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約束

第一章:記憶

みく「シュウー!おはよーまた遅刻?」

かずき「どうせまた夜までゲームしてたんだろー」

ぼく「ただのゲームじゃない、AIを育ててるだ」

かずき「はいはい、天才君が考える事は俺には理解できませーん」

みく「私は楽しみにしてるよーシュウが作るものはいつも魅力的だもん」

みくとかずきとぼくは、幼馴染で産まれた時からずっと一緒だった

だけど、今年が3人で過ごす最後の夏だ

みくは街でも有名な美人で、その美貌で東京の事務所からオファーが来ていたようだが、実家のみかん農家を手伝うからこの街に残る事を決めていた

かずきは小さい頃から運動神経抜群で、スポ薦で東京の大学への進学を決めていた

ぼくだけ進路が決まっていなかった

別に進学してやりたい事なんてなかったし、僕はみくと一緒にいれればそれでよかった


僕が12歳だった頃、両親が交通事故で亡くなった

それからぼくは一緒に暮らしている祖母に育てられた

ばあちゃんは俺を叱ったことがない

何をするにも自分で決めろといった

だけど、本当は一緒に寄り添ってほしかった




学級委員「この割り振りで各自夏休みの間に自分のタスク進めるように。特にシュウ!お前の話が決まらないと誰も動けないからな!」

秋の文化祭の出し物でみんなで劇をすることになった

何故か僕がその脚本を任された  

自信なんてなかったけど、みくが勧めてくれるから、やってみることにした

みくはあの日から意思を持たなくなったぼくの最後のボタンをいつも押してくれる

みくの両親も共働きでいつも家にいなかった

だから僕はいつもみくに僕の頭の中の空想の話をした

そんな馬鹿みたいな話をいつも笑って聞いてくれた

両親の葬式の時もみくは何も言わずただ隣にいてくれた

みくの存在が僕の生きる理由だった





第二章:決意

みくが亡くなってもうすぐ半年が経つ

僕のせいだった

僕は進学もせず、引きこもってずっとAIを作っていた

僕は両親の記憶が12歳で止まっている

だから作りたかった成長する僕に迷ってる僕に両親の言葉を代弁できるAIを

生きていた人の記憶の情報を取り込んで言葉にしてくれる

完成していた

だけど、聞く気になれなかった

だって、このAIは本当は必要なかった

僕にはいたんだ。僕の背中を押してくれる人が。


ドアを叩く音が聞こえる

かずき「ハッピィーバースデー!やっぱりなー。ほら!飯!あとケーキも!買ってきたから食べようぜ!」

ぼく「あ、ありがとう、あれ大学は?」

かずき「まぁ俺のことは気にすんな。なぁシュウ。おまえの気持ちは分かる。俺だってまだ信じられないし、受け入れられてねぇけど、そーやって腐ってるシュウを見てるのも周りは辛いんだぞ?」

ぼく「・・・」

かずき「みくはいつだって、お前を一番に想ってた。おれ、知ってるんだよ、みくはずっとお前の事が好きだった。今更こんな事言ったってしょうがないけど、お前はこのままでいいのか?AIまだ作ってんだろ?小説は?まだ書いてるのか?」

かずきの話は全部直球でぼくの胸に突き刺さる

だけど、みくがぼくの事好きだったなんて、信じられない

今となってはそれを確かめる術すらない

ぼく「うん、、、」

かずきは帰っていった。



(回想:文化祭)

みく「お疲れさま!ねぇ聞いた?あの鳴り止まない拍手!全部シュウが書いた話への拍手だよ?」

ぼく「いや、違うよ!みんなの演技が上手だったからだよ」

かずき「天才くんはいつも謙虚だなー」

僕が書いた台本が、けっこう好評で一時誰かが投稿したYouTubeでバズった

この街もそれをきっかけで一気に注目されるようになった

だけど、SNSというのは魔物で、全てを良く取り上げてくれるわけじゃない

本当の僕を知ってる人はいないのに、僕の事や僕の周りの人間の事を有る事無い事沢山書かれた

特に美人だったみくへの注目度がすごかった

最初は田舎の美少女として騒がれた

それがどんどん哀れのない誹謗中傷に変わっていった

みくが大事にしていたみかん畑にもイタズラのつもりだったのか、誰かが放火して全焼してしまった

そのせいでみくはどんどん病んでいった

僕は助けられなかった

何も出来なかったんだ

(回想終わり)




ピコン。メールが届く

!?みく?ミクからだった

「19歳おめでとう。直接言うのが恥ずかしいからメールにしました。私ね、シュウの事ずっと好きだった。だけど、シュウはいつも大切な人はいなくなっちゃうって想ってたから、言えなかった。

私は誰よりもシュウの持ってる魅力を知ってる。だからもっともっと評価される作品を沢山作っていけると思う

いつまでも当たり前に一緒にいれるわけじゃないから今言っておく

お願い約束して。もし私がいなくなったら、もしまた迷ったら書く!そっちを選んで

貴方の一番のファンより」

このメールをいつみくがセットしといてくれてたかは分からない

僕のAIにみくが吹き込んだってことか?

結局全部お見通しだったってことか、、みく。


ありがとう。みく。


おれ、決めたよ