を信じられなくなったりすることも無い。だって、もし君が僕を愛していないとしても、この世に人間は僕と君以外いないんだから。二人で仲良く死んでいこうね。
 
 
僕はたしかに愛されていた。でもそれと同時に軽んじられていた。舐められていた。何があっても僕は君のことが好きだって、君は言ったっけ。それは半分本当で、半分嘘だよ。僕は何があっても君のことを好きなフリをしているんだ。だから本当はもう僕は君のことが好きじゃないのかもしれない。それでも愛しているし憎んでいる。世界で一番愛おしくて、世界で一番大嫌いだ。でも後者の部分は覆い隠して僕は君に甘い顔をする。それでも君は僕を面倒だって、馬鹿だから嫌いだって言うんだね。一体僕は何のために感情を押し殺しているんだろう。答えは分かっている。だって、絶対が欲しいから。恋人じゃないと手に入れられないもの。例えばラブレター。例えばペアリング。住所や名前なんて聞いても意味がないこと、分かっていたけど分かりたくなかった。君がくれるって言ってくれた手紙も、もう半年以上届かないけれど、どうしているのかな。どうか海や空と一緒になって、綺麗なブルーになってください。

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