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ちいさな商店街と「他の市場(いちば)」

仕事はレディースアパレル経営者、趣味はお絵描きと商店街研究。
毎週末、娘の習い事の為に某ショッピングモールAEONに通い、週イチでAEONに通勤している感覚に陥っているAEONer(イオナー)のくまさんです。

さぁ、そのショッピングモールとは一体、
何処の事でしょうか?
(答え:AEON)

1. 商店街、本当に勝ってる?

さてさてその、
ショッピングモールは、『何処も似たり寄ったり』
商店街は、『モールには無い魅力がある』
と思っていませんか?

ほかにも、
アウトレットモールは、『安かろう悪かろう』
商店街のお店は、『昔ながらの良さがある』
と思っていませんか?

そんでもって、
インターネット店は、『顔が見えないし物が届くだけ』
商店街のお店は、『顔が見えるし出会いがある』
と思っていませんか?

これら引用ページの様に、商店街関連のWEBコラムや冊子やラジオ等で「商店街が如何に魅力的であるか」を謳われていて、ショッピングモールやEC(電子商店街)を敵対視する場面にも出くわす事がありますが、本当にそうでしょうか?

お買い物は商店街派の方(または中の人)たちは、商店街以外のマーケットと比較し、根拠と自信を持って掛け値無しに魅力的だと言えるのでしょうか? 微塵も強がり無く商店街の方が優れた市場(いちば)だと言い切れるのでしょうか?

ちょっと責める様な言い方になりましたが、オチは別にモールやECが勝っている理由を羅列し、商店街を貶める様な展開では全くなく、今回お伝えしたい事を先に言うと「どの市場(いちば)も敵じゃないから、どれも上手く使おうよ」です。(いや、小規模商店街も本当に可能性に満ち溢れた良い市場なんですよ。)

モールや百貨店等の商業施設にも、楽天市場やAmazonの様なECにも、複数出店かつ軌道に乗せた経験を持つ店長さん・経営者さんなら当たり前の様に理解されてますが、消費者から見れば商店街もそれ以外も単なる商店集合体です。消費者は個々の商圏内から生活に合った市場に向かうだけです。ショーケンと言えばやはり沢田研二とのツインボーカルがたまんねぇPYGです。

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2. 商店街以外の「良い」例えば

良い例えば①
例えばショッピングモールにも商店会なる物がありまして、大企業の行き届いた社員教育ゆえか若さゆえか、店長同士で盛んに意見交換が行われ、その結論の反映にまで至りPDCAを卒なく回します。それぞれの接客にも集客施策にも個性があり、メーカー派遣の特設コーナーや試食コーナーも熱心で心動かされます。

良い例えば②
例えばアウトレットモールにはもはやB品はほとんど無く、メーカーの利益を圧迫している売れ残り商品の叩き売りや、アウトレット店限定開発の低価格帯商品の展開もあり、全てセール商材ながらも在庫が豊富で、各店の接客は正規ショップのそれと同様に丁寧。それぞれブランドとして成立しています。

良い例えば③
例えばECモールにも勉強会やカンファレンスなる物がありまして、モール運営側からの熱意ある補佐もあり、共に協力し合う関係が形成されています。SNSやWEB広告などの購入前接点には楽しさがあり、購入時も実店舗以上に詳細な情報が掲載されていて、購入後の不具合伺いや交換対応、クーポン配布などのアフターケアも万全です。

それに引き換え、商店街の理事会なんて大抵(真の)リーダー不在で座談会 or 報告会だし(ウソウソ😃)、強いリーダーが居たら居たで強過ぎて周りはイエスマンになるしか無いし(嘘だよ!😊)、振興組合と商店さんとの距離だって案外隔たってますからね!(ウソウソぜんぶ冗談!😆)

さて、商店街にしばしば対比される3つの市場について好例ばかりを抽出し、大袈裟なまでに商店街の暗部を暴いていては不公平なので(全部ウソだけど😉)、他の3つの市場の悪い例え話も致しますね。

3. 商店街以外の「悪い」例えば

悪い例えば①
例えばショッピングモールにも、アルバイト以下の無知で不躾な店長も店員も居ます。 そしてマーケティングに沿った店舗構成が画一的な上に箱モノである為、もしも出店数で上回る大バコ同業他社が同商圏に現れれば、途端に右肩下がりを余儀なくされます。

悪い例えば②
例えばアウトレットモールでは、混雑に耐えられず不満をお客様に隠さない雑な店員だっています。 そして実のところ、本当のアウトレット商品など昔ほど無く、専用開発の低価格商品で安物買いの銭失いに成りかねません。

悪い例えば③
例えばネットショップなんて、商品説明の不足に対して問い合わせても、適当な回答または返事さえ無い。そして雑な梱包で送りつけられ、不良品の交換にも返品にも対応しない非常識なショップだってあります。

そう、「何処で商売しようが皆同じ」
ちゃんとしてるもしてないも、しっかり売るも売らないも、お客さんに愛されるも愛想尽かされるも、それぞれのマーケットで最適化されているか、熱意や愛情を胸に励んでいるか否かでしかないんです。

身を粉にするな、頭を粉にせよ。最悪のあとには必ず最善がある。いかなる苦境にも屈しない強さを身につけていれば、おのずと道は開ける。
藤田田/日本マクドナルド:初代会長

突如有名人の格言が出てきて驚きましたが、そう、苦境は何処でだっていつしかやってきます。大型ショッピングモールだって潰れることはあるし、アウトレットモールも成熟期を経て衰退に向かっているし、ECがより過熱したって、D2Cが台頭しリアルのショールーム化が進んだって、商店街もリアル店舗も消えはしません。他の市場(いちば)の隆盛を言い訳にしたり、商店街の衰退を嘆いて良い事など、1㌨㍍もありません頭を粉にして最善を尽くすしか無いんです。しかしマクドのグラコロって挟む物&挟まれる物全てが小麦粉で発想が宇宙ですよね😉

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4. モールもネットも、敵では無い

今や中~大規模商店街には、チェーン店・ドラッグストア・携帯キャリアショップ・電子タバコショップ等々が蔓延し、それこそショッピングモールに限らず「何処も似たりよったり」に成りかねない状況にはあります。しかし、以前にお話した様に「ちいさな商店街」はチェーン店の出店基準からは外れ易いので、個人商店の比率が比較的高くなります。

そこで個人商店、中小零細企業のフットワーク(意思決定)の軽さを活かして、まずは少投資で済むネット販売なりSNSなりをやれば良いと思っています。どうしても避けられがちで「ウチは実店舗だからよく分からない」と言われますが、*出来ないことは委託業者に頼めば良いんです。 コストが合わないならクラウドワーカーに頼めば良いんです。 ワーカーへの頼み方さえ分からないなら、やっている人に聞けば良いんです。 聞いても分からないなら、恥を忍んで頼めば良いんです。 頼むお金が無ければクラファンするなり融資受けるなりすれば良いんです。(*出来ないことは~に戻りリピート)

モールや近隣商店街へのスポット出店・サテライト出店も良いと思います。「近くに出店なんて勿体無い!」と思われるかも知れませんが、閉店したお店の跡地を日割りで借りて、その期間限定店と本店が相互に宣伝し合うだけでもザイオンス効果(単純接触効果により来街者の記憶に残ります。さらに、決算期に在庫処分セールをする場としても活用すれば、処分損計上として節税が出来る上、本店ではセールをしない事でブランド維持も出来るので、ちいさな小売店さんに取っては大きなメリットになると思います。メリットシャンプーが出た頃の昭和はリンスをお湯で溶かしてたって言っても若い子は信じてくれないと思います。

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5. シャッターにはお店を、無価値には付加価値を

イノベーティブであることよりも、ニーズに応えることを重視してきた日本らしい現状と言えば現状なのですが、すっかり「安かろう悪かろう」は過去の物、「安くて・良くて・早くて・安心」が当たり前になりましたが、そんな社会で商店街や商店さんが高付加価値を生むのは容易ではありません。

消費者の潜在ニーズを掘り起こす様な新機軸のプロダクトやサービスなら、高い価値を生み高単価でも需要発生しますが、イチ商店街のイチ店舗さんが新機軸的イノベーションを起こすのは至難の業です。

商店街としてせめて「場としての高付加価値」を生じさせる為に、三宮本通商店街では先進技術の実装やパブリックアートの実施等で新結合的イノベーションによるインフラ整備や集客法を試みつつ、先程申し上げたサテライト出店を、商店街内の既存スペースで行える仕組みをと考えています。

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とは言え、シャッター商店街でよく見かける「戦略無き空き物件活用」ではありません。 それらはしばしば憩いの場であったり、チャレンジショップであったりと曖昧な使われ方をし、気付けばシャッターに戻っていたりしますが、空き物件には絶対的にお店が入るべきです。 (一時的に)どんなに家賃を下げてでもです。 前述の様な空き物件活用は「その場しのぎ」でしか無く、商店集合体としての本質的な価値を下げ兼ねない為、シャッター化進行を止める抜本的解決手段とは言えません。

空き物件を極力無くす手段を試行しつつ、「既存の無価値な場所を、集客や周知に繋がる場へとリノベーションする」と言う志向性の方が、将来的にその土地の価値を向上させるでしょう。現在改修工事中の三宮プラッツなんて凄く良い。集客の場として機能させ、周辺で消費を促す仕組みのきっかけとなれる、実に意義あるリノベーションだと感服しています。

小さな商店街なら尚更、何処も予算は低く限られているので、目の前にある「一見無価値な物」の視点を変え、大きな価値へと発展させられる事を考えるべきです。例えば三宮本通商店街では、「非常階段が内面にあるせいで、消防法により可燃物を前に置けない」と言う制約の大きな壁面を、半ば裏ワザ的な手法で緑化し「芽ぐみの壁」と名付ける事で、価値の無かった物に新たな価値を付与しました。 これは元々単なるアイコンでは無く、この前で商店さん達が出店や宣伝をされる場として機能させようと思い作った物です。

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6. 「ココにしか無い」にこだわる損失

その場でサテライト出店やイベントを継続させる事で商店さんらの認知度を上げつつ、商店街としては集客の為の新結合的イノベーションを目指します。しかし、三宮本通商店街の計画がその理屈通りに上手く展開したとしても、全ての商店さんはイチ商店街に依存しない方が良いと思っています。

経営者が跡継ぎを望まず「当世一代で終わらせ、商店街を墓標としよう」と言うなら商店街一途も良いでしょうが、もしもその様な美学が無いのであれば、跡を継がれた方も個人商店さんも含め、商店街以外の販売/サービス提供チャンネル・県外・国外・オンライン問わず、出店を検討してみるべきです。複合的に露出される事で認知は拡大し、予想を超えた展開や結果を得られる(可能性が上がる)からです。

「此処でしか買えない、味わえない」それは確かに希少性から高い価値を持つかも知れませんが、天災や人災による市場(これはしじょう)の混乱や、製品・サービスの衰退期はいつかやってきます。直近では、コロナショックで外国人観光客が途絶え、閉店を余儀なくされる観光型商店街の店舗さんや宿泊施設等があった様ですが、消費者に安定供給する意味でも、経済が滞るレベルの不測事態に備える意味でも、商店さんは日頃から販路開拓や露出拡大は意識しておいた方が良いでしょう。

7. 言いたかった事は、まとめると3つ+@

散々勝手申しましたが、お伝えしたかった事をおさらいしますと…
①どんなに苦境の市場でも、頭を粉にすれば最適解はある。
②他の市場は決して敵じゃない、それぞれ上手く使おう。
③シャッター化は絶対悪、無価値に付加価値を与えよう。
あ、もう一個あった。+@良い時期の間に衰退期に備えよう。

毎度偉そうに書いていますが、何も自分が上の立場に居るとは思っておらず、これは実店舗をやってきた後にWEB専門になったからこそ俯瞰で見える部分なだけで、逆に商店街の方々からWEBの自店舗へご指摘を賜りたいぐらいだし、私はまたリアルをやりたがっています。

商売人の豊かさは決して売上や利益だけでは測れないのですが、他の市場を敵視するのに、自分の市場は進化させない事は非常にナンセンスだな…と感じていたので連連と書かせて頂きました。ちいさな商店街は潜在資産・無形資産の宝庫です。見せ方次第で、まだまだやれる事ありますよ!😉

絵 と 文 と 写真:くまさん

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