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【書物漫遊記】骨まで美味しくなって食べられ朽ちていきたい

富久浩二さん撮影

種村季弘さんの「書物漫遊記」を少しだけ真似て、任意に選んだ一冊の詩集を肴に、勝手気儘に記してみる(^^♪

「書物漫遊記」種村季弘(著)

杓子定規なものの見方とは全く違う。

枠にとらわれない。

融通無碍な考え方ができたら上出来なんだけど、ね^^;

因みに「書物漫遊記」に収録の22品目は、以下の通り。

「Kilroy was here」 ドウス昌代『東京ローズ』
「ベルリッツ・スクール」 イヨネスコ『授業』
「悪への郷愁」 高垣眸『豹(ジャガー)の眼』
「何でもないものの魅力」 武田泰淳『新・東海道五十三次』
「我が闘争」 吉田健一『流れ』
「開かれた箱」 坂根巌夫『遊びの博物誌』
「吸血鬼入門」 種村季弘『吸血鬼幻想』
「九段の怪談」 内田百間※(門のなかにある〈日〉は〈月〉に)『遊就館』
「見えない人間」 『定本山之口貘詩集』
「見世物今昔考」 江戸川乱歩『パノラマ島奇談』
「書かれなかった本」 四方八郎『ビルマ革命の内幕』
「接続法第二式」 『木村・相良独和辞典』
「大食のすすめ」 武田百合子『富士日記』
「泥棒繁盛記」 野尻抱影『大泥棒紳士館』
「逃げた浅草」 『正岡容集覧』
「二階の話」 古今亭志ん生『二階ぞめき』
「猫が食いたい」 石堂淑朗『好色的生活』
「不思議な節穴」 武井武雄『戦中気侭画帳』
「分家開き」 谷崎潤一郎『秘密』
「名前と肩書の研究」 『潮文化人手帖』
「留学の成果」 久生十蘭『新西遊記』
「畸人ぎらい」 色川武大『怪しい来客簿』

さて、最果タヒ展「詩になる直前の言葉たち」の中に有った言葉。

「ちゃんと、動物すべてにおいしそうだと言える人でありたい。」

【参考記事】

私が読んではじめて意味をもつ言葉たち

その言葉に呼応するかの様な平田俊子さんの「うさぎ」。(平田俊子【著】「ターミナル」所収)

「あなたはキツネになってわたしを食らえ。
(中略)
足の皮がめくれようと、切り株でつまずこうと、立ち上がりわたしを追ってこい。
わたしの肉のうまさを思え。
(中略)
わたしの肉はすこぶる美味だ。
(中略)
待っていたよ、この時をずっと、もう一千年も昔から。
あなたはわたしの首を思いきり咬むがいい。
そこがわたしの弱点だ。」

【参考図書】
平田俊子【著】「ターミナル」

平田俊子【著】「宝物」

大切なものは何度でも捨てなければならない
もっと大切なものが捨てようもなく
手の中にあるのだから

【参考記事】

詩人は、死人?〜平田俊子の世界〜

人はひとり

誰かと一緒にいてもひとり

だから誰かと一緒にいられる

闇は鏡

人の心を映し出す

気がつかないうちに

内側に溜まった澱のようなものと向き合わされる

作られた明るさ

分かりやすさから隔離して

在るものと戯れる

しばらくすると澱は

上澄みを残して

夜の闇に溶けていく

そうこうしているうちに

色んな音が

ここにあることを思い出して

なんだかほっとする

闇が闇として

そこにあることの豊かさに

ほっとしていることに気がつく

だからかな

時折り闇が恋しくなる

この環境を

この時間を

恋しいと思えるようになったのは

生きる力だったのだと

私は

何を

誰を

食べているのか

心魂

心身

心胆

多様な体験をしている

私と

(黒田明臣さん撮影)

他者と

(@crypingraphyさん撮影)

動物と

(井上浩輝さん撮影)

自然と

(岡田裕介さん撮影)

それらの関係を

もっと

はっきりと確認してみる

「私たちが食べる動物の命と心」バーバラ・J・キング(著)須部宗生(監修)

動物を擬人化するものでも。

食事のあり方を論争するものでもなく。

私たちが食べる動物の個性を見つめ、心と命について知ろうとする時、湧き上がってくる疑問の数々。

肉を食べるための適切かつ倫理的な姿勢とは何か?

どのように食料を選択して、倫理的、かつ生態学的に健全な生活を送るべきなのか?

私たちが食べる動物の世界に考えをめぐらし、これらの厄介な質問について考察していく。

その過程で、私たちの言葉は、色を持ち、音を奏でる。

日常にあふれる問題や言葉に向き合ってみると、そこには、繊細な色や音が宿っている。

そう感じるのは、音楽に関してのプルーストの態度が参考になったから。

プルースト【著】岩崎力【訳】「楽しみと日々」

【参考文献】

彼は、音楽に関する専門家ではなく、一愛好家にすぎなかった。

だからこそ、周囲に鳴り響く音に純粋に耳を傾け、内からの自然な欲求に従い、様々な音楽に身を委ねる中で、同時代を席巻した偏狭なナショナリズムにも、特定の音楽的信条にも左右されず、そうした束縛から離れたところで、音楽を、同時に愛することが可能であった。

私たちも、このプルーストの態度に倣って、題材となる日々の出来事に対して、まずは、自身の教養に基づく様々なリファレンスや、多彩な言葉(詩人であれば詩的表現)を駆使することで、既に、各自の古典的な世界となった古典の枠(過去)を超えて、より豊穣に、今を描き出すことは、可能ではないかと思う。

なんにしても。

私は、ちゃんと、動物、全てに美味しそうだと言える人でありたいし。

できれば、私も、骨まで美味しくなって、食べられ、朽ちていきたい。

【参考図書②】

<詩論>
鮎川信夫【著他】「現代詩との出合い―わが名詩選」

茨木のり子【著】「詩のこころを読む」

吉増剛造【著】「詩とは何か」

杉山平一 【著】「詩のこころ・美のかたち」

大岡信【著】「現代詩試論/詩人の設計図」

大岡信【著】「詩への架橋」

辻井喬【著】「詩が生まれるとき―私の現代詩入門」

渡邊十絲子【著】「今を生きるための現代詩」

嶋岡晨【著】「詩のたのしさ」

芳賀徹【著】「詩歌の森へ―日本詩へのいざない」

<詩集>
鮎川信夫(編他)【著】「戦後代表詩選―鮎川信夫から飯島耕一」

井戸川射子【著】「する、されるユートピア」

暁方ミセイ【著】「ウイルスちゃん」

金沢一志【監修】「カバンのなかの月夜―北園克衛の造型詩」

古川日出男【著】「天音」

後藤大祐【著】「誰もいない闘技場にベルが鳴る」

高橋睦郎【著】「動詞 I・II」

黒田三郎【著】「黒田三郎詩集」

天野忠【著】「天野忠詩集」

都築響一【著】「夜露死苦現代詩」

蜂飼耳【著】「食うものは食われる夜」

髙木敏次【著】「傍らの男」

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