見出し画像

フィルムカメラを手に取った日。【わたし変遷史 #1】

子供の頃からずっと写真が下手くそだった。
親のデジカメで撮った写真は、十中八九ブレていたし、iPhoneで撮るようになっても画面には斜め45度に傾いた世界が写っていることも多かった。

そんな私が、ここ数年は出かけるとき、フィルムカメラを持ち歩くようになった。
写ルンですやチェキが、「エモい」という言葉の登場と一緒に若い子たちの間で流行りだしたから、それに乗っかっただけに見えるかもしれない。

けれど、私には明確にフィルムカメラに興味を持ったきっかけがある。


それは、あるバンドのジャケット写真だった。

居酒屋が20時くらいに閉まってしまうような2020~2021年ごろ。就職活動も順調に進んでおり、大学の単位もあとは卒論だけ。そこそこ優秀な大学生だった私が、その当時一人黙々とやっていたことはサブスクどっぷりな生活。
色んな配信サービスでひたすらに映画やドラマを観たし、Spotify・Apple musicで手を出したことのなかったジャンルや、SNSで目にしたバンドはとりあえず聴く、なんてことをしていた。

こんな日々を一年ほど送ったことでかけがえのない作品との出会いはたくさん生まれた。


その出会いの中に、バンド「ミツメ」との出会いも含まれるだろう。
このバンドこそが写真下手な私に、フィルムカメラで風景を撮ってみたい!と思わせたバンドだ。

彼らの音楽は、外に出かけられない淡々とした生活にマッチするような切なさがあると感じた。もどかしい気持ちを歌った歌詞、なんだか無気力な世界観。だけどその反面、キャッチーなメロディーや、ポップで浮遊感のあるサウンドからは、飄々とした雰囲気も感じさせる。

左から『ささやき』、『エスパー』、『めまい』

危ういバランスで保たれる彼らの音楽だけでなく、アルバム・CDの顔でもあるジャケット写真にも私は心惹かれた。

優しくもあり、どこか虚無感の漂う風景。懐かしい街に来たけれど虚しい感覚とか、にぎやかな場所のすぐ裏の放置された土地を見た孤独感とか、そいういうものが思い起こされる。
ジャケットの写真にこんなに惹きつけられたのが初めてで、私も生活の中でそんな写真を残せていけたら素敵だなぁと思い、今も練習中だ。

撮影者:わたし

私は幼少期から音楽をやっていて、職業にはならなかったけど、一番の趣味だし、生きがいと呼べるものだと思う。そんな音楽が、私をまだ見ぬ私に変えてくれた。ミツメというバンドが、私を新しいところへ連れて行ってくれた。

何気ない出会いを、そこから広がる世界を、これからも大切にしていきたい。

▲ここまでお読みいただき、ありがとうございます▲

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?